『明智光秀 織田政権の司令塔』(福島 克彦著、中公新書、2020年12月25日発行)

明智光秀の事業について新しく判明した文書などに基づいて丹念に説明している好著。

血なまぐさい戦いのことはあまり具体的に触れていない。むしろ坂本城の構築、京都での代官政務、丹波攻略、丹後・細川藤孝との関係、連歌師、などとの関係など、実務家的な側面を注視しているようだ。

それにしても、本書の主な記述対象とする歴史の期間は1568年の信長・足利義昭の上洛から1582年の本能寺の変までたったの14年間である。光秀は義昭上洛に従って京都に入り、1569年正月に三好三人衆が義昭の御座所であった本圀寺を攻撃したときにそれを防衛した一人として初めて登場する。

そして、織田信長に使えるようになり本能寺の変にいたる。このような短期間で日本史に残る展開があったということに改めて驚く。この頃の時代の人たちの方が濃密な時を過ごしていたのは確かだ。日本経済失われた20年などという言葉が、いかに虚ろなものか、と思わずにはいられない。