『ディープインパクト不況 中国バブル崩壊という巨大隕石が世界経済を直撃する』(真壁昭夫著、講談社α新書、2019年11月20日発行)

中国バブル崩壊に備えよ、というのが本書のメッセージである。確かに現在の世界経済において中国の占めるウェイトは大きい。本書では、現在、中国経済成長の限界にきており、今後、中国経済が大失速すれば、ドイツを始めとするEU、日本経済はかなり大きな停滞に陥る危険があるという。知りたいのはそのシナリオの現実化する可能性、時期、果たしてどの程度のインパクトになるかだ。

改革開放政策(1978年)以来中国が爆発的な発展を遂げてきたのは周知の事実であり、またリーマンショックの際(2008年11月)に中国が巨額(4兆元、邦貨57兆円)の景気刺激策を行うことで世界経済の落ち込みが緩和されたと言われる。

中国の経済運営体制は、国家独占とはいえないが、政治的には共産党独裁下での管理自由経済という特殊なシステムである。ここは、すでに経済運営に失敗したソ連のような仕組みとは異なる。個人的には、中国のような経済運営体制に果たしてどの程度の永続性があるかは大いに関心がある。これまでは良くやってきたという印象を受けているが実際はどうなんだろう。本書には経済のなかで政治的に決まる部分にいろいろ問題を上げている。

株式市場では2014年11月香港と上海で株式相互取引制度が発足し、本土では2014年~2015年に株価が倍以上となる。2015年夏に株式は下落に転ずると上場企業の大株主に株式売買6ヵ月禁止措置をとる。その後も株式が下落すると「国家隊」がPKO。このように、株価がかなり人為的に操作されている部分がある。

中国では土地は国の所有物なので利用料を販売する。都市部での住宅価格の上昇は金融によって政策的に調節される。本書では不動産バブルを強調しているが、これは本書を読んでも理解できない。高速鉄道、地下鉄などのインフラ事業においても経済性を無視した過剰投資の問題が蓄積されているようだ。

製造業は中国離れしつつある。第一に中国のコストが大きくなったので、コスト削減にはアジアの他の国への移転が必要となる。第二にトランプの対中貿易戦争政策によるグローバルビジネスサプライチェーンの見直しがある。

中国のさまざまな問題が述べられているが、中国の不動産バブル崩壊というキーワードが頻出しており、本書で未来を予想するときのスキームが理解しにくい。本書には中国バブル崩壊の影響が大きい、大きいという言葉が連呼されるがあまり説得力を感じない。