昭和16年12月8日の対米英蘭戦争の開戦にいたる意思決定過程を分析した本である。
戦前の大日本帝国憲法が、リーダーとなるべき存在を明確に定めない欠陥憲法であったこと。
その穴を埋めるべく、大本営政府連絡会議・懇談会なる会議が運営されたが、その会議の決定事項には明確なことがかいてなく、立場によって何通りににも読み取れることが記載されていたこと。
その理由としては、内閣は首相に大臣の首をすげ替える権力がなく意思統一するには最悪内閣総辞職しかなかったこと。
陸軍、海軍、それぞれに軍政と戦争実施の二つのヘッドがあり四者で相互に意見が違ったこと。
上層部に対して、若手が強硬で下克上の風潮が強かったことなど。
などが上げられる。こうした結果、戦争はしたくないと思いながら、最悪の結果を回避しようとして結果的に開戦という最悪の結果を選択してしまったこと、が分析されている。
(本書の内容ではないが)では、こうした意思決定の欠陥のない(?)ドイツではどうだったか、ということを振り返ると、ヒトラーを首班とするナチが国家を総動員して戦争に突き進んだのである。ヒトラーの場合は、権力が望ましくないリーダーに集中した例であり、意思決定過程は日本とは反対かもしれない。
本書をよむと、誠にリーダーの存在の重さを知らされる。