『危機と人類 上』(ジャレド・ダイアモンド著、日本経済新聞出版社、2019年10月25日発行)

個人的危機に際して、それを突破するための要素を類型化し、国家的危機にも敷衍してみようという野心作である。但し、ちょっとあまりにも大雑把すぎるような気がする。国家の危機のパターンを簡単に類型化できるものなのかどうか疑問を感じるところもある。

上巻では日本の明治維新が危機突破のひとつの例として取り上げられており、その反対の例として昭和の軍人たちの判断ミスが簡単に紹介されている。特に日本のあたりがどのように書かれているか興味をもって読んだが、やはり要約のし過ぎで日本人からみるとつまらないものになっている。

フィンランドの危機、チリの危機、インドネシアの危機などまったく知識をもっていなかった国の危機(とその後の変遷)と現在までの変化が簡単にまとめられている。それぞれ何も知らなかったので、それなりに興味深い点もある。しかし、まとめすぎていて少し浅すぎるような気もする。それぞれを理解しようと思うと、もう少し詳しい記述が欲しくなる。

一言で言ってしまうと、分析の視点としては面白いが歴史の理解としては深さがたりない。下巻には米国について、あるいは現代の日本についてが出てくるので、その現代的な様相をどのようにまとめているか、は興味がある。

ということで、上巻はイントロダクションと言っておくと良いかもしれない。下巻に期待する。