『グローバルインフレーションの深層』(河野 龍太郎著、慶応大学出版会、2023年12月15日発行)

2020年第1Q新型コロナウィルスのパンデミック発生。2021年5月ワクチン接種開始(日本)。

2021年から世界的な高インフレ(グローバルインフレーション)となる。当初はコロナ禍によるサプライチェーンの混乱、2022年2月24日開始のウクライナ戦争による資源・エネルギー価格の上昇、など供給サイドの問題だった。世界的にはそれに加えて財政政策の賜物である、というのが本書の主張のようだ。

日本は2021年は輸入元の価格上昇から始まり、2022年は円安による輸入物価の上昇がインフレを加速した。

2022年末、2023年秋に150円まで達した円安の原因は内外金利差の急拡大による。

YCCによる長期金利の抑え込みができたのは世界的に長期金利が低下する傾向にあったから。コロナ後に世界の長期金利が上昇傾向となり、日本の長期金利も上昇している。

また、2023年春以降のインバウンド消費の急増。岸田内閣の財政拡張政策やインフレ対策の補助金もインフレを加速する可能性がある。今後は労働力不足による賃上げが起きる。

日本では名目上インフレが起きているが実質賃金は減少しており、家計から企業や政府への所得移転が起きている。

2019年から2022年の間に、均衡実質為替レートが30%円安方向にジャンプした。原因は、地政学的:米中新冷戦で日本円は逃避先にならない、家計部門のドル投資で外貨建て資産の増加による?

日本でも2021年秋には家計調査で80%の人が物価上昇が認識し、困ったこととしていた。

2023年:企業業績は好調:円安で輸出好調、ペントアップ需要と訪日外国人の増加で非製造業業績も良い。実質賃金の増加で家計から企業・政府への所得移転が起きている。インフレ税の増加。

日本の実質実効円レートは1990年代中央がもっとも円高で今は円安になっている。

日本の物価水準は1995年まで世界でも高い水準だったが、その後は下がっている。バラッサ・サムエルソン効果による。貿易財セクターの生産性格差で物価水準が決まる。ダークサイドのイノベーション:非正規雇用比率上昇を通じたコストカット。

米・欧の中央銀行は2021年当初インフレの継続を見間違う。2021年当初はパンデミックから正常化への過程と見た。2023年8月現在米国インフレはCPIコア4.3%、EUは5.3%、日本は4.3%。過去10年間中央銀行は低いインフレに慣れきっていた。