『心理学の7つの大罪』(クリスチェインバーズ、みずず書房、2019年4月発行)

第一の罪 確証バイアス

ウェイソンの選択課題。有益でないカードをひっくり返す問題。間違ったカードをひっくり返す被検者が多い。確証をどうやって得るかという問題である。

多くの心理学ジャーナルは論文の追試研究、検証結果を掲載しない。査読付きの一流ジャーナルには、刺激的な陽性の結果が掲載される傾向がある。

概念的再現性と直接的再現性。概念的再現性への依存は確証バイアスの虜になる。

HARK行為とはデータを得た後で、仮説を変更してしまうという欺瞞行為。直接的再現性の検証が必要なのに、概念的再現性で問題をすり替えたり、HARK行為やp検定の値をえるために途中で被験者追加をやめてしまうケースが多い。心理学者は自らを欺いているといえる。

第二の罪 p値ハッキング

帰無仮説有意値検定(帰無仮説を棄却する)の統計的有意差を生み出すために研究者の自由度を利用する。例えば、結果を精査したうえで被験者を追加する。

第三の罪 追試が行われていない

追試論文は価値を認められない。発表された発見の98%までが未確認。または誤謬になる。

第四の罪 データの私物化

心理学者はデータを私物化している。アメリカ心理学会(APA)のジャーナル4誌に掲載された249本の研究にデータを要請したところ約1/4の研究からデータが得られた。APAにはデータ共有を義務つける規定はあるが、リップサービスだ。

第五の罪 不正行為を防止できていない

実験における詐欺行為、データの改ざん

第六の罪 オープンサイエンスへの抵抗

ペイウオール方式の発表から脱却できない

第七の罪 インパクトファクター、研究助成、著作権などの誤った指標

でたらめな数字で評価している。1995年ユジーン・ガンフィールドのインパクト・ファクターという被引用メトリック。参照用被引用回数データベース。ジャーナルのインパクトファクター(JIF)とは、過去2年間に掲載された論文の当該年の引用数の平均値。例えば、『ネイチャー』に2012年~2013年に掲載された引用可能な論文数は1729、2014年に引用された延べ回数は71677なので、『ネイチャー』のインパクト・ファクターは41.5。科学出版の最高位の数字である。

JIFは最悪の数字である。恣意的な操作が可能で、論文の内容とは関係ない。被引用回数に関心を持つのは当然のことではあるが。

救済策は?

研究の事前登録制、登録制報告