『北極がなくなる日』(ピーター・ワダムズ著、原書房、2017年11月27日発行)

「北極がなくなる」というタイトルは正しくなく、北極の氷がなくなる日が正しいだろう。

1950年代と1960年代に南極とグリーンランドの氷床コアの採掘がはじまって、解析技術が進歩した。ここ40万年ほど気温と二酸化炭素・メタンガスの濃度を推定すると、氷期間氷期のサイクルが4回ある。1000~2000年で気温が10度近く上昇して間氷期になり、それから気温が小刻みに下がって氷期になるというパターンの繰り返しだった。現在は間氷期1万2千年前に最終氷期から脱出した。

気温と二酸化炭素・メタンガスの濃度のパターンが一致する。このメカニズムは不明。

1000年から産業革命まで地球の平均気温は低下しつつあったが、ここ100年位急激に温暖化している。これを示す曲線がマン・ブラッドリーのホッケースティック曲線

地球が吸収するエネルギーと放出するエネルギーの均衡を表す方程式では、均衡温度はマイナス18度であり、大気がなければ氷ついた世界となる。ちなみに月の平均気温はマイナス18度である。地球の大気が温室効果をもつため平均気温が高い。地球がエネルギーを放射する周波数の中で、温室効果ガスにエネルギーを吸収する帯域がある。二酸化炭素、メタンが影響力が大きい。100年単位で考えるとメタンガスは二酸化炭素の23倍気候変動に影響がある。

1970年頃から北極の海氷の面積が減少しはじめた。また厚さも減っている。1970年代から1990年代にかけて43%薄くなっていた。北極海の海氷量は2月に最大となり、9月に最小となる。

海氷がなくなると北極海が航海可能となる。石油探査も盛んになるだろう。しかし、北極海で石油が流出すると氷とともに拡散するため、流出石油を回収できず、被害が大きくなる。

北極が温暖になって影響を受けるのは北極海の浅瀬の沖合にある永久凍土である。永久凍土にはメタンハイドレートの形でメタンガスが埋蔵されている。水深が深いとメタンガスは海水に溶けるが、水深50~100メートルだと融けないでメタンガスのまま大気中に放出される。

二酸化炭素の排出を削減するだけでは足りない。除去する技術開発が必要である。また、エネルギー転換では原子力発電が重要だ。