『アフター・アベノミクス 異形の経済政策はいかに変質したのか』(軽部 謙介著、岩波新書、2022年12月20日)

第二次安倍政権は2012年から2020年まで。この間のアベノミクスについて、同じ著者による三部作の最後。アベノミクスは大規模金融緩和により、円安、株価上昇、GDP成長がプラス化などの経済復調をもたらした。しかし物価上昇は2%に届かず。2%の達成目標について安倍は関心を失ってしまったように見えた。

2015年2月の決定会合で、政府は「できるだけ早期に2%達成」の「できるだけ早期に」を削除。2018年4月副総裁退任の挨拶に官邸を訪問した中曽に対して、「物価はもういいですよ」と発言。政治側は「2年で達成」という目標時期を落とす。

この間、アベノミクスは金融政策から財政政策へシフトした。安倍は「デフレは貨幣的現象なので日銀が対応すべき」というリフレ派に乗った主張から「中盤くらいから財政政策が必要だと思うようになった」と発言(2021年12月7日)。

消費税によって逆噴射になったとリフレ派は不満を持つ。

財政出動を求める声が増えた。本書は主に、自民党の中の財政再建派と積極財政派の意見対立の話が多い。財政をめぐり二分化した自民党だが、アベノミクスの中で、自民党は積極財政派の声が大きくなってきたようだ。