『「ポスト・グローバル時代」の地政学』(杉田 弘毅著、新潮選書、2017年11月25日発行)

20世紀後半からつい最近まではグローバル時代と認識している。それ以前も移動手段の進展でグローバル化が進んできたのだが、20世紀後半は航空機の発展でグローバルな移動の大衆化が進み、さらには、1990年代後半からの20年はインターネットの発達で、どこにいてもリアルタイムで世界中の情報に接することができるようになった。

さらには、1990年代終わりのソ連の崩壊と、中国の社会主義における資本経済化の進展で社会主義圏の労働力がグローバルな市場に提供されるようになった。

また、情報機器の発達で、例えば清書のような単純な労働は不要になった。

こうした世界の変化に対して、国家の中では、経済的階級社会とも言える分断が起きている。米国やイギリスはグローバル化推進の中心勢力であったが、彼ら自身がこうした変化に耐えきれなくなっている、というのが現在の姿だろう。

この結果、米国第1というような国家主義が台頭してきている訳である。これをポストグローバル時代というのが適切かどうか(つまりグローバル時代の姿の1つと認識するべきか?)は疑問の余地がある。

本著では地政学と怒りというキーワードでこのような状況を切り取って見せている。