『サルたちの狂宴 上』(アントニオ・ガルシア・マルティネス著、早川書房、2018年6月発行)

本書は上下巻に分かれていて、上巻は、著者がニューヨークのゴールドマン・サックスを離れて、シリコンバレーのアドケミー社に移り、さらには、アドケミー社を離れてスタートアップを起こし、スタートアップをM&Aで売却するところまで。

この間数年だと思うが、やはり一番面白いのは、シリコンバレーのVCの支援を得てスタートアップを立ち上げるところの内部事情的な話の部分だ。

スタートアップそのものは、3人の小さな会社で、製品の開発期間は1年もないので小さな話だが、それを最終的に5億円以上でTwitterに売った結果になる。Twitter社は何が欲しかったんだろう。著者らが作ったプロダクトは、おそらくTwitterでは使われていないと思えるので、最終的に得たものは2名のエンジニアだけではないかと思う。

本書の中では面白おかしく、興味をそそるように書かれているが、冷静に考えると、2名のエンジニアを採用するのに5億円というのは、あまり効率的とは言えないだろう。

むしろ面白いのは、シリコンバレーの様相の話だ。シリコンバレーが新しい企業を次々に生み出すのはなんと言っても脅威的だが、本書を読むと、その背景にある資本の供給者やベンチャースピリットのことが良く理解できる。

かなり破天荒な語り口だが、著者のビジネス判断は全体としては誠実な心に基づいていると思った。