『日本銀行 我が国に迫る危機』(河村 小百合著、講談社現代新書、2023年3月20日発行)

2022年10月1ドル151円、32年振りの円安。

2013年から10年近く異次元緩和が続き、超低金利状態。2020年春のコロナ対応の財政出動は目立った負担増なし。

2021年から世界の主要国は物価が急上昇。消費者物価上昇は英国・ユーロは前年比10%超え、米国は10%弱、日本は4%に。

欧米の中央銀行はインフレ対応に短期政策金利の引き上げと、バランスシートの縮小を急いでいる。日銀はYCC維持と、マイナス金利を死守。金融政策運営能力を喪失している。

利上げすると日銀は赤字になり、ひいては債務超過になるため利上げしないと著者は考える。

福井総裁時代、2001年から2006年の量的緩和では、買入手形の見返りに資金を供給した。2006年7月に手形の終期が来て、銀行は資金を返済して、正常化が終了した。

現在市場に500兆円の余り金があり、それは日銀の当座預金となっている。

近年の金利引き上げ局面では、当座預金に利子を付ける方法が一般的となった。これを実施すると日銀は逆ザヤになる。金利上昇時には国債の含み損が出る。これは満期まで保有すれば元本が戻るが、含み損の額は付利コストにほぼ等しい。

マイナス金利やゼロ金利をどこまで引っ張れるかで日銀が赤字転落、ひいては債務超過になるかどうかが決まる。