『バブルと生きた男 ある日銀マンの記録』(植村 修一著、日本経済新聞社、2017年1月18日)

経済学の資産価格はその資産が将来にわたって生み出す収益の現在価値(ファンダメンタルズモデル)。ファンダメンタル価格との乖離が経済学的なバブル。バブルを防ぐのは個々の経済主体のリスク管理に尽きる。

1985年が転換点。その前後、大阪本社の企業が雪崩を打って東京本社機能を移していた。1985年プラザ合意でドル高を是正しようとした。国土省の東京オフィス不足レポート。富士と住友の動きに気を付けろ。FS戦争。住友が平和相互銀行を吸収、100店舗を追加して首都圏での存在感を高めた。対抗上、富士は外貨預金の金利自由化を使って預金獲得に動いた。

1990年3月総量規制導入。1991年6月より総量規制の解除のための環境整備。総量規制は閣議決定のため解除に根回しが必要。12月中旬に国土庁の臨時地価調査で下落傾向を確認し、12月20日土地関係閣僚会議で解除が適当との判断、年内で解除、トリガー方式に変更するとの通達が出る。本来総量規制はもっと早くに導入するべきだったか。しかし、当時は金融システムに潜むリスクを判断するマクロプルーデンスの発想が足りなかった。

1996年後半~1年間は静寂期で、成長率4.4%。97年にふたたび金融システム不安が燃えさかり、三洋証券、北海道拓殖銀行山一証券の破綻が起きる。

テールリスクとは、めったに起きないけれど起きた時に極めて大きな影響を受けるリスク。最近はブラック・スワンともいう。

バブル生成のインセンティブが次々に現れることがバブルが繰り返される理由である。デリバティブは賭博罪に該当する。(法務省判断)⇒銀行法の法的措置で回避した。

リスク管理で大切なことは:

1.将来のことについて謙虚であること(思い込み、楽観論を避ける)

2.「気づき」を大切にすること(異常さに気づく)

3.木を見ず、森をみること

 である。