2019-01-01から1年間の記事一覧

『揺れる大欧州』(アンソニー・ギデンス著、岩波書店、2015年10月6日発行)

親ヨーロッパ派、EUの永続を望む。EUの共同行動で世界に影響を及ぼせるという議論。 グローバル化の加速とインターネットの台頭によって、人類全体は、ごく近い過去の時代と社会的、技術的に異なるシステムの中で生きているのではないだろうか。p.15 ユ…

『AIには何ができないか データジャーナリストが現場で考える』(メレディス・ブルサード著、作品社、2019年8月10日発行)

AI

著者はコンピュータ・テクノロジー文化に懐疑的である。明るいテクノロジーの未来がすぐそこまで来ている、というのは思い込みにすぎない。問題点は: ・アイン・ランド的能力主義。 ・男・白人が有利な社会であり、文化的に偏っている。 ・テクノロジー至上…

『鉄のカーテン 東欧の壊滅1944-56下巻』(アン・アプルボーム著、白水社、2019年3月発行)

下巻は、スターリンによる東欧の支配=スターリニズムが浸透していく過程から、最終章の1953年3月6日のスターリンの死を経て6月17日のベルリンでの暴動、1956年10月のハンガリー動乱まで。 1948年には東欧諸国は選挙プロセスを通じて正当性を獲得する試みを…

『アイスランドからの警鐘 国家破綻の現実』(アウスゲイル・ジョウンソン著、新泉社、2012年12月25日)

アイスランドは、1998年から2008年10月まで世界有数の金融帝国を築いたが、リーマンショックでわずか一週間で崩壊した。 本書ではアイスランドの銀行の簡単な歴史を説明したあと、金融帝国となるまで、崩壊の状況を分析している。読んでみると、内容は面白そ…

『ディープインパクト不況 中国バブル崩壊という巨大隕石が世界経済を直撃する』(真壁昭夫著、講談社α新書、2019年11月20日発行)

中国バブル崩壊に備えよ、というのが本書のメッセージである。確かに現在の世界経済において中国の占めるウェイトは大きい。本書では、現在、中国経済は成長の限界にきており、今後、中国経済が大失速すれば、ドイツを始めとするEU、日本経済はかなり大きな…

『危機と人類 下』(ジャレド・ダイアモンド著、日本経済新聞出版社、2019年10月25日発行)

下巻では、ドイツの再建、オーストラリアの変化について述べ、現在進行中の危機として日本、米国について述べる。 ドイツが東西に分割され、そして再統合された近代の歴史は学ぶべきところが多い。東西ドイツで生まれた生活水準と経済力の差は、東ドイツの人…

『危機と人類 上』(ジャレド・ダイアモンド著、日本経済新聞出版社、2019年10月25日発行)

個人的危機に際して、それを突破するための要素を類型化し、国家的危機にも敷衍してみようという野心作である。但し、ちょっとあまりにも大雑把すぎるような気がする。国家の危機のパターンを簡単に類型化できるものなのかどうか疑問を感じるところもある。 …

『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』(能勢 博著、ブルーバックス、2019年10月発行)

インターバル速歩とは、本人がややきついと感じる早歩きと、ゆっくり歩きを3分間ずつ交互に繰り返すというウォーキング方法である。それを1日5セット、週4回以上繰り返すと、5か月間で体力が20%向上する。(「はじめに」より) 具体的にインターバル速歩は次…

『運気を磨く 心を浄化する三つの技法』(田坂 広志著、光文社新書、2019年10月30日発行)

運気という言葉はあまり意識したことがなかったが、要は運が良いか、悪いかとと言ったときの「運」である。運を信じるか、信じないかと正面から問われれば答えに窮するが、自分でも実際によくそう思うことがあるのは、たぶん信じているのだろう。 運を良くす…

『ベトナムの泥沼から』(デービッド・ハルバースタム著、みすず書房、1987年6月10日初版、2019年1月24日新装版発行)

デビッド・ハルバースタムが『ニューヨーク・タイムズ』のサイゴン特派員のときの活動記録である。滞在期間は、1962年9月頃から1963年12月までなので1年と3ヵ月。そう長い期間ではない。 ベトナムは、ゴ・ジン・ジェム大統領を筆頭とするゴ一族が強大な権力…

『専門知は、もういらないのか 無知礼賛と民主主義』(トム・二コルス著、みすず書房、2019年7月10日発行)

アメリカ人は、特に公共政策に関する無知を美徳と考えるところまで来てしまった。(p.2)それはなぜか、どこで起きているのか? を整理するのが本書のテーマである。 第3章アメリカの大学は商業主義によって学生をお客様にしている。その結果、学生が教授を…

『独ソ戦 絶滅戦争の悲惨』(大木 毅著、岩波新書、2019年7月発行)

岩波新書の『独ソ戦』が人気らしいと聞いて買ってきて読んだ。ソ連の崩壊前後から公開され始めた資料の研究が進んで、独ソ戦に関するこれまでの通説がだいぶ変わってきつつあるということは、なんとなく分かった。 スターリン像はあまり変わり映えしないが、…

クアラルンプール小旅行記

昨年はバンコクだったが、今年はクアラルンプールに3泊4日の小旅行をした。たまにアジアで非日常を味わって、リチャージしてマンネリを打破するのだ。 初日 10月31日10時成田発。マレーシア航空のチェックインカウンターは長蛇の列でチェックインに40分ほど…

『現代語版 信長公記』(太田牛一著・中川太古訳、KADOKAWA、2019年9月)

かの有名な信長公記の現代語訳である。大半はすでにいろいろな本で読んで知っていたことだが、いろいろな本に書かれていることがほとんどこの本が原典なのだろうと思う。つまり、本書に書かれていることでいままで知っていたことと違うことがほとんどない。…

『中国はなぜ軍拡を続けるのか』(阿南 友亮著、新潮選書、2017年8月25日発行)

中国がGNPで大国となり軍事費も米国に次いで多くなっている。空母まで備える中国海軍の軍拡は日本を含む周辺諸国への大きな圧力となっている。本書は中国がなぜ軍拡を続けるかを、中国の軍が国軍ではなく共産党の私的軍隊であるという観点から整理している。…

『ウーバーランド アルゴリズムはいかに働き方を変えているか』(アレックス・ローゼンブラッド著、青土社、2019年8月発行)

ライドヘイル:ドライバーを呼んだり、一時的に雇ったりして目的地まで連れて行ってもらうサービスのこと。ライドシェアリングではない。 Uberによれば、ドライバーは労働者ではない。乗客と同様のUberのテクノロジー・サービスの「消費者」である。Uberはド…

『ニッポン景観論』(アレックス・カー著、集英社新書ビジュアル版、2014年9月22日発行)

自然との調和を無視した建造物、まわりとの調和を無視した広告や看板の乱立、過去の遺産を大事にしない立て直し、ただ目立つ建物を作る、人をビックリさせる建築物を良しとする風潮などによって日本の景観がぶち壊しになっているというのは確かに指摘の通り…

『国運の分岐点 中小企業改革で再び輝くか、中国の属国となるか』(デービッド・アトキンソン著、講談社+α新書、2019年9月19日発行)

中小企業の生産性は大企業よりも低い。中小企業で働く人の多い国は国レベルの生産性が低い、というのは横断的国際比較としては、大雑把に見て正しいだろう。米国の生産性が高いのは大企業で働く人の割合が多いからかもしれない。但し、これはある時点で切っ…

『事実はなぜ人の意見を変えられないのか 説得力と影響力の科学』(ターリ・シャーロット著、白揚社、2019年8月30日発行)

本書は人間の脳を研究する心理学者の観点による説得力や影響力に関する知見集である。実践的にも使えそうだ。初めに出てくる「情報を集めることで却って自分の考えを変えないようになる」というのは人は自分に都合のいい情報を集め、都合の悪い情報を無視し…

『はじめてのMarkdown』(清水 美樹著、工学社、2014年5月10日)

軽量マークアップ言語Markdownの書き方の初心者向けハウツー本。 マークダウンによるマークアップがどのようにHTMLに変換されるかを、 本書では「Markdown#Editor」を用いて紹介している。https://hibara.org/software/markdownsharpeditor/ 元祖Markdownの…

『ジェインズヴィルの悲劇 ゼネラルモーターズ倒産と企業城下町の崩壊』(エイミー・ゴールドスタイン著、創元社、2019年6月発行)

ジェインズビルは、ウイスコンシン州ロック郡の郡庁所在地の街で人口は6万人余り。万年筆のパーカー・ペンとGMの組み立て工場があった。GMの工場は1923年から稼働しており、下請け企業を含めて大きな雇用を生み出していた。時給が高く、働く人たちは中産階級…

『鉄のカーテン 東欧の壊滅1944-56 上巻』(アン・アプルボーム著、白水社、2019年3月発行)

第二次大戦の終了で、ソ連(赤軍)の占領地帯となった東欧でどのように全体主義化が進んだかのレポートである。東欧の中で、ドイツ、ポーランド、ハンガリーの3国に焦点を当てている。スターリンは、人間の性格は教育で作り替えることができて、それは遺伝す…

『心理学の7つの大罪』(クリスチェインバーズ、みずず書房、2019年4月発行)

第一の罪 確証バイアス ウェイソンの選択課題。有益でないカードをひっくり返す問題。間違ったカードをひっくり返す被検者が多い。確証をどうやって得るかという問題である。 多くの心理学ジャーナルは論文の追試研究、検証結果を掲載しない。査読付きの一流…

『暴走するネット広告 1兆8000億円市場の落とし穴』(NHK取材班、NHK新書、2019年6月10日発行)

NHKクローズアップ現代+「ネット広告の闇」シリーズの取材結果を本にまとめたものである。さすがにお金を使って取材に動いていることが良く分かる。漫画村のサーバーのホスティング業者がウクライナというので、キエフまで取材にいって、旧ソ連時代の倉庫で…

『NETFLIXコンテンツ帝国の野望 GAFAを越える最強IT企業』(ジーナ・キーティング著、新潮社、2019年6月発行)

NETFLIXの起業からダウンストリーミングによる配信が軌道に乗り始めるまでのディープなストーリーである。本書は、創業のコツやビジネスのアイデアが満ち溢れている。 主にブロックバスターという強力なライバルとの闘いの記録が興味深い。映画の媒体が映画…

『宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃』(加藤 文元著、KADOKAWA、2019年4月発行)

京都大学の望月新一教授が2012年8月30日に発表した宇宙際タイヒミュラー理論(IUT理論)についての一般向けの本である。 IUT理論とそれによるABC予想の解決を主張する。「足し算と掛け算を分離する」という、まったく新しい新奇な思考方式に基づくので簡単に…

『バブル 日本迷走の原点』(水野 健二著、新潮文庫、令和元年5月1日発行、原本は2016年11月刊)

第1章はバブル発生前史。概ね70年代、80年代。 運輸省の海運集約に刃向かった三光汽船。いち早く日本国籍でない船舶に外国人船員中心の運行体制。三光汽船がジャパンラインの株を買い占め。カルテル体制に刃向かう。三光社長の河本敏夫、ジャパンライン社長…

『図解 FinTechが変えるカード決済ビジネス』(本田 元著、中央経済社、2017年2月20日)

FinTech分野のさまざまなキーワードを簡単に解説する。わかりやすくて良い書。 それにしても、カード分野には日本独自の仕様が多くて、グローバル経済に反してガラパゴス化しているのはびっくり。 交通系非接触カード分野で大成功を収めたFeliCaは、NFC-F仕…

『フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち』(マイケル・ルイス著、文藝春秋、2014年10月10日発行)

第1章のスプレッド・ネットワークス社はいかにもアメリカである。シカゴとニュージャージーの間を往復すると、ベライゾン、AT&Tなどの通信会社の線は14.65ミリ秒から17ミリ秒かかる。しかし、理論上は12ミリ秒のはず。スプレッド・ネットワークス社はシカゴ…

『QR決済 日本列島を覆い尽くすキャッシュレスの本命はこれだ』(日経BPムック、2019年1月30日発行)

QR決済についての充実した情報があり、ムック形式の利点を発揮している本である。深圳のQR決済を利用した無人店舗、アリババのEC-実店舗連動とAlipay、TencentのWeChatPayなど、中国企業の取材が多い。FinTechやECでも中国に完敗していたことが良く理解でき…