『だれが「本」を殺すのか』所感

『だれが「本」を殺すのか』(佐野 眞一、プレジデント社、2001年2月)を読了した。

随分と熱のこもったルポだ。

書店と流通の部分が一番面白いが、要するに、本の発行点数があまりにも多くなってしまったので、流通の仕組みが耐えられなくなっているということなんだろう。ほとんどの本は書店の店頭に届かない。届いても直ぐに返品されるという実態が良く理解できる。

そもそも日本の津々浦々にひとつの本を浸透させるには最低でも数年はかかるのではないか?それを短期間だけ書店に預けて返品してしまうような方法では表層にしか本が届かないのは明らかだろう。これでは市場の深堀ができないのは当然である。

なぜこうなってしまうかというと、一つには多様性という時代背景があるのだろう。昔は良かったというけれども昔は貧乏で本なんて書いている時間がなかったのではないか?今は結構ゆとりがあるので本を書ける人が多いということがある。

しかし、無名の人が本を書いてもほとんど売れないだろうし。

作家を見出す編集者というが、編集者は有名出版社の人しか、紹介されていなかったか?有名出版社の看板で仕事しているのであって、結局看板がものを言っているわけだ。

編集者が独立して会社を作ったという新参の出版社には、有名出版社の看板に変わる手段が必要で、幻冬舎のように広告をばんばん出すとか。しかし、これは大衆向けの本で、ベストセラーが狙える場合の話。

学術書などは、そういうやり方は到底無理だ。このあたりは電子書籍+オンデマンドの出番にならざるを得ないのだろう。