『イギリス海上覇権の盛衰 シーパワーの形成と発展 下』(ポール・ケネディ著、中央公論新社、2020年8月10日発行)

下巻は、第7章から実質は第12章まで。終章があるが簡単なまとめ。

マッキンダー1904年「歴史の地理的転換」でコロンブス以来の征服の時代が終わり、社会の力の激発のすべては閉じられた環境で起きる。ロシア中央部(中央アジア)が再び世界の中軸地帯となると予言する(p.21)。ハートランドと呼ばれる。ロシアとアメリカが2大勢力となるだろうと予想された。

19世紀の最後の30年で工業力ではほかの国がイギリスを追い越した。こうなったのはイギリス自身が安逸に過ごしたことと、イギリス資本の投下が外部に向けられていたということも原因である(p.27)。大規模な陸軍の組織化もイギリスの強国としての地位を低下させた(p.48)。

19世紀末からイギリス以外の多くの国(フランス、ドイツ、ロシア、イタリア、アメリカ、日本)が海軍を強化した。アジアでは1902年の日英同盟によりイギリスは中国拠点を減らす(p.68)。日英同盟は1911年更新。1912年には海軍はドイツに対してのみ対抗する。フランスとの協定。

1914年の第一次世界大戦塹壕戦。ドイツ海軍は地理的に不利すぎてまともに英海軍と戦えない。唯一の艦隊同士の戦いはユトランド沖海戦。戦争直前に長距離高校可能な潜水艦が登場。1914年にはUボートで英国の巡洋艦が沈められる(p.118)。ドイツ潜水艦と連合国商船隊の戦いとなる。近代戦争はコストが莫大となる。イギリスの日本への依存が強まる。アメリカへの大きな借金ができて、イギリス経済の力が落ちる。

1919年から39年の戦間期に凋落する。イギリス海軍が1919年に航空母艦12隻持っていたとある(これは驚きだ。 153ページ)。米国によるワシントン会議英米、日、仏・イタリアのトン数規制、日英同盟の廃止と英、米、日、仏の四か国条約。

イギリス戦時内閣の委員会は1917年に航空作戦が遠くない将来主力となり、古い陸軍作戦、海軍作戦は重要でなくなると述べた(p.174)。参戦国の本土深くを攻撃できるエアパワーの登場。1931年日本による満州支配始まる。1933年ヒトラー政権始まる。イギリスは空軍力の増強を図り、1930年代に空軍予算が最大となる(p.182)。

第二次世界大戦の勝利はアメリカに依存する結果となり、イギリスにとっては幻想であった。

第12章にはロシア海軍の戦力についての記述がでてくるが、原著は1976年に書かれたのだから、ロシア海軍という存在があるとは思えない。ソ連海軍ではないだろうか。しかし、プロの翻訳家がそんな誤訳をするはずはないような気もする。1976年書かれた本でソ連海軍ではなく、ロシア海軍と書いていたとすると大変な先見の明ともいえる。