世界経済

『脱「中国依存」は可能か』(三浦 有史著、中公選書、2023年1月10日発行)

中国の世界における経済的プレゼンスは米国に比肩する。輸出入貿易額は米国を上回り、中国の低所得向け対外融資は2020年でG7合計の4倍である。中国の自動車販売台数は米国の1.7倍である。 日本の対中貿易は2021年には対米貿易の1.7倍となった。 しかし、中国…

『世界インフレの謎 そして、日本だけが直面する危機とは?』(渡辺 努著、講談社現代新書、2022年10月20日発行)

2008年のリーマンショックを契機として不況が発生し、世界が低インフレとなった。グローバリゼーション、少子高齢化、技術革新の頭打ちが要因として挙げられている。 ウクライナ侵攻前の2021年から高インフレが始まっている。戦争が主な原因ではない。2022年…

『世界はコロナとどう戦ったのか? パンデミック経済危機』(アダム・トゥース著、東洋経済新報社、2022年2月3日発行)

コロナによる経済危機に世界各国は財政支出をもって立ち向かったという話が中心。あまり面白くない。

『世界マネーの内幕―国際政治経済学の冒険』(中尾茂夫著、ちくま新書、2022年3月10日)

いろんな本をつまみ食いして張り合わせたという印象の濃い堕書である。結局のところ、何をいいたいのか、あまりよく理解できない。

『米中対立 アメリカの戦略転換と分断される世界』(佐橋 亮著、中公新書、2021年7月25日発行)

第1章から第4章までは、米中対立について、歴代の政権・政府を中心とするアメリカ側の中国への姿勢の変化を中心に分析した報告である。 中華人民共和国が成立後、米中は朝鮮戦争で銃火を交え、その後長く敵対関係となる。 1960年代にソ連への牽制、ベトナム…

『21世紀の資本』(トマ・ピケティ著、みすず書房、2014年12月8日発行)

GDPはある国の国境内でその年に生産された財やサービスの量。GDPから減価償却を差し引いたものが国内純生産。それに外国からの純収入を足したものが国民所得である。 国民所得=国内算出(国内純生産)+外国からの純収入 国民所得=資本所得+労働所得 資本…

『絶望を希望に変える経済学』(アビジット・V・バナジー&エステル・デュフロ著、日本経済新聞出版、2020年4月17日発行)

移民問題が一番大きな問題。移民への反対は事実を教えても変わらない。人々が考える移民の経済学は次の通り:「世界が貧しい人であふれている。貧しい人は豊かな国を目指す。そして豊かな国の賃金を押し下げて、そこの住民の生活を苦しくする。」 しかし、こ…

『暴落 金融危機は世界をどう変えたのか 下』(アダム・トゥ―ス著、みずず書房、2020年3月16日発行)

金融危機は米国では一旦鎮静化した。その影響で国家財政が落ち込んで2010年には緊縮財政に向かった。 ギリシャ、アイルランド、ポルトガルでは危機が国家財政に破滅的影響を与え、持続不可能な状況に陥る。ギリシャはもともと政府債務が大きすぎた。ユーロ圏…

『暴落 金融危機は世界をどう変えたのか 上』(アダム・トゥ―ス著、みずず書房、2020年3月16日発行)

米国の大統領が変わるごとに財政赤字に関する方針が変わる。クリントン時代にルービンが財政黒字にした後、ブッシュ時代に財政が大赤字に転ずる。中国はドル固定相場で元を安めに固定して競争力を保っていた。中国の巨額の貿易黒字の大部分は財務省中期証券…

『アメリカの制裁外交』(杉田 弘毅著、岩波新書、2020年2月20日発行)

本書は読むとアメリカの制裁外交について、全体をうまくまとめて整理した本だ。前書きに「金融制裁も自らの痛みを伴わずに、相手にできるだけ多くの犠牲を強いるため、相手に与える負のインパクトへの思いが足りないのではないか」とある。本書を読むとまさ…

『アジア経済とは何か 躍進のダイナミズムと日本の活路』(後藤 健太著、中公新書、2019年12月25日発行)

21世紀のアジア経済はグローバル・バリューチェーンの時代(p.ii)。アジアの都市での生活パターンは先進国と類似する。都市部と農村部の格差が大きい(p.v)。 戦前の日本にとってアジアとは中国であった。しかし、1949年に共産党支配の中国ができたことで…

『揺れる大欧州』(アンソニー・ギデンス著、岩波書店、2015年10月6日発行)

親ヨーロッパ派、EUの永続を望む。EUの共同行動で世界に影響を及ぼせるという議論。 グローバル化の加速とインターネットの台頭によって、人類全体は、ごく近い過去の時代と社会的、技術的に異なるシステムの中で生きているのではないだろうか。p.15 ユ…

『アイスランドからの警鐘 国家破綻の現実』(アウスゲイル・ジョウンソン著、新泉社、2012年12月25日)

アイスランドは、1998年から2008年10月まで世界有数の金融帝国を築いたが、リーマンショックでわずか一週間で崩壊した。 本書ではアイスランドの銀行の簡単な歴史を説明したあと、金融帝国となるまで、崩壊の状況を分析している。読んでみると、内容は面白そ…

『ディープインパクト不況 中国バブル崩壊という巨大隕石が世界経済を直撃する』(真壁昭夫著、講談社α新書、2019年11月20日発行)

中国バブル崩壊に備えよ、というのが本書のメッセージである。確かに現在の世界経済において中国の占めるウェイトは大きい。本書では、現在、中国経済は成長の限界にきており、今後、中国経済が大失速すれば、ドイツを始めとするEU、日本経済はかなり大きな…

『債務、さもなければ悪魔 ヘリコプターマネーは世界を救うか?』(アデア・ターナー著、日経BP社、2016年12月27日発行)

2007~2008年の世界経済危機、リーマンショックという大惨事の経験をきっかけとして、これを予想できなかった主流派経済学や金融政策への根源的批判の書である。 債務は株と違って返済されるのが原則であり、不確実性が小さい。しかし、破綻するとかなり大き…

『IMF 世界最高司令部20ヶ月間の苦闘 下』(ポール・ブルースタイン著、楽工社、2013年12月2日)

1998年1月インドネシア クリントン大統領、コール首相、橋本首相らがスハルトにIMFの方針に従うよう説得。1月15日IMF強化プログラムに署名。KKN構造改革をさらに進める。スハルトは改革する気があるのか? 合理的なのか? 改革プログラム発表で市場は反応せ…

『IMF 世界最高司令部20ヶ月間の苦闘 上』(ポール・ブルースタイン著、楽工社、2013年12月2日)

IMFの通貨危機対処に関するドキュメンタリーである。上巻では、IMFという組織の歴史やスタッフ教育などから始まっている。 IMFと世界銀行は1944年のプレトンウッズ体制としてつくられたが、ドルは固定相場制が維持できなくなった。 IMFのスタッフ教育は、IMF…

『イギリス帝国の歴史 アジアから考える』(秋田茂著、中公新書、2012年6月発行)

以前に読んだ記憶がある。ところどころ文章にも写真にも記憶がある。しかし、ブログには纏めていない。 主にグローバル経済、特にアジアとの取引関係を中心とするイギリス経済史とも言える。なかなか面白い視点である。グローバル化は現代的トピックかと思っ…

『世界経済チキンゲームの罠』(滝田 洋一、日経プレミアシリーズ、2019年3月発行)

○米国の財政の問題 ・予算の成立が遅れて政府機関の閉鎖:2018/12/22~34日間は過去最長 ・財政の壁:2019/3/1~ 9月頃米国債務上限? ・輸入車に対する関税25%(日本には痛い)日本との2国間物品貿易協定(TAG)協議中は適用しない。自由貿易協定(FTA)…

『ブレないトランプが世界恐慌を巻き起こす』(大竹 慎一著、徳間書店、2018年10月発行)

この本は読む価値があるのだろうか? ⇒あるかな・・・。いままで知らなかった概念を幾つか学べた。 米中貿易戦争をみて、この根本には、アメリカの国家戦略が変わった、中国との間で安全保障上の脅威を感じている、というのは合意できる。 対中追加関税2500…

『お金の流れで読む日本と世界の未来』(ジムロジャース著、PHP新書、2019年1月発行)

新書なのでやむを得ない部分もあるが、雑ぱくな議論が多い。そもそもジムロジャースが雑ぱくな議論が持ち味のような気もする。また、いろいろなしがらみを外して、大きな目でみると方向性は正しいように感じる。長期投資の観点で考えると正しいかもしれない…

『操られる民主主義 デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか』(ジェイミー・バートレット著、草思社、2018年9月発行)

本書は、インターネット・テクノロジーの民主主義への脅威を警告する。具体的な例としては、第3章 ビッグデータと大統領選が一番だ。2016年のアメリカ大統領選の「プロジェクト・アラモ」にはびっくりだ。選挙の投票行動に影響を与えられそうな人を選んで、…

『「ポスト・グローバル時代」の地政学』(杉田 弘毅著、新潮選書、2017年11月25日発行)

20世紀後半からつい最近まではグローバル時代と認識している。それ以前も移動手段の進展でグローバル化が進んできたのだが、20世紀後半は航空機の発展でグローバルな移動の大衆化が進み、さらには、1990年代後半からの20年はインターネットの発達で、どこに…

『ルワンダ中央銀行総裁日記』(服部 正也著、中公新書、1972年発行)

本書は、昨年(数ヶ月前)の神田古本祭りで、新古書として安く展示されていた中から面白そうなタイトルだな、という程度で買って積ん読していたもの。先週の週末、書店を回ってもあまり面白い新刊がないなあ、ということで読みはじめたところ、あまりの面白…

『マッド・マネー カジノ資本主義の現段階』(スーザン・ストレンジ著、岩波現代文庫、2009年1月発行)

20世紀の後半から金融が国際化し、国境を越えて一つの国家では管理しきれなくなってきた。こうした国際金融活動は経済的なものであると同時に政治的な対処が必要となる。本書は、1984・85年頃に書かれた『カジノ資本主義』の続編とも言える本である。『カジ…

『中央銀行が終わる日』(岩村 充著、新潮選書、2016年3月)

難しい本である。まず、ビットコインの説明については、技術的な話が多いのだが、マイナーがビットコインを取得する方法は良いとして、ビットコインをマイナー以外の人が取得する方法が書いていないので、あまりよく分からない。※他の本も読み、2回目に読ん…

『問題は英国ではない、EUなのだ』(エマニュエル・トッド、堀茂樹訳、文春新書、2016年9月)

面白い!・グローバリゼーションに行き過ぎ対する国家主義の台頭。ネイションの再建。Brexitは英国のネイション再建の一環。・2030年の世界。米国、ロシアは安定化。欧州、中国は不安定化。ドイツの大量移民受け入れは危険。日本はロシアを相手にせよ。・中…

『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』(エマニュエル・トッド、文春新書、2015年5月)

一読した。今までなんとなく感じていたことがはっきり書かれている。5月20日1刷、6月30日5刷ということはかなり売れているようだ。タイトルが衝撃的ではあるが、ドイツがユーロを支配して他の国が隷属または被支配国になりつつあるのは正しい分析だろう。ギ…

「国家債務危機」(ジャック・アタリ著、林 昌宏訳、作品社)の読後感

「国家債務危機」(ジャック・アタリ)を漸く読み終えた。 主権者の債務をソブリン債務という。昔は、支配者が亡くなると、債務も継承されなかった。徐々に主権者の債務が次の主権者に継承されるようになった。国民主権の時代ではソブリン債務は国民の債務で…