科学

『記憶力を強くする 最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方』(池谷 祐二著、ブルーバックス、2001年1月20日発行)

人の脳には約1000億個の神経細胞がある。神経細胞の数は誕生したばかりの時が一番多い。使われていない神経細胞が選ばれて1日数万個減っている。脳は70歳になるまでの5%軽くなる。 但し、海馬だけは使うと増殖する。玩具を入れた環境で育てたネズミは海馬が…

『よくわかる最新パワー半導体の基本と仕組み 第3版』(佐藤 淳一著、秀和システム、2022年6月10日)

パワー半導体とは、AC⇒DC(コンバータ)、DC⇒AC(インバータ)、電圧、周波数など電力の変換を行う。 2020年世界の半導体デバイス市場は50兆円。パワー半導体は2兆8千億円程度(p.22,80)。 パワー半導体は単機能半導体(ディスクリート半導体) FET:電界効…

『アルゴリズムの時代 機械が決定する世界をどう生きるか』(ハンナ・フライ著、文芸春秋、2021年8月25日発行)

アルゴリズムの役割は次の4つに分けられ、その組み合わせである。 1.優先順位を決める。グーグル検索、推薦、ルート選択 2.カテゴリーに分ける。 3.関連、つながりを見つける 4.フィルタリング ルールに基づくアルゴリズムと機械学習アルゴリズム カ…

『ワクチンの噂 どう広まり、なぜいつまでも消えないのか』(ハイジ・J・ラーソン著、みすず書房、2021年11月10日発行)

ワクチンと噂、ソーシャルメディアの影響について 戦争期は世上の不透明さ、不安で噂が広まりやすい。噂は感染症の状況では「警告」となる情報を伝えることもある。2014年エボラウイルスの流行では噂が飛び交い、公衆衛生上の対応が遅れることがあった。2015…

『ロボットと人間』(石黒 浩著、岩波新書、2021年11月19日発行)

人間に似たロボットを開発し、それを用いて人間を理解しようとする。構成的方法。2000年頃から人と交わるロボットの研究が盛んになり、その実用化に挑戦する企業も多い。しかし、まだ大きな成功はない。 リモート会議システムは新しいアイデアを出したり、説…

『人類の起源』(篠田 謙一著、中公新書、2022年2月25日発行)

DNA解析技術の進歩で、古代DNA研究が活況を呈している。ホモ・サピエンスは約20万年前にアフリカで生まれたのは定説。DNA解析ではネアンデルタール人の祖先とホモ・サピエンスが分かれたのは60万年ほど前であることが分かった。 ホミニンは属が異なる種を含…

『北極がなくなる日』(ピーター・ワダムズ著、原書房、2017年11月27日発行)

「北極がなくなる」というタイトルは正しくなく、北極の氷がなくなる日が正しいだろう。 1950年代と1960年代に南極とグリーンランドの氷床コアの採掘がはじまって、解析技術が進歩した。ここ40万年ほど気温と二酸化炭素・メタンガスの濃度を推定すると、氷期…

『大陸と海洋の起源』(アルフレッド・ウェゲナー著、講談社ブルーバックス、2020年4月20日発行)

ウェゲナーの大陸移動説最終版(1929年)の翻訳である。ウェゲナーは大陸移動説を1910年頃に着想、1912年1月6日の地質学会の席で初めて発表した。1915年本書初版を発行、1929年に第4版を発行した。 当時は地球収縮説、海洋底永久不変説(米国の地質学者間で…

『マルチメッセンジャー天文学が捉えた新しい宇宙の姿』(田中 雅臣著、講談社ブルーバックス、2021年12月20日発行)

宇宙からくるシグナルの観測は、光(19世紀)、赤外線、電波、X線(20世紀)、ニュートリノ、重力波(21世紀)に広がる。 長さスケール 距離の測定:地球公転の年周視差は1万光年まで⇒明るさの分かっている星(標準光源)の明るさを使う(セファイド型:5000…

『予測学 未来はどこまで読めるのか』(大平 徹著、新潮選書、2020年8月25日)

話題レベルの事柄を寄せ集めただけのざっぱくな本である。予測学というより予想学という方が適切ではないか?

『アルツハイマー征服』(下山 進著、株式会社KADOKAWA、2021年1月18日発行)

家族性アルツハイマーの家系の話がイントロと最後に出てくるが、これを読むと人生が運に左右されていることを痛感する。運が良い人と運が悪い人がいるが、アルツハイマー家系に生まれた人たちも、そうでない人達と同じように幸せに生きる権利がある。 アルツ…

『世界の起源ー人類を決定づけた地球の歴史ー』(ルイス・ダートネル著、河出書房新社、2019年11月30日発行)

科学者が書いた人類の歴史である。本書は地球という星の地学的変動と人類の活動を関連づけて説明している。大気などの地球環境の物理的な特性、陸の成り立ち、大陸の移動などによって人類の歴史が決定付けられているという視点が斬新である。地球の変動は億…

『時を刻む湖 7万枚の地層に挑んだ科学者たち』(中川 毅著、岩波科学ライブラリー、2015年9月9日発行)

福井県の水月湖の固定堆積物は75メートルにわたり、ボーリングで取得したコアには縞模様がある。縞模様は1枚が1ミリ程度の薄い地層で、1枚が1年にあたる。これを年縞というが、45メートル、時間にして約7万年分になる。綺麗な年縞ができる湖は、世界中でも他…

『地図づくりの現在形 地球を測り、図を描く』(宇根 寛著、講談社選書メチエ、2021年1月8日発行)

地図の作り方はアナログ測量から、デジタル、航空・衛星、通信を活用した測量へと根本的に変化している。デジタル化は、飛行機による写真やレーザ計測、衛星からのGNSS(Global Navigation Satellite System)による電波測量をコンピュータで処理している。G…

『「第二の不可能」を追え! 理論物理学者、ありえない物質を求めてカムチャッカへ』(ポール・J・スタインハート著、みすず書房、2020年9月1日発行)

200年もの間、多くの人に常識としていた信じられてきた結晶学の原理をやぶる準結晶の理論を発見する。ついで実物の探索、そしてそれがどこでできるか探索するというという果てしない知的冒険の物語である。 正20面体はどの頂点から見ても正五角形が見える。…

『事実はなぜ人の意見を変えられないのか 説得力と影響力の科学』(ターリ・シャーロット著、白揚社、2019年8月30日発行)

本書は人間の脳を研究する心理学者の観点による説得力や影響力に関する知見集である。実践的にも使えそうだ。初めに出てくる「情報を集めることで却って自分の考えを変えないようになる」というのは人は自分に都合のいい情報を集め、都合の悪い情報を無視し…

『心理学の7つの大罪』(クリスチェインバーズ、みずず書房、2019年4月発行)

第一の罪 確証バイアス ウェイソンの選択課題。有益でないカードをひっくり返す問題。間違ったカードをひっくり返す被検者が多い。確証をどうやって得るかという問題である。 多くの心理学ジャーナルは論文の追試研究、検証結果を掲載しない。査読付きの一流…

『光と色彩の科学』(齋藤 勝裕著、講談社ブルーバックス、2010年10月20日発行)

単色の黄色と混色の黄色がある。単色の黄色はスペクトルで分析された色。それ以上分かれない。混色の黄色は赤と緑を混ぜた結果なので、赤と緑に分離できる。 光に色彩があるのではない。光を感じるのは視細胞。視細胞には桿状細胞と錘状細胞がある。桿状細胞…

『自然言語処理の基本と技術』(小町守監修、奥野陽、グラム・ニュービッグ、荻原正人著、翔泳社、2016年3月発行)

本書は概説書で大凡どんな技術があるかが分かる。 自然言語処理の応用:日本語入力、機械翻訳、検索エンジン、対話システム、質問応答 日本語形態素解析エンジン:JUMAN⇒ChaSen⇒MeCab⇒Sen/GoSen 2010年代の形態素解析器:KyTea、Kuromoji 1990年代:統計的自…

『免疫と「病」の科学 万病の元「慢性炎症」とは何か』(宮坂 真之/定岡 恵著、講談社ブルーバックス、2018年12月発行)

第1章 慢性炎症は万病の元 この章は概説である。医学を学ぶ人達の基本。炎症は、異物や痛んだ組織が作る産物に対する生体反応である。炎症は局所で起きるが、サイトカインを通じて体全体に伝わる。サイトカインは警報役。炎症性サイトカインは他の場所に影響…

『「こころ」はいかにして生まれるのか 最新脳科学で解き明かす「情動」』(櫻井武著、講談社ブルーバックス、2018年10月20日)

本書は、ちょっと固いが、内容は面白い。もう少し柔らかく書かれているとなお良かっただろう。本書に掲載されている、ラッドの実験などを通じてみると、人間と他の動物の心の働きはかなり似ているようだ。深部のところでは、動物の心に組み込まれたのと同じ…

『血液の不思議 不安と怒りは血を固まらせる』(高田 明和著、講談社ブルーバックス、1990年5月)

かなり内容は難しい話が多いのだが、研究者的な・科学的な観点のみでなく、心の問題も取り込んでいるところに本書の面白さ・あるいは良さがある。一つには表題にあるように、心筋梗塞や脳梗塞のような血栓による症状は、ストレスがあるとより起こりやすくな…

『操られる民主主義 デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか』(ジェイミー・バートレット著、草思社、2018年9月発行)

本書は、インターネット・テクノロジーの民主主義への脅威を警告する。具体的な例としては、第3章 ビッグデータと大統領選が一番だ。2016年のアメリカ大統領選の「プロジェクト・アラモ」にはびっくりだ。選挙の投票行動に影響を与えられそうな人を選んで、…

『ヒッグス粒子の発見 理論的予測と探求の全記録』(イアン・サンプル著、講談社ブルーバックス、2013年2月)

ヒッグス粒子の理論が登場してからヒッグス粒子が発見(?)されるまでの過程を綴った本である。ヒッグス粒子は物質に質量を与える素粒子のようだが、具体的にどんなものかは本書を読んでも分かり難い。1964年にピーターヒッグス(実は同じ頃に別の物理学者…