『ロンドン』(小池 滋著、中公新書、1978年発行)

19世紀のロンドンを、ディケンズを中心とする作家の筆によって探訪する。

なかなか趣があって面白い。
コベットがロンドンを大きなできものという。都市は、地方の農村から流れてきた人達の集まり。
ディケンズ一家は父親がお金のやりくりに失敗してロンドンの貧民街に、そして、債務者監獄へ落ちる。ディケンズはその経歴を隠しながら健筆を振るったらしい。

ロンドンは逃亡者の街でもある。スペインの継承戦争の敗者、マルクスなどをはじめ、ウエーバーはロンドンで客死、他にも音楽家の移住も多い。

コヴェント・ガーデンは、オペラの檜舞台。その直ぐそばには朝は青果市場が開かれた。

ロンドンは犯罪の巣窟で、夜歩きには死を覚悟しなさいとまで書かれている(p.72)。そうした犯罪は最初のうちは奉行所のようなところで裁かれたらしい。

その後、議会が承認し、財務省が支出するスコットランドヤードは、ロンドンの犯罪を取り締まるために生まれた。スコットランドヤードが軍隊と区別するために武器をもたなかったというのも面白い。

あとは、監獄の話、様々な拾いやの生活など。Only Yesterdayをもじってホンの100年前という副題も面白い。