『まちがえる脳』(櫻井 芳雄著、岩波新書、2023年4月20日発行)

ニューロンが信号を発することを発火といい、信号をスパイクという。ニューロン細胞の膜内の電位が、10ミリ秒内に多くのシナプスから入力信号が届くと、瞬間的に上がる。これがスパイクである。物質はナトリウムイオンとカリウムイオン。この脳内の情報伝達…

『科学者はなぜ神を信じるのか コペルニクスからホーキングまで』(三田 一郎著、ブルーバックス、2018年6月29日発行)

ある高校生の「先生は科学者なのに、科学の話のなかで神を持ち出すのは卑怯ではないですか?」という問いかけに答える。 キリスト教の生まれや、いにしえの科学者であったアリストテレスの天動説から始め、15世紀末のコペルニクスの地動説、16世紀末のガリレ…

『大量絶滅はなぜ起きるのか 生命を脅かす地球の異変』(尾上 哲治著、ブルーバックス、2023年9月20日発行)

三畳紀末の生物大量絶滅の研究による大地の変化から生命へのつながりを考える。 T/J境界三畳紀とジュラ紀の境界:2億136万年前。 三畳紀最後のレーティアン(2億180万年前~T/J境界まで)に二段階の絶滅が起きた。その最後の絶滅の研究。沿岸環境では2枚貝モ…

『戦争と財政の世界史 成長の世界システムが終わるとき』(玉木 俊明著、東洋経済新報社、2023年9月26日発行)

ポルトガルは1415年にアフリカ西北端にセウタをヨーロッパ最初の植民地にする。1488年喜望峰を発見などアジア航路を開拓した。南米ではブラジルがポルトガル領となる。 スペインはコロンブスが1492年新世界発見。新世界へ進出し、1521年コルテスのアステカ帝…

『雇用か賃金か 日本の選択』(首藤 若菜著、筑摩選書、2022年10月25日発行)

前半は、新型コロナウィルス感染症流行により需要が急速に縮小した航空業界の雇用調整について、日本ではANAホールディングス、米国ではユナイテッド航空、アメリカン航空、サウスウェスト航空、英国のブリティッシュエアウェイズ、ドイツのルフトハンザ航空…

『アベノミクスは何を殺したか』(原 真人著、朝日新書、2023年7月30日発行)

13人の論客と整理するアベノミクス。アベノミクスとはなにかの定義もあまりはっきりしていないが、本書の多くの部分は日銀の大規模緩和に関する議論である。 もともと著者が反アベノミクスなので、いろいろな角度からの反対意見を述べる人が多い。しかし、傾…

『足利将軍たちの戦国乱世 応仁の乱後、七代の奮闘』(山田 康弘著、中公新書、2023年8月25日発行)

戦国時代も将軍の利用価値があったという点に着目したのは慧眼。 足利幕府は直轄領が少なく、直轄する軍事力もないため、大名に依存せざるを得なかったという点が、徳川時代とは大きく異なる。徳川は最後は軍事力で勝ち残った政権でもある。それにしても、足…

『封じ込めの地政学 冷戦の戦略構想』(鈴木 健人著、中公選書、2023年3月10日)

アメリカのソ連専門家であり、マーシャル国務長官(トルーマン大統領)が設置した政策企画室の初代室長(1947年5月5日~1949年末まで(?))を務めたジョージ・ケナンの政策を中心に米国の対ソ封じ込め戦略の成立や目的について解説した本である。 第2次大…

『イングランド銀行公式 経済がよくわかる10章』(イングランド銀行他著、すばる舎、2023年8月26日)

一般人に経済学の基礎的な話を説明しようという企画によって出版された本。日本ではなかなかこうはいかないかもしれない。 内容はあまり目新しいものはないが、いろいろ逸話がのっているのが楽しい。一番かわいそうな例はイスラエスに住む女性が母親にマット…

『21世紀の財政政策』(オリヴィエ・ブランシャール著、日本経済新聞出版、2023年3月17日発行)

数式が多く難解だが、r-g<0(実質経済成長率より実質安全金利が小さい)なら債務は償還されなくても、新たな債務が発行されなければ、生産に対する債務の比率は低下する、という箇所が印象に残る。 日本語版への序文に本書執筆の動機は日本経済の経験の研究…

『関東軍ー満州支配への独走と崩壊』(及川 琢英著、中公新書、2023年5月25日発行)

日本の現代史・昭和史の中で、大きな影響力をもったものが関東軍と満州事変だろう。本書は、その関東軍について成立から消滅まで詳しく(初心者には詳しすぎるともいえるが)解説する。なかなか読みごたえがある。 関東軍を象徴する人物といえば、やはり石原…

『柴田勝家 織田軍の「総司令官」』(和田 裕弘著、中公新書、2023年6月25日発行)

柴田勝家といえば、瓶割柴田の異名をとる猛蒋としか記憶がないが、織田軍の中核として、戦いに明け暮れた様子がわかる。 本能寺の変の後は、完全に秀吉にやられてしまったという印象だが、本書は比較的丹念に戦いの足跡を追っている。 やはり一番印象に残る…

『人体最強の臓器 皮膚の不思議』(椛島 健治著、ブルーバックス、2022年12月20日発行)

相当に難しい。 一般人が読むには難しすぎるだろう。 皮膚の老化=加齢による皮膚の老化+光老化 光老化とは紫外線を原因とする皮膚老化 紫外線には波長により、UVA、UVB、UVCの3種類がある。地球上に届くのはUBAとUVBの2種類。最も波長の長いUVAが95%を占…

『本当にわかる株式相場』(土屋 敦子著、日本実業出版社、2017年2月1日発行)

個人投資家向けPTS(Proprietary Trading System)は縮小した。現在は大口投資家向けのダークプールが増えている。 株式注文成立ルールには価格優先原則(成り行き優先)と時間優先原則がある。 株価決定は板寄せとザラ場寄せがある。板寄せは前場開始(寄付…

『琵琶法師 〈異界〉を語る人びと』(兵藤 裕己著、岩波新書、2009年4月21日発行)

ラフカディオ・ハーン(小泉 八雲)の耳なし芳一の話から始まる琵琶法師談。 なかなかついていけない。

『現代経済学の直観的方法』(長沼 伸一郎著、講談社、2020年4月8日発行)

なかなか面白い本だが、まるで平家物語を読んでいるようだ。著者はまるで琵琶法師のように経済学を語る。 鉄道の登場で、戦争は近代兵器による物量の戦いとなる。資本主義社会では金融システムが鉄道に、銀行家や財務マンが鉄道網を掌握する参謀本部にあたる…

『日本銀行 虚像と実像 検証25年緩和』(河浪 武史著、日経BP、日本経済出版発行、2023年6月23日発行)

1998年から2023年3月黒田総裁退任までの25年間の日銀の金融政策の点検。中心は2013年から2023年の黒田大規模緩和。新聞記者の書いた本なので経済理論・分析というよりも人間に関する記録の面が強い。 インフレの方が借金は返しやすい、経済活動への投資はや…

『バブルの世界史 ブーム・アンド・バストの法則と教訓』(ウィリアム・クイン、ジョン・D・ターナー著、日経BP・日本経済新聞社出版、2023年3月24日発行)

バブルは、市場性、通貨・信用、投機の3要素が揃ったとき何らかの火花で発生するという仮説。 歴史上の12バブルの概要。株と不動産、住宅がバブル資産。株には鉄道熱、自転車熱、ITなど、新技術が関係するものもある。 1719年-20年のミシシッピバブルと南海…

『エルサレムの歴史と文化』(浅野 和生著、中公新書、2023年5月25日発行)

エルサレムの観光案内のような本だ。

『綿の帝国 グローバル資本主義はいかに生まれたか』(スヴェン・ベッカート著、紀伊国屋書店、2022年12月28日発行)

5000年ほど前、インド、ペルーで綿の繊維から糸を作れることが発見された。その後、西アフリカなどでも。5000年前から19世紀までインド亜大陸が綿製品製造で世界のトップだった。インドの綿はジャワからローマ帝国迄広く交易された。ヨーロッパでは12世紀イ…

欧州と米国銀行の動向 2023~2024

2024/2/24 ブルームバーク:フォートレス・インベストメント・グループのジョシュア・パックCEO談、既に15億ドルのオフィス向け正常債権を1ドルあたり50-69セントで取得した。金融機関の債権損切に対応。 米地銀株が軒並み下落、NYCBの赤字決算と減配受…

『The World for Sale 世界を動かすコモディテー・ビジネスの興亡』(ハビアー・ブラス、ジャック・ファーキー著、日経BP、2022年10月20日発行)

コモディテー・トレーダーと商社の興亡について 1950年~2020年頃までの石油、金属、農作物のトレーディングに係る主要人物、会社の興亡の物語である。

『金利と経済』(翁 邦雄著、ダイヤモンド社、2017年2月16日発行)

高度成長期規制金利、その中核は公定歩合。固定相場、少ない外貨準備。国際収支均衡重視、1973年には崩壊。 1970年代米国グレートインフレーション。1979ボルカ―の引き締め。 名目金利+物価上昇率=実質金利。お金の貸し借りでは予想金利が重要。 実質金利…

『毒の水 PFAS汚染に立ち向ったある弁護士の20年』(ロバート・ピロット著、花伝社、2023年4月5日)

1998年10月ウィルバー・アール・テナントという農場主からの依頼で始まった。32歳。 1999年6月デュポンへの訴訟開始。2000年中ごろ初公判予定。2001年1月に延期。2000年8月、開示資料から環境保護庁からの手紙。APFOを使用しているか?という質問を見つける…

『試練と挑戦の戦後金融経済史』(鈴木 淑夫著、岩波書店、2016年5月26日発行)

日銀の金融政策について割と歯に衣着せぬ記述が多く、面白い。 1971年8月15日第26回目日本降伏記念日に、ニクソンが金とドルの兌換を停止。12月スミソニアン会議で1ドル360円から308円に切り上げ。73年2~3月先進国は次々に変動相場制に移行し、プレトンウッ…

『ナポレオン戦争 十八世紀の危機から世界大戦へ』(マイク・ラポート著、白水社、2020年7月5日発行)

ナポレオン戦争という書名にも関わらず、ナポレオン自身のことにはあまり触れられていない。ナポレオンが如何に戦ったかもあまりない。 イギリス、フランス、プロイセン王国、オーストリア、ロシアの5大国の対立。神聖ローマ帝国は365のドイツの主要な領邦で…

『地銀と中小企業の運命』(橋本 卓典著、文春新書、2023年3月20日発行)

コロナ支援 2020年3月からの実質無利子無担保融資の実績は40兆円。3年間利払いなし、元本返済最大5年間の据え置き。セロゼロ融資は赤字補填資金であり、国の有事措置として始まった。最終的には公費負担となる。1~2割の返済不能で4~8兆円の公的負担が生…

『海のアルメニア商人―アジア離散交易の歴史』(重松 伸司著、集英社新書、2023年4月22日発行)

アルメニア商人の歴史を辿った異色の書。 アルメニアはギリシャ・ローマ時代から登場する。紀元前400~300年に自治・独立し、紀元前80年頃に最大版図を得る。その後は大国のはざまで分断。 近世で独立国になったのは1991年。カスピ海と黒海の間の山岳地帯に…

『コンテナから読む世界経済』(松田 琢磨著、KADOKAWA、2023年3月29日発行)

大豆輸送でみるとばら積み船では出発港と到着港にサイロ設備があって船積する。コンテナ輸送では、バンニング施設でコンテナ詰めする。輸送運賃はばら積み船がコンテナの数分の1。しかし、ばら積みでは数千トン~数万トン単位の量を必要とし、さまざまな生産…

『日の丸コンテナ会社 ONEはなぜ成功したのか?』(幡野武彦・松田琢磨著、日経BP、2023年2月13日発行)

2017年7月川崎汽船、商船三井、日本郵船の3社がONEを設立。共同持ち株会社は、郵船38%、川崎汽船31%、商船三井31%の割合で出資、その100%出資の事業運営会社がOcean Network Express Pte. Ltd(シンガポール本社)。 約200隻のコンテナ船を運航、170万本…