2020-01-01から1年間の記事一覧

『「第二の不可能」を追え! 理論物理学者、ありえない物質を求めてカムチャッカへ』(ポール・J・スタインハート著、みすず書房、2020年9月1日発行)

200年もの間、多くの人に常識としていた信じられてきた結晶学の原理をやぶる準結晶の理論を発見する。ついで実物の探索、そしてそれがどこでできるか探索するというという果てしない知的冒険の物語である。 正20面体はどの頂点から見ても正五角形が見える。…

『「バカ」の研究』(ジャン=フランソワ・マルミオン編、亜紀書房、2020年7月15日発行)

「バカ」とはなにかを真面目に論じている。 バカと愚かは違うらしい。 フランス人でないとこういう本は作れないような気がする。

『アメリカ経済 成長の終焉 上』(ロバート・ゴードン著、日経BP社、2018年7月24日発行)

1870年から1970年までを「特別の世紀」と名付ける。この間は、電気、交通手段、食料保存、水道、医療、労働環境、住宅などすべての面で生活を変えた。この間の米国の経済成長は、特別なものであり、一度きりであることを主張する。1970年以降の変化は、娯楽…

『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』(J.D.ヴァンス著、光文社、2013年3月20日発行)

連邦政府の住宅政策は家を持つことを国民に進めてきたが、家を持つコストは大きい。ある地域で働き口がなくなると、家の資産価値が下がって、その地域に閉じ込められてしまう。ミドルタウンはアームコによってできた。 ブルーカラーの仕事は良くないと思って…

『政治の起源 人類以前からフランス革命まで 上』(フランシス・フクヤマ著、講談社、2013年11月5日発行)

国家がどのようにして生まれたかを探求する。ヒトとチンパンジーのゲノムは99%重なっている。自然状態ではチンパンジーの凶暴性は、ニューギニア高地の人間の男による襲撃行為と似ている。人間の方がチンパンジーより残虐である。人間は言葉をもつことで社会…

『絶望を希望に変える経済学』(アビジット・V・バナジー&エステル・デュフロ著、日本経済新聞出版、2020年4月17日発行)

移民問題が一番大きな問題。移民への反対は事実を教えても変わらない。人々が考える移民の経済学は次の通り:「世界が貧しい人であふれている。貧しい人は豊かな国を目指す。そして豊かな国の賃金を押し下げて、そこの住民の生活を苦しくする。」 しかし、こ…

『セイビング・ザ・サン リップルウッドと新生銀行の誕生』(ジリアン・テッド著、日本経済新聞社、2004年4月23日発行)

1998年破綻処理・国有化された日本長期信用銀行(長銀)の誕生から破綻処理により国有化、そして国有化からリップルウッドに買われて新生銀行として再上場するまでの物語である。 長銀は、1952年池田勇人内閣の長期信用銀行法にもとずく金融計画に沿って設立…

『ヨーロッパ世界の誕生 ーマホメットとシャルルマーニュー』(アンリ・ピレンヌ著、創文社、1960年8月31日発行)

1935年に初稿が脱稿されたベルギーのアンリ・ピレンヌの遺作、息子さんと高弟によって完成され1937年に発行された。 第一章はイスラム侵入以前の西ヨーロッパ。ローマ帝国は地中海的性格を持っていた。4世紀にコンスタンティノープルが新しく首都となる(330…

『日英海戦への道 イギリスのシンガポール戦略と日本の南進策の真実』(山本 丈史著、中公叢書、2016年11月10日発行)

シンガポールを軸にして、イギリスの戦略、日本のマレー上陸・戦争開始直前までの作戦立案過程を分析している。大東亜戦争について米国との戦争ではなくイギリスとの戦争という新しい視点に基づいている。また、日本については陸軍と海軍の作戦の違いを際立…

『イギリス海上覇権の盛衰 シーパワーの形成と発展 下』(ポール・ケネディ著、中央公論新社、2020年8月10日発行)

下巻は、第7章から実質は第12章まで。終章があるが簡単なまとめ。 マッキンダー1904年「歴史の地理的転換」でコロンブス以来の征服の時代が終わり、社会の力の激発のすべては閉じられた環境で起きる。ロシア中央部(中央アジア)が再び世界の中軸地帯となる…

『イギリス海上覇権の盛衰 シーパワーの形成と発展 上』(ポール・ケネディ著、中央公論新社、2020年8月20日発行)

本書は今から45年ほどまえの1976年に最初に出版された。マハンの『海上権力史論』に基づきながら、批判的にイギリスのシーパワーの変遷を解説する本である。ようやく日本語版の登場ということになる。2017年の新版への前書きで21世紀の初頭の動向が追加され…

『金融工学の悪魔』(吉本 佳生著、日本評論社、1999年9月15日発行)

本書は、表題とは違って、金融工学を簡単な算数レベルで教えようというまじめな本である。内容は役に立つ実用的な考え方が盛り込まれている。 ポートフォリオ理論は、リスク資産を一つに集中させないで複数の資産をもつことでリスクを小さくする。資産を収益…

『パンデミックが露わにした「国のかたち」』(熊谷 徹著、NHK出版新書、2020年8月10日発行)

新型コロナウィルス(COVID-19)に襲われた欧州、主にイタリアとドイツの対応状況をまとめた本である。著者がドイツに住んでいるということで、ドイツの事情が比較的詳しくまとめられている。 イタリアで爆発的に広がった原因は、2月19日にミラノで行われた…

『確率・統計でわかる「金融リスク」のからくり  「想定外の損失」をどう避けるか』(吉本 佳生著、講談社ブルーバックス、2012年8月20日発行)

本書はボラティリティを中心にした運用リスク評価尾をシミュレーションを通じて理解してもらおうというものである。金融商品のボラティリティとは、変化率の標準偏差のことである。ボラティリティが大きい金融商品はリスクが大きいという。本書の金融商品と…

『東京裏返し 社会学的街歩きガイド』(吉見俊哉著、集英社新書、2020年8月22日発行)

東京は、江戸幕府、明治政府、占領軍に3回占領されたが、街中に本書では昔から連綿と連なる歴史的な遺産を軸に東京北部を作り直そうという構想の元、7日間にわたって街を歩いてレポートする。 第一日は都電荒川線に乗って、鬼子母神から飛鳥山までを歩く。 …

『民主主義を救え!』(ヤシャ・モンク著、岩波書店、2019年8月28日)

ソ連の崩壊後、世界の支配的なシステムはリベラル・デモクラシーとなった。しかし、21世紀大西洋の両側でポピュリズムが勢力を増している。 デモクラシーが安定していた条件は次の三つがある。 ・多くの市民は生活水準の向上を経験していた。 ・特定の人種、…

『AI vs. 教科書が読めない子供たち』(新井紀子著、東洋経済新報社、2018年2月15日発行)

AI

『AI vs教科書が読めない子供たち』を千代田図書館で予約したらなんと55番目。順調だと順番が来るのが2年先になりそう。ということで、自分で購入した。 本書では前半は、東ロボプロジェクトの経験に基づくAIでできること、できないことについて述べている。…

『AIに負けない子供を育てる』(新井紀子著、東洋経済新報社、2019年9月19日発行)

AI

図書館から借りる。待ち行列に入ったのが半年位前で忘れたころに順番が来たのだった。読み始めたがなかなか面白い。 リーディングスキルテストの体験版は面白い。 結構自身があったのだけど、28問中正解21問(75%)。70点満点で56点(80%)だった。つまり容易…

『ガリア戦記』(高橋 宏幸訳、岩波書店、2015年2月)

ガリア戦記、昔から一度読んでみたいと思っていたが、漸く念願かなう(というほどのことでもないが)。 カエサル自身が書いたのは、紀元前58年から同52年までの7年間で、1年ごとに1巻となっており、紀元前52年が第7巻となる。第8巻はヒルティウスが著したも…

『破壊の経済 上』(アダム・トゥーズ著、みずず書房、2019年8月8日発行)

ナチスドイツを経済運営面から検討したナチの経済史である。ヒトラー政権を経済面から検討した研究は少ないとのこと。上巻はナチスが政権をとってから第2次大戦(西部フランス)開始直前までについて。 1945年までのイギリスは世界帝国であった。1939年のイ…

『暴落 金融危機は世界をどう変えたのか 下』(アダム・トゥ―ス著、みずず書房、2020年3月16日発行)

金融危機は米国では一旦鎮静化した。その影響で国家財政が落ち込んで2010年には緊縮財政に向かった。 ギリシャ、アイルランド、ポルトガルでは危機が国家財政に破滅的影響を与え、持続不可能な状況に陥る。ギリシャはもともと政府債務が大きすぎた。ユーロ圏…

『貧乏国ニッポン ますます転落する国でどう生きるか』(加谷 珪一著、幻冬舎新書、2020年5月30日)

2018年ワシントンDCの世帯年収中央値は10万2千ドル、ニューヨークは7万8千ドル、シアトルは8万7千ドル、ロスアンゼルスは7万3千ドル。日本では平均値約550万円、中央値は423万円。日本と米国では2倍程度の開きがある。 大卒初任給は米国500~600万円。日本…

『暴落 金融危機は世界をどう変えたのか 上』(アダム・トゥ―ス著、みずず書房、2020年3月16日発行)

米国の大統領が変わるごとに財政赤字に関する方針が変わる。クリントン時代にルービンが財政黒字にした後、ブッシュ時代に財政が大赤字に転ずる。中国はドル固定相場で元を安めに固定して競争力を保っていた。中国の巨額の貿易黒字の大部分は財務省中期証券…

『プログレッシブキャピタリズム』(ジョセフ・E・スティグリッツ著、東洋経済新報社、2020年1月2日発行)

アメリカの資本主義はあまりにも一部の人に富が集中する結果に終わっている。アメリカは、全体として以前より遥かに豊かになっているにも関わらず、富が一部の人に集中してしまった。所得階層の上位1%と残りの99%の間に「大分裂」がある。19世紀末の「きんぴ…

『明智光秀 正統を護った武将』(井尻 千男著、海竜社、2010年6月2日発行)

信長をニヒリストとして位置づける。正親町天皇に退位を迫りつつ、新しい幕府を開こうとしない信長のやっていることを見ると、安土に城を築いたのちは都を移して専制独裁統治を企んでいたということになり、これは保守主義者である光秀らにとっては看過でき…

『ブラックホールとの遭遇』(W・サリバン著、ブルーバックス、1980年11月20日発行)

1844年、一番明るい恒星シリウスの軌道はふらついている。伴星があるのではないか?(ベッセル)19年後伴星が発見された。高密度の予想。1930年チャンドラセカールは恒星はどこまでもつぶれるという論文を出した。 1915-1916年シュヴァルツシルトがアインシ…

『5G 次世代移動通信規格の可能性』(森川博之著、岩波新書、2020年4月17日発行)

2019年4月3日米国のベライゾンと韓国のSKテレコム、KT、LGユープラスが5Gサービス開始。ただし韓国はミッドバンドで4Gの延長。その後、欧州・中国も開始。日本は2020年春から。 クアルコム(スマホ向けチップセットの最大手)が5G規格策定でも中心的な役割…

『感染症 広がり方と防ぎ方』(井上 栄著、中公新書、2020年4月25日増補版発行)

感染症対策には、病原体伝搬経路を知っておく必要がある。居住環境を清潔にすることで伝染病が減ったが、咳でうつる新型ウィルスと性交でうつるエイズウィルスは居住環境を整備しても伝搬を抑えられない。 2003年のSARSは中国広州市から香港へ来た患者がMホ…

テレワークの実情

コロナ後もテレワーク、「オフィス消滅」企業が続々 (1/3) https://twitter.com/sasakitoshinao/status/1264927932604190720 日立 在宅勤務を標準に転換方針 テレワーク利用が進まない業界、3000人調査で判明 育児しながら在宅勤務“仕事に支障”男性6割 女性9…

『感染症は実在しない』(岩田健太郎著、インターナショナル新書、2020年4月28日発行)

「実在する」という言葉の意味合いがあまり明確に理解できなかった。より正確には、共感しなかったというべきか。 たぶん、リンゴが実在するというのは「もの」として目の前にあって、見方によってなくなったりするものではない、ということなのだ。一方、病…