『記憶力を強くする 最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方』(池谷 祐二著、ブルーバックス、2001年1月20日発行)

人の脳には約1000億個の神経細胞がある。神経細胞の数は誕生したばかりの時が一番多い。使われていない神経細胞が選ばれて1日数万個減っている。脳は70歳になるまでの5%軽くなる。

但し、海馬だけは使うと増殖する。玩具を入れた環境で育てたネズミは海馬が発達している。水迷路試験では刺激の多い環境で育ったネズミは成績が良い。

海馬を削除すると重度の記憶障害になる。海馬には約1000万個の脳細胞がある。海馬は記憶情報の管理塔である。海馬にはアンモン角と歯状回がある。側頭葉から海馬に情報が渡る。歯状回が記憶情報の入り口。情報は側頭葉に戻る。歯状回の顆粒細胞のみが増殖能力をもつ。顆粒細胞は死ぬ速度も速い。

短期記憶(30秒~数分で消える)と長期記憶。短期記憶で覚えられるのは凡そ7個。グループ化すると記憶容量が増える。

長期記憶には①エピソード記憶は経験やできごとの記憶。②知識は意味記憶意味記憶を思い出すにはきっかけが必要。③手続き記憶、④プライミング記憶がある。③~④は潜在記憶。記憶の階層は、上から、エピソード記憶、短期記憶、意味記憶、プライミング記憶、手続き記憶になる。下の方が原始的である。手続き記憶が一番先に発達する。エピソード記憶は3,4歳頃からできる。海馬が子供では完成していない為。歳を取ると記憶力が衰えるが、エピソード記憶からなくなる。エピソード記憶の喪失は痴呆症の初期段階。

海馬はエピソード記憶意味記憶に関係する。海馬が無くても思い出すことができる。記憶は海馬の中に保存されているのではない。側頭葉にある。海馬に留まるのは長くて1か月程度。

特に新しいものに出会ったとき、探索しているとき、海馬はθ波を打つ。5ヘルツ。記憶しようという意思の表れ。海馬には場所ニューロンがある。感覚情報が統合される。海馬の顆粒細胞を増殖するには、ランニング、ダイエット、硬いものをよく噛んで食べるなどが良い。

神経細胞のネットワーク。ナトリウムイオンが「活動電位」として移動する。神経細胞にはナトリウムイオンを選択的に通す穴(チャネル)がある。チャネルが開くとイオンが流れる。一方、神経回路どおしは物理的に接していない。シナプス間隙という空きがあり、ここで活動電位が乗り継がれる。化学物質を使って乗り換える。いろいろな化学物質が使われる。アセチルコリングルタミン酸。電気信号⇒化学物質⇒電気信号が生物の情報伝達の仕組み。

樹状突起から入り、軸索から出る。神経細胞には樹状突起は多いが軸索はひとつ。樹状突起にスパインが沢山ある。100個以上のスパインがシナプス電位を作り出してようやく神経細胞が活動する。

記憶は曖昧。失敗や間違いなどを許容する柔軟性がある。一つの神経細胞にはいろいろな記憶が蓄えられる。保存情報が相互作用する。

記憶にはシナプス可塑性が使われているのではないか?

海馬歯状回のシナプスを高い周波数で刺激(テタヌス)すると、シナプス伝達の効率が上昇し、刺激後も長時間持続した(1973年スウェーデンのブリスとレモ)。LPTという。LPTが記憶の分子メカニズム。LPTを使って金魚に記憶を植え付けられる。LPDで消すことができる。