『謎の海洋王国ディルムン メソポタミア文明を支えた交易国家の勃興と崩壊』(安倍 雅史著、中公選書、2022年1月10日発行)

バハレーンの、紀元前5000年から前1700年にわたる古代史の研究成果をまとめた本。ディルムンと呼ばれた時代があった。南メソポタミアとインダスを結ぶ交易の中継点として栄えた。

歴史的には真珠の産地として知られるが、1920年代、30年代に日本の御木本幸吉による真珠の養殖成功のために真珠の値崩れが起きて経済破綻した。1932年ペルシャ湾岸で最初の油田発見。現在は、アルミニウム精錬、金融業、観光業に力を入れている。

紀元前2300年ごろアッカドサルゴンウルクのルガルザゲンを倒して南メソポタミアを統一してアッカド帝国を興す。この時期、西アジアの内陸砂漠北部に暮らしていた遊牧民がバハレーンに移り住んだ。前1700年ごろのディルムンの最後の王墓から王の名を刻んだ石製容器が出土。王の名はヤグリ・イルというアモリ系の名前で移住説が裏付けられた。アッカド帝国は5代目の王の時代に崩壊。

前2110年ウル第三王朝が誕生。ペルシャ湾交易が繁栄したが、ディルムンは貿易船の寄港地にとどまる。前2003年にウル第三王朝は滅亡。

この滅亡期は、南メソポタミアの都市群雄割拠時代=イシン・ラルサ時代と呼ばれる。この時期にディルムンが海上交易に乗り出し、ディルムン文明期の幕開けとなる。

前1761年バビロンのハンムラビがメソポタミア統一。ディルムンは衰退する。前1700年頃にディルムン文明は崩壊する。