2023-01-01から1年間の記事一覧

『疲労とは何か』(近藤 一博著、ブルーバックス、2023年12月20日発行)

疲労には生理的疲労と病的疲労がある。 生理的疲労は、1日休めば回復するような短期的なもの。病的疲労は長く続く。うつ病、慢性疲労症候群、が含まれる。 慢性疲労は病的疲労の代表であり、うつ病も病的疲労。いずれも脳内炎症を起こす。SHITH-1遺伝子が鍵…

『ドキュメント異次元緩和 10年間の全記録』(西野智彦著、岩波新書、2023年12月20日発行)

2012年末の総選挙で2%インフレ目標・無制限金融緩和で安倍の勝利で始まる。白川総裁、黒田総裁、リフレ派政策委員選任、植田総裁と政治の関係、バズーカ、マイナス金利、YCC…と複雑化した金融緩和の過程。 リフレ政策とは、日本のデフレ脱却が必要である、…

『グローバルインフレーションの深層』(河野 龍太郎著、慶応大学出版会、2023年12月15日発行)

2020年第1Q新型コロナウィルスのパンデミック発生。2021年5月ワクチン接種開始(日本)。 2021年から世界的な高インフレ(グローバルインフレーション)となる。当初はコロナ禍によるサプライチェーンの混乱、2022年2月24日開始のウクライナ戦争による資源・…

『奈良時代 律令国家の黄金期と熾烈な権力闘争』(木本 好信著、中公新書、2022年11月25日発行)

奈良時代は天皇の後継者争いの時代だったようだ。 女性天皇が大勢出ているし、皇位継承をめぐる内乱・政変が多かった。 長子の男子が継承するという制度がまだ固まっていなかったのか?

『謎の海洋王国ディルムン メソポタミア文明を支えた交易国家の勃興と崩壊』(安倍 雅史著、中公選書、2022年1月10日発行)

バハレーンの、紀元前5000年から前1700年にわたる古代史の研究成果をまとめた本。ディルムンと呼ばれた時代があった。南メソポタミアとインダスを結ぶ交易の中継点として栄えた。 歴史的には真珠の産地として知られるが、1920年代、30年代に日本の御木本幸吉…

『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』(ニック・マジューリ著、ダイヤモンド社、2023年6月23日発行)

この本に書かれている投資手法に関する分析は日本市場ではまったく役に立たない、無価値である。この本で読む価値があるのは、なぜ投資するべきか(10章)のみだろう。 あと仮説の提示方法が下手すぎる。典型例は第12章個別株は買うな「たった2時間で1万2千…

金(ゴールド)が語る20世紀―金本位制が揺らいでも – (鯖田 豊之著、中公新書、1999年3月発行)

20世紀初頭から終期まで。金本位制の時代から、金本位制がなくなって変動為替制の時代に至る激動を中央銀行の金保有量、為替レートの変動などの視点でまとめている力作。 1937年3月9日に始まった第一次現送は円安と輸入増加による外貨準備不足のため、金を現…

『危機と決断 前FRB議長ベン・パーナンキ回顧録』(ベン・パーナンキ著、KADOKAWA、2015年12月25日発行)

1913年連邦準備法、1914年連邦準備制度誕生。12か所の半自治的な連邦準備銀行を置く。形式上は民間金融機関でそれぞれは独立。各準備銀行の総括、連邦準備制度の運営は連邦準備制度理事会(FRB)が行う。FRB理事は7名で上院の承認を経て大統領が任命、任期14…

『ケインズ 危機の時代の実践家』(伊藤 宣広著、岩波新書、2023年10月20日発行)

ケインズの経済学発展の経過をまとめた本。経済学は難しい。 あるものの価格が上がる、下がるは実感としては感知できるが、集合的現象になると説明しにくいためか? 特に国際為替が入ると複雑でわからない。 ケインズで一番印象に残っているのは、第一次大戦…

『穀物の世界史 小麦をめぐる大国の興亡』(スコット・レイノルズ・ネルソン著、日本経済新聞出版、2023年10月13日発行)

小麦を中心とする穀物の生産地、加工地と消費地を結ぶ輸送方法・輸送路の観点から帝国の興亡を語る。面白い視点で、歴史の新しい見方だ。 二つの中心的な生産地はウクライナとアメリカである。ウクライナは古代からだが、アメリカは1800年頃には小麦粉として…

『イラク水滸伝』(高野 秀行著、文芸春秋、2023年7月30日発行)

チグリス川とユーフラテス川の合流地点はずっと砂漠だと思っていたが、古代から続く湿地帯だった。しかし、最近は上流で水を使うために干上がっていて、今後はどうなるかわからないようだが。 その湿地帯を昔からある、タラーデという木製の船で旅をしようと…

『まちがえる脳』(櫻井 芳雄著、岩波新書、2023年4月20日発行)

ニューロンが信号を発することを発火といい、信号をスパイクという。ニューロン細胞の膜内の電位が、10ミリ秒内に多くのシナプスから入力信号が届くと、瞬間的に上がる。これがスパイクである。物質はナトリウムイオンとカリウムイオン。この脳内の情報伝達…

『科学者はなぜ神を信じるのか コペルニクスからホーキングまで』(三田 一郎著、ブルーバックス、2018年6月29日発行)

ある高校生の「先生は科学者なのに、科学の話のなかで神を持ち出すのは卑怯ではないですか?」という問いかけに答える。 キリスト教の生まれや、いにしえの科学者であったアリストテレスの天動説から始め、15世紀末のコペルニクスの地動説、16世紀末のガリレ…

『大量絶滅はなぜ起きるのか 生命を脅かす地球の異変』(尾上 哲治著、ブルーバックス、2023年9月20日発行)

三畳紀末の生物大量絶滅の研究による大地の変化から生命へのつながりを考える。 T/J境界三畳紀とジュラ紀の境界:2億136万年前。 三畳紀最後のレーティアン(2億180万年前~T/J境界まで)に二段階の絶滅が起きた。その最後の絶滅の研究。沿岸環境では2枚貝モ…

『戦争と財政の世界史 成長の世界システムが終わるとき』(玉木 俊明著、東洋経済新報社、2023年9月26日発行)

ポルトガルは1415年にアフリカ西北端にセウタをヨーロッパ最初の植民地にする。1488年喜望峰を発見などアジア航路を開拓した。南米ではブラジルがポルトガル領となる。 スペインはコロンブスが1492年新世界発見。新世界へ進出し、1521年コルテスのアステカ帝…

『雇用か賃金か 日本の選択』(首藤 若菜著、筑摩選書、2022年10月25日発行)

前半は、新型コロナウィルス感染症流行により需要が急速に縮小した航空業界の雇用調整について、日本ではANAホールディングス、米国ではユナイテッド航空、アメリカン航空、サウスウェスト航空、英国のブリティッシュエアウェイズ、ドイツのルフトハンザ航空…

『アベノミクスは何を殺したか』(原 真人著、朝日新書、2023年7月30日発行)

13人の論客と整理するアベノミクス。アベノミクスとはなにかの定義もあまりはっきりしていないが、本書の多くの部分は日銀の大規模緩和に関する議論である。 もともと著者が反アベノミクスなので、いろいろな角度からの反対意見を述べる人が多い。しかし、傾…

『足利将軍たちの戦国乱世 応仁の乱後、七代の奮闘』(山田 康弘著、中公新書、2023年8月25日発行)

戦国時代も将軍の利用価値があったという点に着目したのは慧眼。 足利幕府は直轄領が少なく、直轄する軍事力もないため、大名に依存せざるを得なかったという点が、徳川時代とは大きく異なる。徳川は最後は軍事力で勝ち残った政権でもある。それにしても、足…

『封じ込めの地政学 冷戦の戦略構想』(鈴木 健人著、中公選書、2023年3月10日)

アメリカのソ連専門家であり、マーシャル国務長官(トルーマン大統領)が設置した政策企画室の初代室長(1947年5月5日~1949年末まで(?))を務めたジョージ・ケナンの政策を中心に米国の対ソ封じ込め戦略の成立や目的について解説した本である。 第2次大…

『イングランド銀行公式 経済がよくわかる10章』(イングランド銀行他著、すばる舎、2023年8月26日)

一般人に経済学の基礎的な話を説明しようという企画によって出版された本。日本ではなかなかこうはいかないかもしれない。 内容はあまり目新しいものはないが、いろいろ逸話がのっているのが楽しい。一番かわいそうな例はイスラエスに住む女性が母親にマット…

『21世紀の財政政策』(オリヴィエ・ブランシャール著、日本経済新聞出版、2023年3月17日発行)

数式が多く難解だが、r-g<0(実質経済成長率より実質安全金利が小さい)なら債務は償還されなくても、新たな債務が発行されなければ、生産に対する債務の比率は低下する、という箇所が印象に残る。 日本語版への序文に本書執筆の動機は日本経済の経験の研究…

『関東軍ー満州支配への独走と崩壊』(及川 琢英著、中公新書、2023年5月25日発行)

日本の現代史・昭和史の中で、大きな影響力をもったものが関東軍と満州事変だろう。本書は、その関東軍について成立から消滅まで詳しく(初心者には詳しすぎるともいえるが)解説する。なかなか読みごたえがある。 関東軍を象徴する人物といえば、やはり石原…

『柴田勝家 織田軍の「総司令官」』(和田 裕弘著、中公新書、2023年6月25日発行)

柴田勝家といえば、瓶割柴田の異名をとる猛蒋としか記憶がないが、織田軍の中核として、戦いに明け暮れた様子がわかる。 本能寺の変の後は、完全に秀吉にやられてしまったという印象だが、本書は比較的丹念に戦いの足跡を追っている。 やはり一番印象に残る…

『人体最強の臓器 皮膚の不思議』(椛島 健治著、ブルーバックス、2022年12月20日発行)

相当に難しい。 一般人が読むには難しすぎるだろう。 皮膚の老化=加齢による皮膚の老化+光老化 光老化とは紫外線を原因とする皮膚老化 紫外線には波長により、UVA、UVB、UVCの3種類がある。地球上に届くのはUBAとUVBの2種類。最も波長の長いUVAが95%を占…

『本当にわかる株式相場』(土屋 敦子著、日本実業出版社、2017年2月1日発行)

個人投資家向けPTS(Proprietary Trading System)は縮小した。現在は大口投資家向けのダークプールが増えている。 株式注文成立ルールには価格優先原則(成り行き優先)と時間優先原則がある。 株価決定は板寄せとザラ場寄せがある。板寄せは前場開始(寄付…

『琵琶法師 〈異界〉を語る人びと』(兵藤 裕己著、岩波新書、2009年4月21日発行)

ラフカディオ・ハーン(小泉 八雲)の耳なし芳一の話から始まる琵琶法師談。 なかなかついていけない。

『現代経済学の直観的方法』(長沼 伸一郎著、講談社、2020年4月8日発行)

なかなか面白い本だが、まるで平家物語を読んでいるようだ。著者はまるで琵琶法師のように経済学を語る。 鉄道の登場で、戦争は近代兵器による物量の戦いとなる。資本主義社会では金融システムが鉄道に、銀行家や財務マンが鉄道網を掌握する参謀本部にあたる…

『日本銀行 虚像と実像 検証25年緩和』(河浪 武史著、日経BP、日本経済出版発行、2023年6月23日発行)

1998年から2023年3月黒田総裁退任までの25年間の日銀の金融政策の点検。中心は2013年から2023年の黒田大規模緩和。新聞記者の書いた本なので経済理論・分析というよりも人間に関する記録の面が強い。 インフレの方が借金は返しやすい、経済活動への投資はや…

『バブルの世界史 ブーム・アンド・バストの法則と教訓』(ウィリアム・クイン、ジョン・D・ターナー著、日経BP・日本経済新聞社出版、2023年3月24日発行)

バブルは、市場性、通貨・信用、投機の3要素が揃ったとき何らかの火花で発生するという仮説。 歴史上の12バブルの概要。株と不動産、住宅がバブル資産。株には鉄道熱、自転車熱、ITなど、新技術が関係するものもある。 1719年-20年のミシシッピバブルと南海…

『エルサレムの歴史と文化』(浅野 和生著、中公新書、2023年5月25日発行)

エルサレムの観光案内のような本だ。