『地図づくりの現在形 地球を測り、図を描く』(宇根 寛著、講談社選書メチエ、2021年1月8日発行)

地図の作り方はアナログ測量から、デジタル、航空・衛星、通信を活用した測量へと根本的に変化している。デジタル化は、飛行機による写真やレーザ計測、衛星からのGNSS(Global Navigation Satellite System)による電波測量をコンピュータで処理している。GNSSの単独測位での精度は10m程度。2台の受信機を使う相対測位ではもっと精度を上げられる。日本が打ち上げた「みちびき」衛星は2020年現在3機が準天頂軌道、1機が静止軌道にあり、単独測位でも数cmの精度を出せる。

電子基準点が全国に1300ほど設置されている。電子基準点の動きを調べれば、日本列島の移動もわかる。東北地方太平洋沖地震の前は東日本は太平洋プレートで東から西に押し付けられて、年間3cm東西に縮んでいた。地震でその歪が解消される方法に動いた。宮城県牡鹿半島電子基準点は東南東に5.3m移動、1.2m沈下した。地震後も移動しており、9年間で1m以上移動した基準点もある。

国土地理院が提供する日本の地図も印刷物の頒布からデジタルとWebによる閲覧方式へと根本的に変わった。国土基本地図は、従来4000枚余りの25000分の1地形図であったが、2009年(平成21年)から全国をシームレスにつなげた電子国土基本図に変更された。これは都市計画区域は2500分の1の都市計画基図をもとに、他は25000分の1地形図をデジタル化したもので構成される。

国土地理院は、2003年に電子国土Webシステムを公開した。2013年に地理院地図に名称を変更。地図タイル方式をとっている。タイルの大きさは256×256ピクセル。ズームレベル毎に表示される情報の詳しさが変わる。また、2019年よりベクトルデータ(地理院地図Vector)で構成された地理院タイルのサービスを開始した。