『イギリス1960年代 ビートルズからサッチャーへ』(小関 隆著、中公新書、2021年5月25日発行)

1960年代が1980年代のサッチャーが登場する機会を作りだしたというのが本書の仮説であり、本書はそのようなストーリーに沿って書かれている。

1960年代の「文化革命」とりわけスウィンギング・ロンドンの描写が楽しい。戦後しばらくして豊かな社会となり労働者階級の若者が消費の主人公となった。

第2章ビートルズの革命は簡潔なビートルズ史だが、苦労して書いているのが分かる。

豊かな社会とニューレフト、労働党の修正主義、許容する社会などの章も読んでいて楽しいが、一番は「モラリズムの逆襲」に登場するメアリ・ホワイトハウスである。残念ながら日本にはこういうおばさんはいないのではないか。

本書によれば、許容する社会がサッチャー登場の種となったのだが、サッチャーはモラルの回復よりも経済を優先した。そして。サッチャリズムはイギリス経済を復活させようとして、規制緩和、民営化などを推し進めた。しかし、その結果、不平等の拡大、富裕層と貧困層の分断を招いたとする。

なかなか意欲的な本だと思う。