ギリシャといったら悠久の歴史をもつ国、という固定観念をもっていたのだが、この本を読んでそれはまったく違うということがわかった。
まず、そもそもいまのギリシャのあたりにギリシャ王国ができたのが、1830年なのだ。中世においては、現在のギリシャの地域を支配していたのは、ビザンツ帝国(東ローマ帝国)であったり、オスマン帝国であったりした(p.8)。
ギリシャ独立戦争:1821.3〜1830.2ロンドン議定書(イギリス、フランス、ロシア。ギリシャ抜きで)
領土の拡張。コンスタンティノープルを目指して、挫折。
言語:古代ギリシャ語カサレヴサ、と民衆語ディモティキ。当初は古代ギリシャ語が公用語→1976年ディモティキが公用語となる。
第二次世界大戦:ドイツによる征服。共産党系主導の反抗。戦後の共産党弾圧=白色テロ。(チャーチルとスターリンの密約により、ギリシャは西側に。)
国境の外のギリシャ人:黒海・ポンドスのギリシャ人。アメリカ移民。キプロスの争いと分割。
バルカン半島から小アジアのあたりは、歴史的に、宗教・支配者が入り乱れてきた。その結果かどうか、ごく最近21世紀まで争いの耐えない地域になっている。本書を読むと、ギリシャもその例外でないことがよくわかる。
ちょっと文章が硬いのが惜しまれる。ちょうど前に、『イスラームから見た世界史』を読み終えたところだが、同書の語り部ともいえる滑らかな文章と比べると、この本の文章はいかにも硬い。