『貨幣進化論』(岩村 充著、新潮選書、2010年9月25日発行)

金本位制

イングランド銀行券は請求があれば金貨を払い戻します。このルールが金本位制の本質である。銀行券を金貨に交換することを兌換という。イングランド銀行は金を準備するが、その金をまた貸ししているかもしれない。

1797年ナポリタン戦争時に金兌換停止となった。しかし、物価が上昇し、金利は上がったがイングランド銀行券は崩壊しなかった。1821年に金兌換を再開した。1833年法貨となった。金と貨幣価値の関係を「平価」という。平価は法律で決める。

国境を越えた取引の決済には金を使う。金本位制とは金兌換可能通貨で表示された証券である「金為替」がやり取りされる世界。金為替は取引銀行で入手する。輸入が増えると差額分を金で送る(「金現送」)必要がでてくる。金準備が減ると困るので金利を上げる。

第一次大戦では金本位制の国は兌換停止した。大戦後ドイツとフランスは平価切り下げして金本位制に復帰。イギリスは1925年に大戦前の平価で復帰した。但し、この復帰は米国との資本取引関係を維持するために金の現送を許すというもので対外的のみ。国内のイングランド銀行券は兌換停止のまま。

1929年からの大恐慌で金兌換停止国が増えた。1937年までにすべての国が兌換停止。

金本位制では金の価格が財の価格のアンカーとなる。従って、金の価格が変動すると困る。そこで、英国は金が増えそうなら金を備蓄し、需給調整をする。

プレトンウッズ体制

1944年に誕生したプレトンウッズ体制は国際通貨体制。金1トロイオンス35ドルという平価を設定。各国の通貨はドルとの交換比率を設定する固定相場制。1ドル360円。ドルと金を平価で交換できるのは参加国の通貨当局(政府と中央銀行)のみ。「金ドル本位制」ともいわれる。貨幣用でない金は自由金市場で売り買いできた。金プールを各国共同で作って金1トロイオンス=35ドルを維持しようとして失敗した。

1969年SDRが導入された。

1971年にプレトンウッズ体制崩壊。変動相場制。1971年末再度為替レートを変更して固定相場制を再開。スミソニアン体制、1ドル308円。1973年にはそれも崩壊して完全な変動相場制に移行した。

★プレトンウッズ体制は、第二次大戦前の金本位制とは異なる仕組みなので、これを金本位制というと混乱が生じる。

貨幣価値

米ドルは正式には「連邦準備券」といい法律上は「連邦準備制度理事会の決定に従って発行される合衆国政府の債務」である。(p.132)

財政の力が貨幣価値のアンカーになっている。つまり、財政余剰と発行済み国債と貨幣総量を見合わせて、財政余剰<(国債+貨幣総量)なら、貨幣が減価、国債の実質価値も、財政余剰に見合うまで減価する。国債と貨幣総量と税収のバランスが本質的な問題となる。(p.221)ファンダメンタルアプローチ。

★財政の力が貨幣価値のアンカーという概念は、特に、米ドルのような基軸通貨にはあてはめられないのではないだろうか? 財政の力は国内的な概念だろうけど、財政の力の範囲を超えて基軸通貨の貨幣総量はグローバルに広がっているのでバランスさせるこという考えに意味をもたせられないのではないか?