『アメリカ 危機の省察』(本田浩邦著、大月書店、2025年4月20日発行)

MAGAファシズム権威主義ナショナリズムと呼ぶ。行政権限を最大限に拡張し、それを土台にアメリカの社会体制、国際機関のリベラルな諸要素を根こそぎにする思想と運動。啓蒙的リベラリズムへの総攻撃。

2024年7月1日連邦最高裁が大統領の「公的行為」について刑事責任が免責されるという判断を示し、「皇帝大統領」の誕生を招く可能性が生まれる。

保守派は建国の精神が1960年代の公民権法体制に押しつぶされたと理解している。公民権法は人種平等への動きなしに社会の安定化がなかったためにできたのだが、保守派はそれを認めず人種問題を度外視している。

1950年から1970年代先進国はおしなべて高度成長した。しかし、1960年代をピークにどこも成長率が低下している。近年(2020年~2023年)の実質経済成長率は高い米国でも2%程度である。長期停滞の時期に入っている。

雇用救済と直接救済を比較すると、雇用救済の方がコストがかかる。資本や原材料が必要になるからである。雇用救済では機械化率も下げなければならない。雇用創出は割高になる。

グローバリゼーションのメネシス:失業問題は分かりやすい。グローバリゼーション(市場開放と資本の自由化)を仕掛けたのは米国自身だが、中国の成長を呼び、先進国の労働者がダメージを受けた。民主党共和党もグローバリゼーションを推し進めたが、その負の側面の対策がなかった。1933年ケインズの「国内需給」論文が参考になる。

アメリカの対外政策と移民の流入には、対外介入の結果移民が増えたという関係がある。ホンジュラスアメリカへの不法移民が多いが、その原因はほとんど米国の介入にある。ラテンアメリカに麻薬取引や移民流出が蔓延しているのは米国の不安定化政策に原因がある。