『連星から見た宇宙』(鳴沢 真也著、講談社ブルーバックス、2020年12月20日発行)

宇宙の恒星の半分は連星。兵庫県立大学西はりま天文台「なゆた」望遠鏡。

全天で太陽以外に最も明るい星である「シリウス」(おおいぬ座)は、20天文単位離れた星の連星。天文単位とは太陽と地球の距離を1とする。

北極星ポラリス」(こぐま座)は3重連星。ハッブル望遠鏡が2006年に3つの星を直接撮影した。

「リゲル」(オリオン座)は4重連星。現時点で分かっている最多連星は7重連星。

重連星は2つの星だけが近くにある階層構造である。

分子雲⇒分子雲コア⇒原始星⇒前主系列星主系列星の経過で星が生まれる。分子雲コアの段階で連星になっているようだ。分子雲コアが二つに分裂するか、原始惑星系円盤が二つになる。

実視連星は観測できる連星。食連星は公転で二つの星が重なることがあり、光の明るさが変化する。グドリックはアルゴルを観測して食連星を発見した。公転周期が短いものが発見されやすい。分光連星はドップラー効果による光の波長のズレを観測して発見できる。アルゴルは分光連星でもある。

連星では質量を知る方法がある。ケプラーの第3法則:連星の2つの星の質量の合計は、両星間の距離の3乗に比例し、公転周期の2条に反比例する。また、連星の各星と公転重心までの距離の比率は質量比に反比例する。実視連星の公転周期は長いので観測に時間が掛かるが公転速度を、ドップラー効果で測定する。但し速度は視線速度なので軌道傾斜を知る必要がある。食連星は軌道傾斜角が分かる。

主系列星では質量と光度は比例関係にある。質量の大きい星ほど明るい。

質量から寿命が分かる。

白色矮星は、太陽質量の8倍以下の星の最後の姿。主系列星が進化すると赤色巨星になる。そのコアが白色矮星。新星は、白色矮星ともう一つの星が近接連星のとき起きる。近接連星には大きさの制限がある。もう一つの星が赤色巨星になるとき、大きさの制限により質量移転が起きる。移転したガスが、白色矮星の表面で核融合して爆発する。

一角獣座V838は巨大に赤くなる爆発。原因は諸説あるが、連星の衝突の説が有力。

X線星。さそり座X-1は1966年にX線星であることが分かり、さらに1975年に連星であることが分かった。中性子星と赤色準巨星の連星。重い星は赤色超巨星になり、最後はコアが中性子星になる。このとき超新星爆発が起きる。

ブラックホール白鳥座X-1はブラックホールと青色超巨星の連星。連星からブラックホールへの質量移転の星風による降着円盤からX線が出る。

Ⅰa型超新星を標準光源として使う(減光率で補正)と距離が分かる。この結果、宇宙の膨張は加速していることが分かった。ダークエネルギーがある。ダークエネルギーの正体は今も不明。

連星で分かる重力波。1975年に中性子連星の公転周期の変化から重力波を予想。直接検出は2015年9月15日LIGOによる。ブラックホール連星の衝突で発生。2017年8月17日には、中性子星同士の衝突で発生した重力波を検出。キロノバのショートガンマ線バーストを観測した。

系外惑星は、太陽系ではない惑星。連星の周りをまわる惑星も発見されている。