世界史

『ヨーロッパ戦後史 上 1945-1971』(トニー・ジャット著、みすず書房、2008年3月19日発行)

第二次大戦により民族的均質性をもつ国民国家のヨーロッパが生まれた。この過程で強制移住民・難民が発生、最初の措置はアメリカ軍を中心とする連合軍、次第に国連救済復興機関(UNRRA)が責任を持つようになった。UNRRAは1943年に設立。1946年国連難民救済…

『1989ベルリンの壁崩壊後のヨーロッパを巡る闘争(下)』(メアリー・エリス・サロッティ著、慶応義塾大学出版会、2020年2月28日初版第2刷発行)

1990年3月18日東ドイツで、戦後初めて自由投票が行われた。 1990年2月10日~11日モスクワで、ゴルバチェフはドイツ統一はドイツ人が決めるべき問題とコールに承認。 統一ドイツ、特に東ドイツ領域の安全保障問題、NATOか中立かなど、東ドイツ中流ソ連軍の扱…

『1989ベルリンの壁崩壊後のヨーロッパを巡る闘争(上)』(メアリー・エリス・サロッティ著、慶応義塾大学出版会、2020年2月28日初版第2刷発行)

1989年に歴史が終わったかに見えたが、しかし、今になって思えば本書のいうとおり1989年を、東西冷戦後の新しいヨーロッパの歴史の始まりと捉える方が正しいのかもしれない。 本書は1989年11月9日にベルリンの壁が崩壊する日から数か月の期間に焦点を当て、…

『タリバン台頭 —混迷のアフガニスタン現代史』(青木健太著、岩波新書、2022年3月18日発行)

アフガニスタンは文明の十字路。中東、南西アジア、中央アジアの結節点として周囲の勢力のせめぎあいの場所。アメリカは中国の対立に軸足を移すなかで、アフガンから撤退。今後は中国の影響が大きくなる。ロシアもタリバンの後見人となるか。 アフガニスタン…

『自滅する中国 なぜ世界帝国になれないのか』(エドワード・ルトワック著、芙蓉書房出版、2013年7月29日発行)

中国の経済的発展に伴い、軍事予算も相応に増えて、軍事的な大国になり周辺国が脅威を感じるようになる。そして、周辺国が、その脅威を減らす方向で互いに同盟を結ぶようになっている、という主張を行っている。 キーワードは大国の自閉症。巨大国家のリーダ…

『ヨーロッパ冷戦史』(山本健著、ちくま新書、2021年2月10日発行)

北大西洋条約。1949年4月、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ、イタリア、デンマーク、ノルウェー、ポルトガル、アイスランドの12か国で調印。北欧から地中海まで相互防衛の軍事同盟。北大西洋条約機構(NATO)とな…

『アフガン侵攻 1979-89 ソ連の軍事介入と撤退』(ロドリク・ブレースウェート著、白水社、2013年2月10日発行)

ソ連第40軍と航空部隊は1979年12月25日アフガニスタンに侵攻を開始し、1989年2月までに主力軍は撤退を完了した。 1973年7月ダウドは共産主義将校の支援を得て、無血クーデターによって国王を退位させる。ソ連はダウドを支援し友好関係を結ぶ。しかし、徐々に…

『イギリス1960年代 ビートルズからサッチャーへ』(小関 隆著、中公新書、2021年5月25日発行)

1960年代が1980年代のサッチャーが登場する機会を作りだしたというのが本書の仮説であり、本書はそのようなストーリーに沿って書かれている。 1960年代の「文化革命」とりわけスウィンギング・ロンドンの描写が楽しい。戦後しばらくして豊かな社会となり労働…

『キッシンジャー回想録 中国(下)』(キッシンジャー、岩波書店、2012年3月28日発行)

下巻の中心的登場人物は鄧小平である。その前に、周恩来の失脚・キッシンジャーとの別れ、毛沢東の死についても語られる。1973年11月には周恩来がいつもより毛沢東に敬意を払い、ためらい勝ちであったが、歴史家の指摘ではそのころ周恩来に対する四人組の批…

『キッシンジャー回想録 中国(上)』(キッシンジャー、岩波書店、2012年3月28日発行)

第二次大戦後、米中対立となる。朝鮮戦争(1950年6月25日攻撃開始、1953年7月27日休戦合意)、第一次台湾海峡危機(1954年1月18日大陸側が大陳島と一江山島に侵攻~1955年休戦)、第二次台湾海峡危機(1958年8月23日沖合の島への砲撃)で、米中対立が続く。…

『歴史とはなにか 新しい「世界史」を求めて』(鈴木 董、岡本 隆司著、山川出版社、2021年8月20日発行)

明治維新=体制そのものの変革・ご破算、清朝の西洋化改革は体制内改革と。 西欧中心のグローバルという考え方に反対しているようだ。 鈴木さんは、イスラム特にオスマン帝国史が専門のようだ。 岡本さんは、中国近代史が専門ということで、日本史専門の先生…

『文字と組織の世界史 新しい「比較文明史」のスケッチ』(鈴木 董著、山川出版社、2018年8月20日発行)

従来の世界史は、ギリシャ・ローマ世界とその宗教的精神を継承した西欧の歴史の進展を中心として文明の歴史をとらえる傾向があった。 本書はこれに対して新しい世界史を提唱しようとする。その方法としては文字の生まれと変遷をキーとする。 メソポタミア、…

『戦争はいかに終結したか 二度の大戦からベトナム、イラクまで』(千々和 泰明著、中公新書、2021年7月25日発行)

戦争の終結の形態は一方の極に「紛争原因の根本的解決」、他方の極に「妥協的和平」があり、それをめぐって「現在の犠牲」と「未来の危険」のジレンマとどう評価する結果に依存するという。 1.第一次世界大戦 仏・英を中心とする連合国はロシア革命でロシ…

『高地文明―「もう一つの四大文明」の発見』(山本 紀夫著、中公新書、2021年6月25日発行)

発行日前に読み終えたのだが、久しぶりに日本人の著者による面白い本だ。日本の中学や高校の教科書に載っている大河のほとりに生まれた四大文明ーメソポタミア、ナイル、インダス、黄河ーという概念がどのように出来上がったのか、という疑問から説き起こす…

『大英帝国の歴史 下』(ニーアル・ファーガソン著、中央公論新社、2018年6月10日発行)

下巻は、第5章から始まるが、1880年代から20世紀初めのアフリカ分割の話。1882年9月イギリスによるカイロ占領。ロスチャイルドの協力で南アフリカでダイヤモンド帝国を作ったセシル・ローズが象徴する経済力と軍事力(マキシム機関銃)による。1884年11月か…

『大英帝国の歴史 上』(ニーアル・ファーガソン著、中央公論新社、2018年6月10日発行)

イギリスは、17世紀央、スペインやポルトガルに遅れて帝国建設に参入した新参者であった。最初は、スペインやポルトガルの海外基地を襲撃して金目の物を奪い取ることからスタートした。イングランド王室は17世紀には海賊に私掠船としての許可を与えて海賊行…

『日本人のための第一次世界大戦』(板谷敏彦著、角川ソフィア文庫、2020年11月25日)

第一次世界大戦を軍事技術、経済、および日本の果たした役割といった視点を加味して説明した良書だ。 軍事技術についていえば、銃砲、軍艦、潜水艦、戦車、飛行機の進化などが第一次大戦を機に発展したことがよく分かる。第一次世界大戦はどちらかというと地…

『政治の起源 人類以前からフランス革命まで 上』(フランシス・フクヤマ著、講談社、2013年11月5日発行)

国家がどのようにして生まれたかを探求する。ヒトとチンパンジーのゲノムは99%重なっている。自然状態ではチンパンジーの凶暴性は、ニューギニア高地の人間の男による襲撃行為と似ている。人間の方がチンパンジーより残虐である。人間は言葉をもつことで社会…

『ヨーロッパ世界の誕生 ーマホメットとシャルルマーニュー』(アンリ・ピレンヌ著、創文社、1960年8月31日発行)

1935年に初稿が脱稿されたベルギーのアンリ・ピレンヌの遺作、息子さんと高弟によって完成され1937年に発行された。 第一章はイスラム侵入以前の西ヨーロッパ。ローマ帝国は地中海的性格を持っていた。4世紀にコンスタンティノープルが新しく首都となる(330…

『イギリス海上覇権の盛衰 シーパワーの形成と発展 下』(ポール・ケネディ著、中央公論新社、2020年8月10日発行)

下巻は、第7章から実質は第12章まで。終章があるが簡単なまとめ。 マッキンダー1904年「歴史の地理的転換」でコロンブス以来の征服の時代が終わり、社会の力の激発のすべては閉じられた環境で起きる。ロシア中央部(中央アジア)が再び世界の中軸地帯となる…

『イギリス海上覇権の盛衰 シーパワーの形成と発展 上』(ポール・ケネディ著、中央公論新社、2020年8月20日発行)

本書は今から45年ほどまえの1976年に最初に出版された。マハンの『海上権力史論』に基づきながら、批判的にイギリスのシーパワーの変遷を解説する本である。ようやく日本語版の登場ということになる。2017年の新版への前書きで21世紀の初頭の動向が追加され…

『ガリア戦記』(高橋 宏幸訳、岩波書店、2015年2月)

ガリア戦記、昔から一度読んでみたいと思っていたが、漸く念願かなう(というほどのことでもないが)。 カエサル自身が書いたのは、紀元前58年から同52年までの7年間で、1年ごとに1巻となっており、紀元前52年が第7巻となる。第8巻はヒルティウスが著したも…

『破壊の経済 上』(アダム・トゥーズ著、みずず書房、2019年8月8日発行)

ナチスドイツを経済運営面から検討したナチの経済史である。ヒトラー政権を経済面から検討した研究は少ないとのこと。上巻はナチスが政権をとってから第2次大戦(西部フランス)開始直前までについて。 1945年までのイギリスは世界帝国であった。1939年のイ…

『暴落 金融危機は世界をどう変えたのか 下』(アダム・トゥ―ス著、みずず書房、2020年3月16日発行)

金融危機は米国では一旦鎮静化した。その影響で国家財政が落ち込んで2010年には緊縮財政に向かった。 ギリシャ、アイルランド、ポルトガルでは危機が国家財政に破滅的影響を与え、持続不可能な状況に陥る。ギリシャはもともと政府債務が大きすぎた。ユーロ圏…

『アメリカはなぜ戦争に負け続けたのか 歴代大統領と失敗の戦後史』(ハーマン・ウルマン著、中央公論新社、2019年8月10日発行)

ケネディの世代は、大恐慌時代と第二次世界大戦が生み出した、無邪気な時代。ケネディは再軍備をして軍を増強することを公約にして当選した。そして、アメリカが有利だったにも関わらず、ミサイルギャップが存在すると誤認識していた。ピッグス湾侵攻、キュ…

『鉄のカーテン 東欧の壊滅1944-56下巻』(アン・アプルボーム著、白水社、2019年3月発行)

下巻は、スターリンによる東欧の支配=スターリニズムが浸透していく過程から、最終章の1953年3月6日のスターリンの死を経て6月17日のベルリンでの暴動、1956年10月のハンガリー動乱まで。 1948年には東欧諸国は選挙プロセスを通じて正当性を獲得する試みを…

『危機と人類 下』(ジャレド・ダイアモンド著、日本経済新聞出版社、2019年10月25日発行)

下巻では、ドイツの再建、オーストラリアの変化について述べ、現在進行中の危機として日本、米国について述べる。 ドイツが東西に分割され、そして再統合された近代の歴史は学ぶべきところが多い。東西ドイツで生まれた生活水準と経済力の差は、東ドイツの人…

『危機と人類 上』(ジャレド・ダイアモンド著、日本経済新聞出版社、2019年10月25日発行)

個人的危機に際して、それを突破するための要素を類型化し、国家的危機にも敷衍してみようという野心作である。但し、ちょっとあまりにも大雑把すぎるような気がする。国家の危機のパターンを簡単に類型化できるものなのかどうか疑問を感じるところもある。 …

『ベトナムの泥沼から』(デービッド・ハルバースタム著、みすず書房、1987年6月10日初版、2019年1月24日新装版発行)

デビッド・ハルバースタムが『ニューヨーク・タイムズ』のサイゴン特派員のときの活動記録である。滞在期間は、1962年9月頃から1963年12月までなので1年と3ヵ月。そう長い期間ではない。 ベトナムは、ゴ・ジン・ジェム大統領を筆頭とするゴ一族が強大な権力…

『独ソ戦 絶滅戦争の悲惨』(大木 毅著、岩波新書、2019年7月発行)

岩波新書の『独ソ戦』が人気らしいと聞いて買ってきて読んだ。ソ連の崩壊前後から公開され始めた資料の研究が進んで、独ソ戦に関するこれまでの通説がだいぶ変わってきつつあるということは、なんとなく分かった。 スターリン像はあまり変わり映えしないが、…