『ディープシンキング 人工知能の思考を読む』(ガルリ・カスパロフ著、日経BP社、2017年11月28日発行)

IBMのチェス専用機ディープ・ブルーとの対戦についての経過が中心だが、コンピュータチェスの歴史やチェスのマスターたちとの対戦についての豊富な話題がある。

著者はディープブルーと2回戦う。

マスター:2200

インターンナショナルマスター:2400前後

グランドマスター:2500以上

エリート:2700 世界中で40人ほど

歴代最高:2882(マグヌスカールセン)

著者:2851(1999年)

1996年2月10日フィラデルフィアディープ・ブルーと全6局の対戦。ACM主催、国際コンピュータチェス協会が統括。賞金50万ドル。第一局で著者が負ける。しかし、第2戦で勝ち、4対2のスコアで世界チャンピオンの勝利。しかし、IBMの株式時価総額が1週間で33億1000万ドルまで値上がりする。

1997年5月11日再戦。IBMがなりふり構わずに勝ちを取りに来る。

第1局は著者の勝ち。第2局は黒番で投了負け。しかし、実は引き分けの局面をミスで投了だったと指摘され、その後、精神的に動揺した。第3局、4局は引き分け。5局も引き分けで、6局が短時間で敗北。世界チャンピオンが通常の形式によるチェスでコンピュータに負けた最初の例となる。

コンピュータが徐々に強くなり、人間が負けるのは時間の問題だったが。1997年の戦いは人間側の自滅に近かったようだ。

少なくとも、ディープ・ブルーについていえば、とても人工知能といえるものではなく、まず、序盤戦についていえばオープニング・ブックというデータベースを使い、中盤では力業の探索を行うもので、単なる計算機械である。