『大英帝国の歴史 下』(ニーアル・ファーガソン著、中央公論新社、2018年6月10日発行)

下巻は、第5章から始まるが、1880年代から20世紀初めのアフリカ分割の話。1882年9月イギリスによるカイロ占領。ロスチャイルドの協力で南アフリカでダイヤモンド帝国を作ったセシル・ローズが象徴する経済力と軍事力(マキシム機関銃)による。1884年11月から1885年2月までのベルリンにおけるアフリカ貿易会議は西欧諸国がアフリカでの貿易の自由を取り決める。19世紀末英国の海軍戦力は世界で圧倒的なプレゼンスをもつ。19世紀末のボーア戦争はイギリスにとっての転換点となる。ボーア戦争への批判で保守党による政治から自由党に政治が変わった。20の初めヨーロッパでドイツが台頭し、流れが変わる。

第6章は第一次世界大戦でかなりの領土を得たが、戦争の費用と比べると経済的には釣り合いが取れなかった。戦争への支払いと均衡財政のためにデフレとなった。多くのイギリス人に帝国への懐疑が生まれた。アイルランド独立運動、インドの独立運動が盛り上がる。第二次世界大戦アメリカの支援でようやく勝てた。しかし、戦後イギリスの経済的地位は急速に低下した。終戦直後はイギリス経済は欧州最大であったが、1973年にはドイツとフランスに追い越されており、イタリアにも追い越される寸前であった。アメリカは必ずしもイギリスの立場を指示したわけではなく、例えば1956年11月のエジプトのスエズ国有化の動きに対して英仏遠征軍はエジプトの動きを封じられなかった。イギリス帝国はわずか30年で解体された。

終章はイギリスの果たした役割をずいぶんと好意的に書いているが、どうやら本書はBBCの放送番組だったらしいことを割り引いて考える必要がありそうだ。