『住友銀行秘史』(國重 惇史著、講談社、2016年10月発行)

バブルの末期に住友銀行イトマンであったできごとの裏話。

住友銀行天皇といわれた磯田一郎会長が辞任するまでのいきさつ、磯田の腹心でイトマンに送り込まれた河村良彦社長が伊藤寿永光に取り込まれて不動産事業にのめりこむ。また、絵画取引では許永中も登場する。日本のバブル(主に土地)を象徴するできごとの一つについて解決を目指して仕掛けた記録である。

ハイライトは、やはりイトマン改革であるが、メーンバンクである住友銀行でさえも融資の詳細が分からなかったという。

全体としてみて、決断が足りない。様子をみようという動きが多いが、歯車が逆回転を始めたところで様子をみるのは最悪である。ますます膿が増える。この点、イトマン会社更生法で処理しようとして、頭取に何度も心変わりはないと言質をとりながら、最後の段階で「ちょっと待ってくれ」といわれた場面が一番印象に残る。結局は、会社更生法の適用に大蔵省が頑強に反対したということである。イトマン債務不履行地方銀行などに取り付け騒ぎが起こったらどうするのか? ということだそうだ。

しかし、この時点は1990年11月である。バブル崩壊の認識もなかったら時期で銀行にも体力があっただろう。なぜ早期処理しないで問題を先送りしたのか? 大蔵省の責任が大きい。