『検証 経済暗雲』(西野 智彦著、岩波書店、2003年7月15日発行)

主にバブルが崩壊した後の1992年から1995年までの金融行政についてまとめた本である。前著の『検証 経済迷走』、『検証 経済失政』に至る前史にあたる。

〇寺村銀行局長の時代 1992年6月~1994年6月

主な課題は次の通り。 

・銀行の決算対策

貸し渋り問題

不良債権処理の環境整備

寺村就任時の最大の課題は住専

住専問題―住専とは1970年代に金融界の共同出資で設立された住宅資金供給公社が8社あり、うち7社の経営問題。住専が不動産関連融資にのめり込んだ。住専への融資残高15兆円の42%は農林系金融機関で、都市銀行は9%しかなかった。

公的資金を導入しない方針として、解決困難な住専問題を寺村は先送りした。総理の宮沢は公的資金導入論だったが、官が乗らず。

兵庫銀行は長谷川会長が20年以上君臨し業容拡大。バブル崩壊で資金繰り危機になる。 10月19日長谷川退任。リストラ、日銀・大蔵の顧問受け入れ・管理銀行となる。1993年4月元銀行局長の吉田正輝が社長として送り込まれる。

日債銀の関連ノンバンク不良債権問題。

・釜石信金

・東京協和、安全信組は1993年7月に長銀が支援打ち切りで問題化。

 〇西村銀行局長の時代 1994年6月~1996年7月 不良債権問題に果断に取り組む。

・日本信託問題は、三菱銀行が子会社化で決着。

・東京協和、安全信組問題が日経記事で表面化。日銀と民間金融機関オールジャパン方式の協調で、東京共同銀行を受け皿として設立。しかし、後に政治問題化する。

・吉田から度重なるSOS。兵銀処理が急務となる。木津信金と同時に発表。

・木津信金(大阪)の業務停止命令。大阪府

・コスモ信金(東京)への業務停止命令を発動。青島知事、32年ぶり。

・大和ニューヨーク支店の損失問題が発覚。

住専処理に大蔵省・主計局と官房の決定による公的資金発動。住専7社の受け皿の住宅金融債権管理機構96年7月26日。住専処理が終われば不良債権問題の山は越えるとされたが、実際には年を追って悪化した。

寺村はすべての問題を先送りした。本人は失敗だったとは思っていないようだが、これは結果的には誤りだった。その根本には株や土地がいずれ値上がりするという判断ミスがあったのではないか。金融危機の期間中、銀行は決算対策で含み益のある株を売却して益出しした。それは循環して、株価がさらに低下する要因になったとみられる。

金融危機が最終的に決着するまで10年かかっている。護送船団方式ではなく、破綻させれば一時的に傷が大きくなるかもしれないが、立ち直りは速いのではないか。