『独ソ戦 絶滅戦争の悲惨』(大木 毅著、岩波新書、2019年7月発行)

岩波新書の『独ソ戦』が人気らしいと聞いて買ってきて読んだ。ソ連の崩壊前後から公開され始めた資料の研究が進んで、独ソ戦に関するこれまでの通説がだいぶ変わってきつつあるということは、なんとなく分かった。

スターリン像はあまり変わり映えしないが、ソ連軍の作戦術が優れていたというのは初めて読んだ。戦略と戦術の間をつなぐ「作戦術」という考えは面白い。

ドイツの軍人は戦後ヒトラーに責任を全部押し付けて過去の歴史をかなり歪曲していた、しかし、実際のところは軍部もかなり積極的に無理な計画を作った、というような指摘もこれまで読んだ記憶がない。本で読んだのは初めてかもしれない。

しかし、本質的なところはこれまで読んだ東欧の歴史に関する本とあまり変わっていないという印象を受けた。つまりドイツ側にとって不都合な人種の絶滅戦争という位置づけと、国際的な約束や民主主義など屁とも思わないスターリンソ連軍の無慈悲さが際立つ、という第2次大戦の東部戦線に関する。この種の本は読んでいて辛くなるが本書も例外ではない。ありがたいことに新書のボリュームだとそれも短時間だが。

スターリンにしても、ヒトラーにしてもやっていることが今から見れば滅茶苦茶だ。といっても、現代でもシリアあたりでは同じようなことが起きているわけだ。

願わくば、将来、東アジアでこのようなことが起きないことだが、東アジアには中国と北朝鮮がいるから将来はかなり危ういところにある。