『キューバ危機』(マントン、ウェルチ著、中央公論新社、2015年4月発行)

米国の一番偉大な大統領がケネディかどうかは知らないが、私にとってはケネディの時代が一番面白い。

個人的には、子供のころ暗殺されたニュースに大きなショックを受けた記憶がまだ強く残っている。

また、ケネディの演説を収めたソノラマシートで英語を学ぼうとしたり、個人的な記憶の影響もあるかもしれない。

ケネディ政権の研究としては、『ベスト・アンド・ブライテスト』が面白かった。最近、読んだ、『ベルリン危機』も面白い本だ。

本書は、キューバ危機を米国側の情報だけではなく、最近公開されるようになった旧ソ連側の情報、キューバ側の資料も駆使して、かつコンパクトにまとめた資料である。

ケネディフルシチョフが立場の違いにより、それぞれ相手を間違って理解していたために、突然、深刻な危機に追い込まれた、という点。最初はそれぞれが、感情に基づいて行動しそうになったが、時間をかけて冷静となり、お互いに理解しあって解決できた、という点。その過程をたどっている点がとても面白い。

共通項としては、事態がそれぞれの制御できない状態にまで進んで悲惨な戦争を起こしたくないということである。

両者が書簡への回答という形で落としどころを探っているのも面白い。

いづれにせよ、できるだけ直接のコミュニケーションを使わないと、情報機関などの情報はノイズがおおき過ぎて信頼度が引いということは分かる。