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19世紀から20世紀初頭金本位制の時代には、通貨供給量が制限されていたので物価水準は安定していた。管理通貨性になって物価の安定は中央銀行に依存するようになった。金本位制では経済危機に硬直的。(p.29)
1960年代ランダムウォーク理論の信奉が強化された。最近は保有期間が長くなるとランダムウオーク仮説よりも標準偏差が小さくなることが分かっている。(pp.48-49)
株は短期投資ではリスクが大きいが実質リターンも大きくなる。1年の投資でリスクを小さくするなら株の割合は13%。10年なら39%だ。(p.56)
企業は次第に利益から配当を払う割合を減らし、その分を自社株買いや設備投資にまわすようになっている。このため近年では株式投資のリターンの大部分はキャピタルゲインによって得られるようになっている。(p.85)
SP500でみるとエネルギーの構成は消えつつあるが、それほどリターンは悪くない。個別企業の価値が減っているわけではなく数が減ってるためだ。長期投資家にとっては成長よりもバリュエーション(つまり利益水準に対して割安に株を買うこと)が大事である。(p.101)
勝者はやがて魅力を失い、市場のパーフォーマンスを下回る。(p.109)
自社株買いが増えているのは税制上課税されないことと、経営陣と従業員のストックオプションに有利なため。自社株買いは理論的には現在の株価を変化させない。(p.112)1980年代前半自社株買いの規制緩和以降は自社株買いが重視されている。配当利回り+自社株買い利回りは安定している。(図10-2)
ゴードン配当成長モデル:株価は将来の配当の現在価値の合計(pp.116-117)
P=d/(1+r)+d(1+g)/(1+r)^2+d(1+g)^2/(1+r)^3+・・・
P=d/(r-g)
株価:P、一株当たり配当:d、割引率:r、配当の成長期待率:g
利益には唯一正しいものはない。(p.118)
GAAP利益はFASB(財務会計基準審議会)が認定するもので、年次報告に用いる。時価会計。GAAP利益は近年厳しくなっており、景気後退期には利益を大幅に減少させる。
営業利益の計算は企業に自由度があり曖昧。S&Pの営業利益はGAAP利益から資産の減損と割増退職金のみを除外する。通常営業利益が投資家に注目される。(p.123)
non-GAAPはさらに多くの費用項目を除外する。
投資家が重視するのは利益・売上高・売上高利益率。
実質金利の低下は、人口増加率減少、労働力人口比率低下、労働生産性の伸びの鈍化などで経済成長が低下しているため。
債券と株価の相関関係は時代によって変わる。1960年代~1970年代米国債はヘッジ特性無し、1980年代~1990年代は相関が高くなったため債券金利が上がった。21世紀初頭から金融危機などのため米国国債のヘッジ資産価値が高く=ネガティブベータ資産となっている。(p.134)
マネーサプライとインフレは相関が大きい。1970年代はOPECの減産の影響を相殺しようとして中央銀行がマネーサプライを増やしたため米国13%、英国24%を超える水準のインフレが起きた。(p.141)
株は長期的にはインフレ率と同じペースで上昇するが、短期的には有効だという証拠はない。様々な経済的要因があるため株価はインフレに追随しない。税制上もペナルティがある。キャピタルゲイン税にはインフレの調整はない。
*図9-3は理解できない。保有期間に関わらず税率は一定ではないだろうか?
1958年に、史上初めて配当利回り<長期国債利回りとなり、2007~2008年まで続いた。しかし、株式の実質リターンは債券を上回っていた。(p.150)
株式バリュエーションの基本はPER。景気後退期はGAAP PERは大きくなる。景気後退期の集計PERは指数全体のPERは市場より過大になる。株式益回りはPERの逆数。150年間PERの中央値はGAAP PERが14.9、営業利益PERは14.8。同益回りは6.7%で株式の長期的実質リターンより僅かに小さいが、相関が大きい。(p.154)
IBMとスタンダード石油を1950年に1万ドル買って、配当を再投資すると2010年にIBMは1500万ドル、スタンダード石油は3300万ドルとなる。成長率はIBMがずっと高いが、IBMの株が高く、PERも大きく、配当利回りが低いので再投資の効果が出なかった。(pp. 169-171)
国についても同じで、株式の実質リターンとGDP成長率はマイナス相関がある。低成長国は過小評価される。(p.173)
投資家にとって最高の出来事は偉大な企業が一時的なトラブルに見舞われたとき。手術台にいるときに買いたい。(p.175)
2007年から2021年はバリュー投資はグロース投資に大幅に遅れを取った。(p.181) 1951年から2021年全体では低PER株のリターンが高PER株を上回る。しかし、2007年から2021年では逆になった。(p.182) 自社株買いは配当利回りよりもリターンが高い。(p.185)ダウの負け犬戦略は2006年頃まで良かった。近年は良くない。PBR戦略も同じ。簿価には知的財産権を含まないのが問題。(p.188)
2006年以降のバリュー株の下落理由の第1は市場の裁定である。(p.190)その他は、低金利のためヂュレーションの長いグロース株が有利となる、テクノロジー株のバリュエーション増、環境規制(石油の退潮)、など。
時価総額ファクター:1926-1980年にかけて時価総額が小さな株の方がリターンが大きい(p.212)。但し、一貫性がない。1975-1983年が異常でそれを除くと差がない。また1月効果もあった。議論は今も続く。近年は大型株はグロース有利、小型株はバリュー優位である。
資本投資を行う会社、新株を発行する会社のリターンは低い。(p.221)
流動性にはプレミアムが払われる。反対に流動性を重視しない投資家は、低流動性株に傾けろ。流動性が低い銘柄のリターンは高い銘柄のリターンを上回る。(p.224)
200日線を1%下回ったら売り、1%上回ったら買うというタイミング戦略をとると過去135日間のすべての弱気相場の最悪の時期を回避できる。ただし、トレンドがないときは往復びんたを受ける。(p.253)
季節のアノマリーとして1月の小型株効果が有名。1月に小型株を残り11カ月は大型株を保有するとS&P500バイアンドホールド戦略を4ポイント上回った。但し、1995年以降は消えた。(p.257)12月に節税目的で売られる。売りが終わった後1月には反転する。
9月は最悪、4月は良好。11月12月は良好。(pp.261-262)。
本書の分析は主に米国市場を対象にしている点が物足りない。あと、株は市場全体から構成されたインデックスを分析対象にしており、銘柄選択を考慮していない点も不満だ。もっとも銘柄選択を行うアクティブファンドはインデックスファンドに勝てないと主張するなら銘柄選択の重要度は落ちるわけだが。