『現代ロシアの軍事戦略』(小泉 悠著、ちくま新書、2021年5月10日発行)

ロシアは欧米に比べて経済力でも、技術力でも劣勢なので対抗策を考えている。

ロシア連邦軍は2021年定数101万人、実勢90万人。徴兵25万人、職業軍人21万人、契約軍人40万人他。

現在はポスト・ポスト冷戦時代だ。

NATOの拡大

1999年NATO第一次東方拡大でチェコハンガリーポーランドが加盟。

2004年NATO第二次東方拡大でバルト3国、ブルガリアルーマニア、スロヴァキア、スロヴァニアがNATO加盟。

2009年アルバニアクロアチア

2017年モンテネグロ

2020年北マケドニア

ロシアの反発

2008年のウクライナグルジアNATO加盟案に大反発。ロシアはNATOの拡大を国家安全保障上の脅威と位置付ける。戦略縦深の喪失と軍事バランスが不利になる。

アルメニアアゼルバイジャンベラルーシグルジアモルドヴァウクライナNATOに加盟しようとしたら軍事力行使しても阻止する立場。

2014年ウクライナ危機。2月27日ロシア軍特殊作戦部隊が、クリミア半島を占拠。3月16日クリミア半島を独立、ロシア併合。3月ウクライナのドンパス地方での紛争。ドンパスでの紛争は終結していない。ロシアはウクライナを侵略しようとした米国への反撃とする。ドローン、電波干渉、サイバー攻撃など電子戦。ドンパス地方の紛争では民兵勢力も活動した。しかし、実際には、民兵は統制しにくく、ロシアの訓練を受けた軍隊の投入で、情勢が二転三転している。

2010年代に中東・北アフリカで発生したアラブの春、ロシア各地の反政府抗議活動、一連のカラー革命は、西側諸国の支援があった。ロシア、特にプーチンはこれを米国による、情報を用いた非線形戦争、アメリカの陰謀と信じている。

ロシアは情報安全保障を定めており、そこでは言論の中身を問題にする。西側ではインターネットの適正利用である。

ロシアの抑止概念は、相手にダメージを与えて怯ませることを含む。米国大統領選のロシアゲート問題も根は同じ。この抑止の効果が出るのは抑止される側に攻撃意識があるとき。認識していないときは相手による攻撃と映り、悪循環となる。

2015年シリアへの軍事介入

アサド政権は風前の灯というところに、ロシアが介入。アサド政権は2016年には国土の大部分を回復した。ロシア軍の限定行動戦略(空軍力・偵察力のみを提供)が効いた。また、精鋭の特殊作戦部隊、民間軍事会社ワグネルも投入。