『大陸と海洋の起源』(アルフレッド・ウェゲナー著、講談社ブルーバックス、2020年4月20日発行)

ウェゲナーの大陸移動説最終版(1929年)の翻訳である。ウェゲナーは大陸移動説を1910年頃に着想、1912年1月6日の地質学会の席で初めて発表した。1915年本書初版を発行、1929年に第4版を発行した。

当時は地球収縮説、海洋底永久不変説(米国の地質学者間で流行)、大陸間の陸橋説などが主流であったところに、大陸が動くという考えを導入した。本書は全体としては、さまざまな調査結果・データから大陸が動いたと考えるのが一番自然だという理論の組み立てになっている。

・北アメリカはヨーロッパの傍らにあり、ニューファンドランドアイルランドから北はグリーンランドと共に一つのブロックを作っていたが第三紀(2,300万年前)の終わりから分裂し、北方は第四紀(260万年前)に分裂した。

ジュラ紀のはじめ迄南極・オーストラリア・インドは南アフリカの傍らに存在し、南アメリカとで超大陸を作っていた(パンゲア)。ジュラ紀(2.1億年前)、白亜紀(1.5億年前)、第三紀にブロックが分裂した。

大陸移動説の図示:上部石炭紀石炭紀後期、3億年前)は超大陸と北米欧州大陸とシベリア大陸が図示される。始新世(3390~5600万年前)、下部第四紀(260万年前)の図が出ている。

調査結果は、測地学、地球物理学、地質学、古生物学、古気候学の面からの議論が載っている。

現在得られる地球の過去の記憶は、第8章では大陸移動と極の移動が組み合わさった影響として残っているので、これを切り離してみることが必要だという。大陸移動は大陸間の相対的な移動である。極移動は緯度システムに相対的な回転である。極移動は気候に係る化石を証拠として用いる。この章は難しい。

ウェゲナーの大陸移動説は、ウェゲナー生存時は受け入れられなかったようだ。これは、海底火山帯などの様子を観測した結果がなく、また、大陸が動く原動力がなにかまでは理論が及んでいない。これは、技術力、特に地球を計測する力が足りなかったという時代背景がある。

現在、大陸移動説はプレートテクトニクスとして確立しており、全体としての枠組みに反対する専門家はいないだろう。この科学的定説の逆転を学ぶと、新しいことを受け入れることに謙虚でないと危ないとつくづく思う。

解説によると、大陸は数億年単位で集合・離合を繰り返している。19億年前のヌーナ超大陸、10億年前のロディニア、5.5億年前のゴンドワナ、3億年前のパンゲア。現在はパンゲア以降の時代。