『モビリティ―サプライヤー進化論 CASE時代を勝ち抜くのは誰か』(アーサー・ディ・リトル・ジャパン著、日経BP、2019年12月23日発行)

自動車産業でCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリングサービス、電動化)が進行。ダイムラーが2016年にCASEを唱えた。内燃機関からEV、燃料電池車(FCV)により、自動車部品出荷額の28%が影響を受ける。自動車産業はモビリティ産業に拡張される。日本の部品産業は電動パワートレーン、イメージセンサー領域のためのキーコンポーネントでグローバルな強みがある。

日本は系列で垂直統合、欧州は系列縛りが緩く水平分業。欧州OEMは組み合わせ力に重点があり、Bosch、Sontinentalなどのティア1のメガサプライヤー化している。中国の産業政策はハイブリッドである。

CASEの要求機能はソフトウェア開発への負担が大きい。100倍の開発生産性が必要。独OEMは環境エネルギー効率アップなどの要求に答えるには現状延長では無理として全体最適化を狙う。 また、自動運転などは法規を含めて10年後の予想は困難なのでアジャイル開発が必要。アジャイルは軍用機でも成果があった。SaabのGripenはアジャイル開発による。ウオーターフォール型で開発したF-35の1/100の開発コストであった。

システム化とソリューション提案。システム化は自社商材を核に周辺部分を取り込む。社内組織・外部連携、KPI設定など。

自動車OEMはグローバルビジネス化している。トヨタは2001年に海外が国内を上回り、2014年に北米が日本を上回る。デンソーも2013年に海外が国内を上回る。サプライヤも日本の本社機能のみでは回らない。グローバルビジネスの再構築が必要。

2017年研究開発費は、ボッシュ9,400億円、コンチネンタル4,030億円、デンソー3,992億円。これはスズキ、マツダ、スバルの合計より大きい。中堅サプライヤーは部品消滅の可能性がある。新規事業創出方法はアイデアでは行き詰る。対象市場×バリューチェーンで行う。自社の強みを同定し、試行錯誤を繰り返す。MFT手法:機能をブリッジとして市場と技術を結びつける。例として排気系サプライヤの製造ラインロボット化の技術を「良品廉価を実現する生産システム構築」として昇華させる。

イノベーションは、機能の強化(性能進化モデル)から顧客の潜在的な悩みの解決(マーケットイン)に変化し、さらに、Uberのようなエコシステムを再定義するモデルが有力になった。電子部品や機能材料は性能進化モデル。日本企業は強い。近年のイノベーション施策であるCVC、アクセラレータプログラム、大学との包括提携、イノベーションハブなど新しいイノベーションマネジメントは、エコシステムモデル。CVCはUSのベンチャー投資の20%近い。アクセラレータはスタートアップの成長支援。

ICTベンダーの例。マイクロサービスアーキテクチュア手法は大規模なシステムを小規模な独立的に動く機能に分割して少人数のチームで自律的に進める。フォルクスワーゲンvw.OS。KubernetesはCloud Native Computing Foundationを通じてオープンソースで提供している。

車両コストに占める電子部品の比率は10年で2倍になり、2015年で40%になった。電子部品の中で強電圧(数10V~)の高圧帯で使われるディスクリート部品はノウハウの蓄積が重要で利益率が高い。コイル、トランス、リレー、コンダクター、その他電源系部品。次世代車載通信システムではHarman International が大きなシェアをもつ。カーナビのような自動車メーカに技術蓄積されやすいものは難しいが、カーオーディオは利益のコントロールがしやすい。自動車領域はボリュームが期待できるキラーアプリは難しく、隙間を狙うべき。

都市インフラを作るプレーヤーは、計画、機器と設備製造、建設据え付けがある。機器には情報通信、交通、エネルギー、水の各インフラがある。EVへの電力供給インフラや逆にV2G、V2Hのソリューションもある。CASEに関連して、都市インフラのプレーヤーに新事業機会が生まれる。

コネクテッド:トヨタのG-Book、G-Link。日産のカーウィングス、ホンダのインターナビ。自動運転(ADAS):2000年代前半に各社のレベル1が出た。

デンソー:熱、電子、パワートレーンから、エネルギー、セーフティ、コネクテッド、HMI(Human Machine Interface)の4領域でソリューションを生み出す。アイシン精機と電動駆動モジュールの開発・生産会社を設立、など。

東レ:クルマを先端材料で進化させる。炭素繊維を活用して軽量化、電動化はリチウムイオン電池用のセパレータフィルム、快適では人造皮革、安全ではエネルギー吸収部材。自動車向け技術開発拠点オートモティブセンターを設置。2019年1月にミュンヘンにも。

坂本工業:吸排気・燃料関連部品メーカ。電動自動車が支配的になるのは2世代先。スバル以外も展開したい。

KKRジャパン:投資会社。20兆円の資産をグローバル運用。カルソニックカンセイに投資。日産が85%から、マニエッティ・マレリを買収して顧客分散。日産は40%、フィアットクライスラーグループが30%となる。社名をマレリに変更。

グローバル資本主義の限界から、フラグメント化する世界へ。