『戦艦大和の運命』(ラッセル・スパー著・左近允 尚敏訳、新潮社、1987年8月)

イギリス人の記者がこのような本を出しているとは、ちょっとびっくりだが、内容はなかなか良く調べてある。

日本人の書いたものと違って、米軍の視点が半分以上入っているのが興味深い点である。

読んでみると戦艦大和について実戦の経験者に取材し、話を聞いて書いているようだ。その点ではやはりジャーナリストの書いた本の利点といえる。

大和の戦いは、日本民族の歴史に残し、長く記憶に残すべきである。しかし、武蔵や大和の戦いの本を読むと、毎度、なぜ大和のような時代遅れの戦艦を作ってしまったのか、優秀な人材を集めたはずの海軍本部の、先の見えない愚かさにがっかりする。

もう目の前に航空機の時代がやってきていることは、少し調べれば予想できたのだろうに。大艦巨砲が10年先にもそのまま続くということに疑いを持たなかったのだろうか? 石油の時代に石炭に固執し、電灯の時代に石油ランプに固執するようなものだが。人間の愚かさを典型的に表すものといえる。