日本経済

『ドキュメント異次元緩和 10年間の全記録』(西野智彦著、岩波新書、2023年12月20日発行)

2012年末の総選挙で2%インフレ目標・無制限金融緩和で安倍の勝利で始まる。白川総裁、黒田総裁、リフレ派政策委員選任、植田総裁と政治の関係、バズーカ、マイナス金利、YCC…と複雑化した金融緩和の過程。 リフレ政策とは、日本のデフレ脱却が必要である、…

金(ゴールド)が語る20世紀―金本位制が揺らいでも – (鯖田 豊之著、中公新書、1999年3月発行)

20世紀初頭から終期まで。金本位制の時代から、金本位制がなくなって変動為替制の時代に至る激動を中央銀行の金保有量、為替レートの変動などの視点でまとめている力作。 1937年3月9日に始まった第一次現送は円安と輸入増加による外貨準備不足のため、金を現…

『雇用か賃金か 日本の選択』(首藤 若菜著、筑摩選書、2022年10月25日発行)

前半は、新型コロナウィルス感染症流行により需要が急速に縮小した航空業界の雇用調整について、日本ではANAホールディングス、米国ではユナイテッド航空、アメリカン航空、サウスウェスト航空、英国のブリティッシュエアウェイズ、ドイツのルフトハンザ航空…

『アベノミクスは何を殺したか』(原 真人著、朝日新書、2023年7月30日発行)

13人の論客と整理するアベノミクス。アベノミクスとはなにかの定義もあまりはっきりしていないが、本書の多くの部分は日銀の大規模緩和に関する議論である。 もともと著者が反アベノミクスなので、いろいろな角度からの反対意見を述べる人が多い。しかし、傾…

『試練と挑戦の戦後金融経済史』(鈴木 淑夫著、岩波書店、2016年5月26日発行)

日銀の金融政策について割と歯に衣着せぬ記述が多く、面白い。 1971年8月15日第26回目日本降伏記念日に、ニクソンが金とドルの兌換を停止。12月スミソニアン会議で1ドル360円から308円に切り上げ。73年2~3月先進国は次々に変動相場制に移行し、プレトンウッ…

『政府債務』(森田 長太郎著、東洋経済新報社、2022年12月8日発行)

政府債務について真正面から取り組んで考察した書。 2000年から20年ほどは日本が近未来において破綻することにリアリティを感じた人が少なくなかった。 IMFや世銀の想定する破綻は対外債務返済能力。従来は小規模国家のみであった。2012年ギリシャの実質デフ…

『国債リスク 金利が上昇するとき』(森田 長太郎著、東洋経済新報社、2014年2月13日発行)

2013年4月4日金融政策決定会合で「異次元の金融緩和」を決定。「2年程度で前年比2%の物価上昇率を達成する」ことを目的とする。 年平均利回り=((満期償還額-現在の時価)/残存年数+利率)÷現在の時価×100 日本経済の問題点は資金の需要がないこと。金…

『野生化するイノベーション 日本経済「失われた20年」を超える』(清水 洋著、新潮選書、2019年8月発行)

書名が面白い。 イノベーションの経営学的な研究成果のまとめ。イノベーションとは経済的な価値をもたらす新しいものごと。経済的な成長の源泉。 イノベーションはビジネスチャンスの方に移動する。 イノベーションは飼いならせない。管理できない。 イノベ…

『アフター・アベノミクス 異形の経済政策はいかに変質したのか』(軽部 謙介著、岩波新書、2022年12月20日)

第二次安倍政権は2012年から2020年まで。この間のアベノミクスについて、同じ著者による三部作の最後。アベノミクスは大規模金融緩和により、円安、株価上昇、GDP成長がプラス化などの経済復調をもたらした。しかし物価上昇は2%に届かず。2%の達成目標に…

『世界インフレの謎 そして、日本だけが直面する危機とは?』(渡辺 努著、講談社現代新書、2022年10月20日発行)

2008年のリーマンショックを契機として不況が発生し、世界が低インフレとなった。グローバリゼーション、少子高齢化、技術革新の頭打ちが要因として挙げられている。 ウクライナ侵攻前の2021年から高インフレが始まっている。戦争が主な原因ではない。2022年…

『深堀り! 日本株の本当の話』(前田 昌考著、日経プレミアシリーズ、2022年3月8日発行)

コラムなのでトピックがばらばらだが、雑な知識を仕入れるのには良い。 なにしろ、時代が変わりつつあることを実感できる。 社員の平均年齢が高いと株価上昇率が低いというのは身につまされる。 図表6-20、図表6-21

『物価とはなにか』(渡辺 努著、講談社選書メチエ、2022年1月11日発行)

1974年は消費者物価指数CPIが前年比23%増加し、「狂乱物価」と名付けられた。このときはガソリンなど石油関連製品の値段が上がり、CPIも上がった。インフレの原因は原油高と信じられているが、その後の分析では原油高とCPIに因果関係がないことが示されてい…

『監査難民』(種村 大基著、講談社、2007年9月25日発行)

1990年日本はトーマツ、中央青山、新日本、あずさの四大監査法人体制となる。 中央青山監査法人はずさんという評判。1997年9月会社更生法適用のヤオハンジャパンの粉飾決算を見逃したとして、大蔵省から2000年6月に戒告処分を受ける。2004年アソシエント・テ…

『日銀漂流 試練と苦悩の四半世紀』(西野智彦著、岩波書店、2020年11月26日発行)

第1章松下時代 1996~1998年 1997年6月11日成立。「憲法第65条 行政権は、内閣に属する。」と日銀の独立性をめぐる闘争部分が一番面白い。1997年10月末から頭の三洋証券会社更生法、コール市場でのデフォルト、北海道拓殖銀行の破綻、山一破綻と続き、各地で…

『住友銀行秘史』(國重 惇史著、講談社、2016年10月発行)

バブルの末期に住友銀行とイトマンであったできごとの裏話。 住友銀行の天皇といわれた磯田一郎会長が辞任するまでのいきさつ、磯田の腹心でイトマンに送り込まれた河村良彦社長が伊藤寿永光に取り込まれて不動産事業にのめりこむ。また、絵画取引では許永中…

『セイビング・ザ・サン リップルウッドと新生銀行の誕生』(ジリアン・テッド著、日本経済新聞社、2004年4月23日発行)

1998年破綻処理・国有化された日本長期信用銀行(長銀)の誕生から破綻処理により国有化、そして国有化からリップルウッドに買われて新生銀行として再上場するまでの物語である。 長銀は、1952年池田勇人内閣の長期信用銀行法にもとずく金融計画に沿って設立…

『貧乏国ニッポン ますます転落する国でどう生きるか』(加谷 珪一著、幻冬舎新書、2020年5月30日)

2018年ワシントンDCの世帯年収中央値は10万2千ドル、ニューヨークは7万8千ドル、シアトルは8万7千ドル、ロスアンゼルスは7万3千ドル。日本では平均値約550万円、中央値は423万円。日本と米国では2倍程度の開きがある。 大卒初任給は米国500~600万円。日本…

『検証 経済暗雲』(西野 智彦著、岩波書店、2003年7月15日発行)

主にバブルが崩壊した後の1992年から1995年までの金融行政についてまとめた本である。前著の『検証 経済迷走』、『検証 経済失政』に至る前史にあたる。 〇寺村銀行局長の時代 1992年6月~1994年6月 主な課題は次の通り。 ・銀行の決算対策 ・貸し渋り問題 …

『検証 経済迷走』(西野 智彦著、岩波書店、2001年7月発行)

主に1998年の金融危機について、金融システムの安定化をめぐる迷走の報告である。後書きにいうように、98年の危機は官から政治に主導権が移った年のようだ。大きな要因は、大蔵省の解体と金融監督庁の誕生にある。自公与野党協議で金融再生法の成立。金融監…

『検証 経済失政』(軽部謙介・西野智彦著、岩波書店、1999年10月27日発行)

1996年11月7日第二次橋本内閣三塚大蔵大臣。翌日の初仕事は大阪府三福信用組合への業務停止命令への対応だった。 1996年11月11日橋本は三塚に金融ビッグバンを指示する。橋本行革路線。大蔵はビッグバンで銀行・金融システムが大変になるという認識が欠けて…

『バブルと生きた男 ある日銀マンの記録』(植村 修一著、日本経済新聞社、2017年1月18日)

経済学の資産価格はその資産が将来にわたって生み出す収益の現在価値(ファンダメンタルズモデル)。ファンダメンタル価格との乖離が経済学的なバブル。バブルを防ぐのは個々の経済主体のリスク管理に尽きる。 1985年が転換点。その前後、大阪本社の企業が雪…

『検証 バブル失政』(軽部 謙介著、岩波書店、2015年9月25日発行)

本書はかなりの部分が日銀の金利政策の話になっている。日銀は当時は大蔵省や政治からの独立性が低かった。 1985年9月22日プラザ合意。円やマルクを上げて、世界貿易の不均衡を調整する。1986年4月19日、米国の公定歩合0.5%引き下げに協調して日本も公定歩合…

『1989年12月29日、日経平均3万8915円 元野村投信のファンドマネージャーが明かすバブル崩壊の真実』(近藤駿介著、河出書房新社、2018年5月20日発行)

1990年1月に株式バブルが崩壊したメカニズムを探求する書である。1980年後半のバブル経済をほとんど株式市場だけから見ているという制約があるので、日本経済のバブル崩壊の全体像との関係に説明不足感があるが、株式バブルについていえば、本書の分析はなか…

『ディープインパクト不況 中国バブル崩壊という巨大隕石が世界経済を直撃する』(真壁昭夫著、講談社α新書、2019年11月20日発行)

中国バブル崩壊に備えよ、というのが本書のメッセージである。確かに現在の世界経済において中国の占めるウェイトは大きい。本書では、現在、中国経済は成長の限界にきており、今後、中国経済が大失速すれば、ドイツを始めとするEU、日本経済はかなり大きな…

『国運の分岐点 中小企業改革で再び輝くか、中国の属国となるか』(デービッド・アトキンソン著、講談社+α新書、2019年9月19日発行)

中小企業の生産性は大企業よりも低い。中小企業で働く人の多い国は国レベルの生産性が低い、というのは横断的国際比較としては、大雑把に見て正しいだろう。米国の生産性が高いのは大企業で働く人の割合が多いからかもしれない。但し、これはある時点で切っ…

『バブル 日本迷走の原点』(水野 健二著、新潮文庫、令和元年5月1日発行、原本は2016年11月刊)

第1章はバブル発生前史。概ね70年代、80年代。 運輸省の海運集約に刃向かった三光汽船。いち早く日本国籍でない船舶に外国人船員中心の運行体制。三光汽船がジャパンラインの株を買い占め。カルテル体制に刃向かう。三光社長の河本敏夫、ジャパンライン社長…

『図解 FinTechが変えるカード決済ビジネス』(本田 元著、中央経済社、2017年2月20日)

FinTech分野のさまざまなキーワードを簡単に解説する。わかりやすくて良い書。 それにしても、カード分野には日本独自の仕様が多くて、グローバル経済に反してガラパゴス化しているのはびっくり。 交通系非接触カード分野で大成功を収めたFeliCaは、NFC-F仕…

『経済の大転換と日本銀行』(翁 邦雄著、岩波書店、2015年3月発行)

2007年夏からの金融危機以後、各国の中央銀行は、為替市場への無制限介入、量的緩和、フォワードガイダンスによる期待への働きかけなどの非伝統的金融政策を取り始めた。本書の論点の第1は非伝統的金融政策が効果があったかどうかについてである。文章が入…

『「円安大転換」後の日本経済 為替は予想インフレ率の差で動く』(村上 尚己著、光文社新書、2013年3月20日発行)

この人はリフレ論者であり、金融緩和を為替レート、あるいは為替相場への投資の観点でみているようだ。全体的に相関関係を因果関係と見做す論理展開が多い。例えば、デフレと自殺者に因果関係があると見做している。(p.88) また、出来事を為替レート中心…

『日本の景気は賃金が決める』(吉本 佳生著、講談社現代新書、2013年4月20日発行)

「モノやサービスの物価がじわじわと下がる現象を、デフレと呼んでいます。」p.12(※そうなのか? 急激に下がったらデフレではないのか?) 景気と賃金格差の話をしたい。 低所得層は消費性向が高い80%~高所得は低い70%⇒低所得の人達は景気回復への貢献度…