『ウィロビー回顧録 知られざる日本占領』(C・A・ウィロビー、番長書房、1973年)

G2とGSの対立の部分は赤裸々な記述があって面白い。G2の責任者ウィロビー将軍は吉田びいきであり、GSのホイットニー将軍と対立していたことは知られていることだが、それにしてもいろいろはっきりと書いていて三文小説より面白い。ホイットニー将軍の部下であるケーディス大佐が、米国に一時帰国(国防省との折衝)した際に、彼と鳥尾元子爵夫人とのスキャンダルを調査した報告書を送って、私生活を暴露、離婚に追い込み退役させて日本に戻れなくするなんて、そんなことを得意げに告白…

ちなみに、ウィロビーは誇大妄想的反共主義者(約50年後にソ連が崩壊したことを知っている立場からすると滑稽でさえある)で、本の中で自分は反共主義だ! と高らかに宣言している。GSを容共主義として、GSのスタッフを調査しまくり、マッカーサーに報告書を提出している。GHQの中の赤狩り!をやっていた訳だ。

この本の中で一番面白いのは、朝鮮戦争の仁川上陸作戦の部分だろう。かなり誇張されている感はあるが。マッカーサーが配下の将軍を引き連れて、護衛機なしのバターン号で朝鮮まで現地の前線を調査にいったとか。配下を送り込んで仁川港の灯台を奪取する下りとか。北朝鮮・中国軍に疫病が流行っているという情報があり、その疫病がペストかどうかを調べるために敵の野戦病院から患者と死体を奪取して、米軍の軍医が診断するとか。

朝鮮戦争についての本は、数冊読んだのだが、マッカーサー軍の中で仁川上陸作戦について語った物語を読んだのは初めてなのだ。

http://d.hatena.ne.jp/anone200909/20121203/1354490713