『新賢明なる投資家 割安株の見つけ方とバリュー投資を成功させる方法 上』(ベンジャミン・グレアム&ジェイソン・ツバイク著、パンローリング、2005年4月3日発行)

投資と投機を区別すること。投資とは次の3つの条件を満たす。

1.詳細な分析に基づいたものであり

2.元本の安全性を守りつつ

3.適正な収益を得るような行動である。

この条件を満たさない売買を投機的行動であるという。

普通株の売買においてはリスクが付きものである。リスクは利益をうるチャンスと不可分である。。債券投資における金利と元本は株における配当収入と価格上昇よりもずっと強く保護されており、確実である。

保守的投資家は、資産を優良債券と優良普通株に分けてもつべきである株式は25%~75%、50対50が標準。(これは1970年代の米国の場合だろう。)株の割合は市場の動きに反比例させる。つまり株が上がったら割合を減らす。株式が大幅に下落しても平静を保てるという場合のみ50%以上とする。

◎防衛的投資家の組み入れ銘柄基準

・10~30銘柄の分散投資

・財務内容の良い有名な大企業を選ぶ

・長期に渡る継続的な配当支払い実績があること

・銘柄の買い付け価格は、過去7年程度の平均企業収益の25倍、過去12か月の企業収益の20倍を上限とする

ドルコスト平均方が良い。

きちんとした銘柄選択がなされた株式ポートフォリオが、かなりの期間に渡って満足のいく利益を上げているとすれば、そのポートフォリオの「安全」は証明されたといえる。価格が下落しても売らなければ損失はでない。内在価値に照らして明らかに高すぎる株価で買ったかもしれないという危険があれば本質的なリスクがあると言える。

成長株とは過去に1株あたりの利益が一般の株式よりもずっと高い割合で増加してきており、かつ将来的にもその状況が続くと期待される株。しかし、通常は法外な値段が付いているので投機性が高まり、成功が困難である。

◎積極的投資家の普通株売買行動

・相場が下がっているときに買い、逆に上昇しているときに売る。

・よく吟味した「成長株」を買う。

・様々なタイプの割安株を買う。

・「特別な状況下」の株式を買う。

成長株への投資専門のファンドの業績はダウ平均やS&Pより良いとは言えない。一般の投資家が専門ファンドより良い成果を得られるとは思えない。成長株で巨額の利益を得るのはオーナーの親族、社員など株を持ち続けるつながりのあった人である。一般の人は巨額の利益がでるまで持ち続けられない。

平均して利益を出すには、堅実であるとともに、大多数の投資家や投機家のやり方とは違うやり方をとることが前提となる。

・不人気な大企業に投資する。具体的には、株価収益率が最低の6~10のダウ平均銘柄に毎年投資する。それを1~5年保有して売却する。⇒試算ではうまくいくときもいかないときもあった。

・割安株の見つけ方:①見積による、②事業価値を資産を含めて計算する。

◎投機家と投資家の違いは、市場変動に対してどのような態度で臨むかである。

「株価が大幅に上昇したすぐ後には絶対に株を買ってはならない。また、大幅に下落したすぐ後には絶対に売ってはならない。」

・少ない回数で、辛抱強く、安い金額で取引する。

・市場があがり利益が転がり込んできたからといって、資金追加することは禁物である。このときこそ潮時である。

株式のリスク

今日の価格で普通株を購入する人は、その後何年にも渡ってその株による収益に見合わないリスクを背負っていることになる。

近年空前の収益をもたらしているからと言って、資金を債券だけ、あるいは株式だけに注ぎ込むのは良くない。

本書は株式の価格変動の大きさを何回となく警告している。この警告こそが最も重要なものだろう。しかし、忘れがちなのだ。また、本書の内容の半分以上が米国市場の分析であり、米国の投資家に向けて書かれている。これは残念。日本市場向けにこのような本が欲しいものである。