『物語 タイの歴史』(柿崎 一郎著、中央公論社・中公新書、2007年9月25日発行)

あとがきを見ると本書は2007年1月執筆開始とあり、2007年9月発行なので、ものすごく速いペースで書いているようだ。

タイの古代〜21世紀初頭までの歴史を外観した書であるが、どちらかというと20世紀からの話が多いかという印象がある。日本でいうと大正・昭和までが中心といったところか。タイの立憲革命が、1932年6月ということなので、ちょうど昭和に入って直ぐの頃である。

立憲革命の後も、日本の明治〜昭和の初頭と同じように、政党政治がなかなか確立せず、軍部と組んだクーデタ−による政権の交代が頻繁で、2大政党というような仕組みができていない。

選挙による民主主義がなかなか成立しないのはなぜなのか?

日本では、選挙によって、議員を選び、その指名により首相が決まるという仕組みが漸く戦後に確立したが、これは軍部が大失敗して存在しないためというのが理由である。

タイは東南アジアの中では、唯一といって良いほど、長く独立を維持した国であり、もし日本が敗戦の経験がなければタイのようにまだ軍部が力を持っていたのかもしれない。

世界の歴史の中では一つ面白い存在の国であるという感想をもった。