『ドナルド・キーン著作集 第11巻 日本人の西洋発見』(ドナルド・キーン著、新潮社、2014年12月25日発行)

本田利明という人をフィーチャしているかのような構成に見えるが、そうでもなく、出島のオランダ人商人の話、蘭学の話、ロシア人の話、最上徳内や間宮林蔵といった北方探検者、平田篤胤と洋学など雑多で焦点が良くわからない。

 

『「アメリカの戦争」と世界危機』(三牧 聖子編、岩波新書、2026年6月19日発行)

大勢の論者が短文を寄稿しているが、内容的に硬いものが多い。

あまり面白くない。

第11章 逆流する「対テロ戦争」―指導者殺害作戦について(西平等)では、国連PKOの失敗例が載っていて興味深い。

第12章 軍拡はAIからはじまる(内田聖子)は、イラン攻撃で使用されたAIシステム「メイブン・スマートシステム」について簡単に紹介している。人間が何日もかかっていたプロセスを数秒で終えることができる。21世紀において我々がもつ本当の優位とは、意思決定の優位です。(キャメロン・スタンリー(パランティア))

『南極の氷から探る地球大変動』(菅沼 悠介著、講談社ブルーバックス、2026年7月20日発行)

近年の南極氷床の研究成果が中心だが、やや専門的過ぎて面白くない。

ミランコビッチ・サイクル:地球の軌道の離心率、自転軸の傾き、歳差で日射量が変化する。このリズムのこと。過去80万年の間10万年単位で氷期と間氷期を繰り返してきた。これは理論計算だが、シャックルトンは深海堆積物の質量分析で実証データを示した。1976年海底堆積物の記録がミランコビッチサイクルの周期と対応することを示した。

アイスコアでも過去の大気の組成を知ることができる。1957年~1958年の国際地球観測年以降本格化してきた。ボストーク基地(標高3488m)では3000mまで掘削。約42年前まで。欧州主導のEPICA計画、日本のドーム富士で掘削。過去80万年前まで遡る。

過去80万年大気の中のCO2濃度は、300ppmを超えることはなかった(p.133)。

2026年現在は430ppmを超える水準にある。

海底堆積物からは、10万年周期現れるようになったのは80万年ほど前から。それ以前は4万年周期。260万年以前は明確な氷期は存在しなかった。

460万年前~300万年前は現在よりも温暖な鮮新世。この頃はCO2濃度は300~400ppm。

 

 

 

『円ドル戦争40年秘史 なぜ円は最弱通貨になったのか』(河波 武史著、日経BP、2025年10月24日発行)

プラザ合意(1985~89年)

1985/9/22(日)G5(日、米、独、英、仏)財務相と中銀総裁集合、ドルの協調切り下げに合意。6週間で10~12%切り下げを目標に設定。

23日から5か国で協調してドル売り介入。

1985/9/20 238円/1ドルから1年後150円台に。目標の10~12%下げは1か月強で達成したが、円高・ドル安の流れが止まらなくなった。レーガノミクスの失敗のつけ。日本のバブル経済の入り口となる。

1987/10/19(月)ブラックマンデー。87末121円。

円とバブル(1990年~94年)

1980年代後半の円高で邦銀の海外進出が進んだ。ボルカーは自己資本比率規制で邦銀の世界進出に足かせを嵌めた。90年代邦銀は巨額の不良債権を抱えるようになった。ソ連に代わって日本が仮想敵国に。クリントンの日本たたき。クリントンの円高政策で超円高となる。バブル経済崩壊後の円高で製造業の国外脱出を招いた。

1990年代前半はほぼ直線的な円高傾向。94年6月100円を突破。

「ミスター円」(1995年~99年)

1995年4月79円75銭の戦後最高値。購買力平価の2倍の円高。クリントン時代の最悪な日米関係。クリントンは中国接近を図る。米政府のドル安放置からの転換はロバート・ルービンが強いドル回帰を打ち出したこと。ローレンス・サマーズー榊原により、1995年7月七夕介入で95円台に。巨額の円売り・ドル買い介入を行う。為替は円安傾向への転換となった。

1994年2月メキシコ通貨危機、1997年5月タイバーツ売りで、アジア通貨危機が始まる。1997年11月は三洋証券から始まる日本の金融危機。

ジャパンプレミアムで邦銀は海外市場から撤退圧力となる。1ドル140円台の円安に。長銀破綻。1998年8月に1ドル147円。

ルービンの強いドルへの転換で、FRBの利上げ。日米の金利差が開き、円キャリートレードが巨大な動きとなっていた。98年ロシア経済危機でヘッジファンド勢が総崩れとなる。キャリー取引のまき直しで、円高に向かう。

98年10月長銀の公的管理、1ドル115円。

ミセス・ワタナベ(2000年~07年)

1999年から07年夏まで、1ドル105円~120円の為替は大いなる安定の時期。小泉~ブッシュ関係が大きい。中国の急成長で日本の役割が低下。デフレ脱却のため円安政策、円売り・ドル買い介入が多かった。

りそなショックで、日経平均は03年4月28日バブル崩壊後の最安値7,607円(当時)をつけた。りそなへの公的資金注入で金融システムが安定化。

世界最低水準の政策金利0.5%でFX投資にミセスワタナベが活発化。キャリー取引で実質実効為替レートは円安に進んだ。

超円高の危機(2008年~12年)

2008年9月15日(米)、16日(日)リーマンの破綻ショックで大いなる安定が転覆した。急激な円高=危機時の超円高になる。三菱UFJのモルガン救済。

FRBの利下げで日米金利差が小さくなり、円キャリー取引の巻き戻しにより、強烈な案高に向かう。米国のゼロ金利で円高が止まらず。韓国・台湾は通貨安で日本産業の負け、製造業の衰退を招いた。

09年1~3月はGDP年率マイナス15.2%下落(速報)、民主党政府がデフレ宣言なのに、日銀は知らず。

2010年10月の円相場は、1995年4月の円高よりは円安だったが、日銀の政策余地がなかった。実質実効為替レートでみる。

2011年3月11日大震災でさらに円高が進む。11年10月31日75円32銭。ここから円安に転換している。

アベノミクス(2013年~20年)

リフレ派が経済のアベを吹き込み、衆院選で安倍が無制限の金融緩和を連呼。

2013年3月21日黒田日銀総裁。4月4日QQE1弾。2年で2%のインフレ率、国債保有量2倍。為替の円安につながった。1年目は合格点。米国の量的緩和縮小と日本の緩和拡大もある。

14年4月消費税率8%へのアップで実質成長率がマイナス7%となり、それ以後も回復鈍く。

14年10月QQE2弾。30兆円、3年、3倍。サプライズ緩和。

16年1月29日マイナス金利を導入。

16年9月YCCを開始。

最弱通貨(2020年~23年)

2020年コロナ。FRBの緊急緩和。しかし、円高は再来せず。財政出動でインフレを招く。

22年2月ロシアのウクライナ侵攻で原油値上がり、米国のインフレ率が8.5%になり、FRBは漸くゼロ金利を解除して、22年初頭の0~0.25が年末には4.25~4.50に達する休息利上げ。この結果、為替は円売り相場で円安1月113円から9月142円に至る。

9月22日98年6月以来の円買い介入。

21年10月岸田首相だったが、安倍ー黒田の金融緩和論に対抗せず。22年7月8日安倍が死亡。黒田の長期金利の引き上げ緩和修正。

黒田時代10年で「安いニッポン」となった。

23年4月植田総裁誕生。7月28日YCCの修正。

日本にはびこる超低金利の甘え。円の最弱通貨転落は、日本経済が金利上昇に耐えうる強さを持たなくなったため。日本の政策金利も2%が適正だが日銀は上げられない。

24年3月19日大規模緩和を解除、金利はマイナス0.1%から0~0.1%へ。

大暴落(2024年)

24年8月5日の株価大暴落は日経平均先物主導。だが、株価大暴落を引き起こしたきっかえは円。ドル円が朝4時の146円半ばから9時には142年に4円上昇。その端緒は金曜日の雇用統計で利下げ観測が浮上、日銀が金利を0.25%に引き上げたばかりで、日米金利差が縮まる予想でヘッジファンドの円買いを仕掛けたため。

トランプ2.0(2025年~)

・名目市場レート

・実質実効為替レート(国際決済銀行(BIS)が算出)

・購買力平価レート(IMFが算出)

 

 

『半導体 先端覇権の興亡』(大鹿 靖明著、講談社、2026年5月26日発行)

前半は日本の電機産業の敗北ぶりに慨嘆し、後半のラピダスの話はあまりの無謀ぶりにビビる。この本を読む限りラピダスは超巨額の赤字を垂れ流しそうだが、持ち堪えられるだろうか?

ラテラスの最大の課題は、顧客の獲得なことは明らか。Appleのスマホ並みの生産台数の多いエレクトロニクス製品メーカからの受注を獲得しないと経営が成り立たないことは誰が見ても分かることだ。そうでないと作れば作るほど赤字が増えていくのではないだろうか。

しかし、そんな顧客を1年、2年で獲得できるものではないだろう。

 

『世界経済大いなる収斂』(リチャード・ボールドウィン著、日本経済新聞出版社、2018年2月16日発行)

グローバリゼーションの歴史

1.人類が地球上に拡散する:紀元前20万~約1万年前

2.グローバル経済がローカル化する:紀元前1万~紀元1820年。食料が人のいるところで生産される。貿易はほとんど行われない。

3.ローカル経済がグローバル化する:1820年~1990年頃。蒸気革命と産業革命がおこり、輸送が発達して貿易が行われるようになる。それぞれの国が一番得意なことを行う。工業化。集積化により南北の経済格差が広がった。

4.工場がグローバル化する:1920年~現在。ICTの発展で北が脱工業化し、南の一部の国が工業化した。グレーコンバージャンス。工業プロセスを多国展開する。プロセスごとの多国移転。

『トランプ大統領の貿易戦争はなぜ失敗するのか』(リチャード・ボールドウィン著、日本経済新聞出版、2025年9月25日発行)

2025年4月2日トランプ大統領は関税措置発表の目的は世界貿易体制ハッキング。その根底には次の「不満ドクトリン」がある。

・貿易政策は、裏切りと報復が渦巻く戦場である。

・同盟国はパートナーではない。ただ乗りをしているだけだ。

・ルールは安定装置ではない。むしろ、裏切り者のグローバリストたちが結託して作り出した足かせである。

・貿易交渉とは、相互利益を目指すものではない。賠償を引き出すためのものである。

これは戦後史の転換点である。トランプ大統領による貿易戦争は、不満を政策として発動したもので、被害者意識を武器に変えて関税という形で解き放ったもの。

米国中間層の苦しみは関税では解決できないが、保護主義を煽る。このため貿易に対する反発が収まらないだろう。

アメリカの中間層ではアメリカンドリームが失われたことに対する怒りがある。

歴史的にはレーガン大統領の時代(1980年代)に、政府の立場を公正の守護者から成長への障害へと変えた。レーガンは所得税の最高税率70%から40%以下に引き下げた。弱者を支援する政府から弱者は自分でどうにかするべきという考えに変わった。

ICTとロボット化で中間層の仕事が機械によってとって変わられた。グローバルバリューチェーン革命によって複雑な製造プロセスの一部がオフショアリングされて仕事が海外に流れた。工場労働者を絞り上げ、ホワイトカラーを後押しした。

アメリカは安い税金、小さな政府をモットーにしているため中間層の苦しみを救う社会的支援策がない。

トランプは1980年代から関税自由化を批判してきた。

関税は中間層の助けにはならないが、プラセボ(偽薬)効果によって、ワシントンで支持され続ける。

2008年までのレーガン、ブッシュ(父)、クリントン、ブッシュ(子)までは貿易を強力に推進。

2009年のオバマ政権は貿易に及び腰となる。

2017年トランプの1期で貿易に攻撃的

バイデン政権は貿易に及び腰

2025年トランプ2時政権は貿易に極度に攻撃的

アメリカの中間層は、看護師、教師、小売店経営者、IT専門家、レストランの従業員などが主で、製造業の労働者は9%以下である。現在の中間層は関税では救えない。

米国で中間層が苦境に陥っているのは、公的医療保険制度、教育費、累進課税などの経済を安定させる政策を行ってこなかったためである。アメリカは公正と保障を市場に委ねている。関税は解決策にならないが、解決策の代わりの象徴としては最適だ。

このため、米国では、保護主義への無限ループが生まれている。

アメリカの製造基盤の一部を再建する必要がある。これは事実だが、関税ではできない。製造業シェアはG7がシェアを落とし、その分のほぼすべてをI6(中国、インド、韓国、インドネシア、タイ、ブラジル)が補った。これは、G7の企業が利益を最大にするために下した判断による。

アメリカには、最先端のチップを製造できる企業は1社もない。造船業も同様に米国で外洋を航行できる船舶を建造できない。医薬品の原料となる前駆体、後発薬が作れない、などなど。産業政策なしに成り行き任せにした帰結である。

製造業の雇用を奪ったのは中国ではなく、自動化である。アメリカの製造業の雇用喪失のうち、中国との関係で説明できるのは1/5~1/3程度であり、残りは生産性の向上による。

米国の産業政策は、CHIPS・科学法、インフレ削減法などで戦略を打ち出している(前政権)。しかし、優先順位をつける必要がある。

『世界経済大いなる収斂』(リチャード・ボールドウィン)