金融

『大収縮 1929-1933 米国金融史第7章』(ミルトン・フリードマン他著、日経BP社、2009年9月29日発行)

金為替本位制:1929年の時点。欧米諸国の大半は通貨準備を金そのものではなく、米ドルや英ポンドなど、固定された相場で金と兌換できる他の通貨として保有した。 固定相場制だと異なる国々の物価や所得が密接に関連する。このため1929年以降世界規模で所得と…

『貨幣進化論』(岩村 充著、新潮選書、2010年9月25日発行)

金本位制 イングランド銀行券は請求があれば金貨を払い戻します。このルールが金本位制の本質である。銀行券を金貨に交換することを兌換という。イングランド銀行は金を準備するが、その金をまた貸ししているかもしれない。 1797年ナポリタン戦争時に金兌換…

『基軸通貨 ドルと円のゆくえを問い直す』(土田 陽介著、筑摩書房、2024年11月15日発行)

1971年のニクソンショックでプレトンウッズ体制は名実ともに崩壊した。米ドルは金という実物資産の裏付けを持たなくなった代わりに、米国債を裏付けに発行される通貨になった。 ★(国債本位制)という言葉は適切なんだろうか? 管理通貨制度(国債本位制)(…

『金融恐慌1907 米FRB創設の起源とJ・P・モルガン』(ロバート・F・ブルナー、ショーン・D・カー著、東洋経済新報社、2016年8月11日発行)

1791年議会が合衆国銀行設立に同意。期間20年。1809年に認可延長拒否で消え去る。 1816年再び第二合衆国銀行設立。1832年ジャクソン大統領の認可延長拒否で州法銀行に移行。その後廃業。 1861年南北戦争。1863年国法銀行法成立。財務省に国法銀行設立認可と…

『金利を考える』(翁 邦雄著、ちくま新書、2024年10月10日初版)

いままで読んだ金利についての本の中では一番面白くお薦め。しかし、この本を読むと経済学者というのは実際の社会経済、実社会については子供レベルの知識しかないのではないか?という印象を受けてしまう。 金利は儲ける機会の大きい経済では高くなり、成長…

『「エブリシング・バブル」リスクの深層』(エミン・ユルマス、長濱利廣著、講談社α新書、2024年9月18日発行)

世界の中央銀行が利上げするなか、日銀は金融緩和を続け、最後に利上げする。すると直後に金融危機が起きる。米国経済は日本の6倍以上だが、マネーの供給量は日銀の方がFRBより大きい。(p.19) 米国債の大きな買い手は日本しかいない。中国は買わない。FRB…

債券運用

デュレーションってなんだろう | シグマインベストメントスクール デュレーションとは | PIMCO 債券の金利=ベース金利+信用スプレッド ベース金利の変動:=金利リスク 債券投資の平均回収期間であり、残存期間を超えることはない。 ※ここでいうデュレーショ…

『21世紀の金融政策 大インフレからコロナ危機までの教訓』(ベン・S・パーナンキ著、日本経済新聞出版、2023年10月18日発行)

フィリップス曲線:1958年発表。イギリスの100年の平均賃金の伸び率と失業率から失業率が低いときは賃金の伸びのペースが速い。 現代版フィリップス曲線の3つの主張 ・需要の増加が景気拡大の原動力のとき、賃金と物価の両方のインフレになる。 ・供給ショ…

『ドキュメント異次元緩和 10年間の全記録』(西野智彦著、岩波新書、2023年12月20日発行)

2012年末の総選挙で2%インフレ目標・無制限金融緩和で安倍の勝利で始まる。白川総裁、黒田総裁、リフレ派政策委員選任、植田総裁と政治の関係、バズーカ、マイナス金利、YCC…と複雑化した金融緩和の過程。 リフレ政策とは、日本のデフレ脱却が必要である、…

『グローバルインフレーションの深層』(河野 龍太郎著、慶応大学出版会、2023年12月15日発行)

2020年第1Q新型コロナウィルスのパンデミック発生。2021年5月ワクチン接種開始(日本)。 2021年から世界的な高インフレ(グローバルインフレーション)となる。当初はコロナ禍によるサプライチェーンの混乱、2022年2月24日開始のウクライナ戦争による資源・…

『金(ゴールド)が語る20世紀―金本位制が揺らいでも – 』(鯖田 豊之著、中公新書、1999年3月発行)

20世紀初頭から終期まで。金本位制の時代から、金本位制がなくなって変動為替制の時代に至る激動を中央銀行の金保有量、為替レートの変動などの視点でまとめている力作。 1937年3月9日に始まった第一次現送は円安と輸入増加による外貨準備不足のため、金を現…

『危機と決断 前FRB議長ベン・パーナンキ回顧録』(ベン・パーナンキ著、KADOKAWA、2015年12月25日発行)

1913年連邦準備法、1914年連邦準備制度誕生。12か所の半自治的な連邦準備銀行を置く。形式上は民間金融機関でそれぞれは独立。各準備銀行の総括、連邦準備制度の運営は連邦準備制度理事会(FRB)が行う。FRB理事は7名で上院の承認を経て大統領が任命、任期14…

『アベノミクスは何を殺したか』(原 真人著、朝日新書、2023年7月30日発行)

13人の論客と整理するアベノミクス。アベノミクスとはなにかの定義もあまりはっきりしていないが、本書の多くの部分は日銀の大規模緩和に関する議論である。 もともと著者が反アベノミクスなので、いろいろな角度からの反対意見を述べる人が多い。しかし、傾…

『日本銀行 虚像と実像 検証25年緩和』(河浪 武史著、日経BP、日本経済出版発行、2023年6月23日発行)

1998年から2023年3月黒田総裁退任までの25年間の日銀の金融政策の点検。中心は2013年から2023年の黒田大規模緩和。新聞記者の書いた本なので経済理論・分析というよりも人間に関する記録の面が強い。 インフレの方が借金は返しやすい、経済活動への投資はや…

欧州と米国銀行の動向 2023~2024

2024/2/24 ブルームバーク:フォートレス・インベストメント・グループのジョシュア・パックCEO談、既に15億ドルのオフィス向け正常債権を1ドルあたり50-69セントで取得した。金融機関の債権損切に対応。 米地銀株が軒並み下落、NYCBの赤字決算と減配受…

『金利と経済』(翁 邦雄著、ダイヤモンド社、2017年2月16日発行)

高度成長期規制金利、その中核は公定歩合。固定相場、少ない外貨準備。国際収支均衡重視、1973年には崩壊。 1970年代米国グレートインフレーション。1979ボルカ―の引き締め。 名目金利+物価上昇率=実質金利。お金の貸し借りでは予想金利が重要。 実質金利…

『地銀と中小企業の運命』(橋本 卓典著、文春新書、2023年3月20日発行)

コロナ支援 2020年3月からの実質無利子無担保融資の実績は40兆円。3年間利払いなし、元本返済最大5年間の据え置き。セロゼロ融資は赤字補填資金であり、国の有事措置として始まった。最終的には公費負担となる。1~2割の返済不能で4~8兆円の公的負担が生…

『国債リスク 金利が上昇するとき』(森田 長太郎著、東洋経済新報社、2014年2月13日発行)

2013年4月4日金融政策決定会合で「異次元の金融緩和」を決定。「2年程度で前年比2%の物価上昇率を達成する」ことを目的とする。 年平均利回り=((満期償還額-現在の時価)/残存年数+利率)÷現在の時価×100 日本経済の問題点は資金の需要がないこと。金…

『日本銀行 我が国に迫る危機』(河村 小百合著、講談社現代新書、2023年3月20日発行)

2022年10月1ドル151円、32年振りの円安。 2013年から10年近く異次元緩和が続き、超低金利状態。2020年春のコロナ対応の財政出動は目立った負担増なし。 2021年から世界の主要国は物価が急上昇。消費者物価上昇は英国・ユーロは前年比10%超え、米国は10%弱…

『アフター・アベノミクス 異形の経済政策はいかに変質したのか』(軽部 謙介著、岩波新書、2022年12月20日)

第二次安倍政権は2012年から2020年まで。この間のアベノミクスについて、同じ著者による三部作の最後。アベノミクスは大規模金融緩和により、円安、株価上昇、GDP成長がプラス化などの経済復調をもたらした。しかし物価上昇は2%に届かず。2%の達成目標に…

『世界インフレの謎 そして、日本だけが直面する危機とは?』(渡辺 努著、講談社現代新書、2022年10月20日発行)

2008年のリーマンショックを契機として不況が発生し、世界が低インフレとなった。グローバリゼーション、少子高齢化、技術革新の頭打ちが要因として挙げられている。 ウクライナ侵攻前の2021年から高インフレが始まっている。戦争が主な原因ではない。2022年…

『世界マネーの内幕―国際政治経済学の冒険』(中尾茂夫著、ちくま新書、2022年3月10日)

いろんな本をつまみ食いして張り合わせたという印象の濃い堕書である。結局のところ、何をいいたいのか、あまりよく理解できない。

『本当にわかる 債券と金利』(大槻 奈那・松川 忠著、日本実業出版社、2017年2月1日発行)

本書では、2013年4月4日日銀の異次元緩和、それに続く2016年1月29日のマイナス金利が話題の中心なのだが、日銀のマイナス金利政策は「銀行が日銀に預けている準備預金の一部に適用される金利をマイナスにする」というもの。 マイナス金利によって国債の金利…

『日銀漂流 試練と苦悩の四半世紀』(西野智彦著、岩波書店、2020年11月26日発行)

第1章松下時代 1996~1998年 1997年6月11日成立。「憲法第65条 行政権は、内閣に属する。」と日銀の独立性をめぐる闘争部分が一番面白い。1997年10月末から頭の三洋証券会社更生法、コール市場でのデフォルト、北海道拓殖銀行の破綻、山一破綻と続き、各地で…

『住友銀行秘史』(國重 惇史著、講談社、2016年10月発行)

バブルの末期に住友銀行とイトマンであったできごとの裏話。 住友銀行の天皇といわれた磯田一郎会長が辞任するまでのいきさつ、磯田の腹心でイトマンに送り込まれた河村良彦社長が伊藤寿永光に取り込まれて不動産事業にのめりこむ。また、絵画取引では許永中…

『金融工学の悪魔』(吉本 佳生著、日本評論社、1999年9月15日発行)

本書は、表題とは違って、金融工学を簡単な算数レベルで教えようというまじめな本である。内容は役に立つ実用的な考え方が盛り込まれている。 ポートフォリオ理論は、リスク資産を一つに集中させないで複数の資産をもつことでリスクを小さくする。資産を収益…

『確率・統計でわかる「金融リスク」のからくり  「想定外の損失」をどう避けるか』(吉本 佳生著、講談社ブルーバックス、2012年8月20日発行)

本書はボラティリティを中心にした運用リスク評価尾をシミュレーションを通じて理解してもらおうというものである。金融商品のボラティリティとは、変化率の標準偏差のことである。ボラティリティが大きい金融商品はリスクが大きいという。本書の金融商品と…

『暴落 金融危機は世界をどう変えたのか 下』(アダム・トゥ―ス著、みずず書房、2020年3月16日発行)

金融危機は米国では一旦鎮静化した。その影響で国家財政が落ち込んで2010年には緊縮財政に向かった。 ギリシャ、アイルランド、ポルトガルでは危機が国家財政に破滅的影響を与え、持続不可能な状況に陥る。ギリシャはもともと政府債務が大きすぎた。ユーロ圏…

『暴落 金融危機は世界をどう変えたのか 上』(アダム・トゥ―ス著、みずず書房、2020年3月16日発行)

米国の大統領が変わるごとに財政赤字に関する方針が変わる。クリントン時代にルービンが財政黒字にした後、ブッシュ時代に財政が大赤字に転ずる。中国はドル固定相場で元を安めに固定して競争力を保っていた。中国の巨額の貿易黒字の大部分は財務省中期証券…

『検証 経済暗雲』(西野 智彦著、岩波書店、2003年7月15日発行)

主にバブルが崩壊した後の1992年から1995年までの金融行政についてまとめた本である。前著の『検証 経済迷走』、『検証 経済失政』に至る前史にあたる。 〇寺村銀行局長の時代 1992年6月~1994年6月 主な課題は次の通り。 ・銀行の決算対策 ・貸し渋り問題 …