『自滅する中国 なぜ世界帝国になれないのか』(エドワード・ルトワック著、芙蓉書房出版、2013年7月29日発行)

中国の経済的発展に伴い、軍事予算も相応に増えて、軍事的な大国になり周辺国が脅威を感じるようになる。そして、周辺国が、その脅威を減らす方向で互いに同盟を結ぶようになっている、という主張を行っている。

キーワードは大国の自閉症。巨大国家のリーダーは、一般に内政に多くの問題を抱えており、外敵に対して満足に集中できない。その結果、国際問題の意思決定は「理解不能な複雑な現実を非常に単純化した見立てを元にして行われてしまう」(p.36)中国上層部にもこれが当てはまる。

中国外交の伝統は朝貢制度である。中国と朝貢国の間には不平等が存在するという前提に基づく。しかし、現在の国際外交は大きな国も小さな国も形式上は平等であるという前提にもとづいている。これは中華帝国朝貢外交では考えられない。朝貢国は天下に入れてもらう。中国の巨大国家の自閉症は自国が世界の中心であるという暗黙の前提で悪化する。

経済面で日本を超え、アメリカを超えようとする中国は、1890年頃までのドイツと似ている。1890年頃にドイツの未来を予想したら、1920年頃までにはイギリスを抜いてあらゆる意味で優位に立つはずであったが、実際には敗戦と国土の荒廃に苦しんだ。これはドイツの傲慢さに原因がある。戦略には他者が居るので、一方の行動の単純な結果にならない。