アジア史

『タリバン台頭 —混迷のアフガニスタン現代史』(青木健太著、岩波新書、2022年3月18日発行)

アフガニスタンは文明の十字路。中東、南西アジア、中央アジアの結節点として周囲の勢力のせめぎあいの場所。アメリカは中国の対立に軸足を移すなかで、アフガンから撤退。今後は中国の影響が大きくなる。ロシアもタリバンの後見人となるか。 アフガニスタン…

『ラストエンペラー習近平』(エドワード・ルトワック著、文春新書、2021年7月20日発行)

さすがに戦略家というだけあって着眼点・分析力がなかなかスゴイ。 中国では、共産党が国家を領導するので、共産党中央委員会総書記が国家主席より上位である。総書記は7人の中央政治局常務委員から選ばれるが、国民による投票は行われないので国民の信任が…

『キッシンジャー回想録 中国(下)』(キッシンジャー、岩波書店、2012年3月28日発行)

下巻の中心的登場人物は鄧小平である。その前に、周恩来の失脚・キッシンジャーとの別れ、毛沢東の死についても語られる。1973年11月には周恩来がいつもより毛沢東に敬意を払い、ためらい勝ちであったが、歴史家の指摘ではそのころ周恩来に対する四人組の批…

『キッシンジャー回想録 中国(上)』(キッシンジャー、岩波書店、2012年3月28日発行)

第二次大戦後、米中対立となる。朝鮮戦争(1950年6月25日攻撃開始、1953年7月27日休戦合意)、第一次台湾海峡危機(1954年1月18日大陸側が大陳島と一江山島に侵攻~1955年休戦)、第二次台湾海峡危機(1958年8月23日沖合の島への砲撃)で、米中対立が続く。…

『破綻の戦略 私のアフガニスタン現代史』(髙橋 博史著、白水社、2021年12月発行)

アフガニスタンの紛争について、主に1970年代から2001年頃までの状況である。 最初は、1978年4月のダウード大統領政権に対する軍事クーデター。人民民主党が政権を取る。1979年12月27日ソ連がアフガンに軍事介入。その前からソ連介入を避けようと努力して処…

『チャイニーズ・タイプライター 漢字と技術の近代史』(トーマス・S・マラニー著、中央公論新社、2021年5月25日発行)

近代中国における情報技術史で1840年代から1950年代までを扱う。饒舌すぎる。 アルファベット、音素文字、音節文字 vs 漢字=密義的文字 漢字の音、義、形の三要素に対し、技術言語学を提案する。 例えば、1890年代に作られたタイ語タイプライターは、スミス…

『わが青春の台湾 わが青春の香港』(邱永漢著、中公文庫、2021年5月25日発行)

あくまでも邱永漢氏の体験を通じてであるが、大正から昭和の前半にかけて日本がどのように台湾を支配していたか、そして戦争が終わって蒋介石が台湾に逃げ込んだときの状況、台湾が国民党支配の国になるまでの状態を理解できる。 日本人の側ではなく、台湾人…

『紫禁城の黄昏、R.F.ジョンストン著・中山理訳、祥伝社、平成17(2005)年3月25日発行』

1912年共和国の誕生から、馮玉祥が1924年溥儀皇帝(宣統帝)を宮廷から追放するまでの13年間が主体で、その前後に触れる。1898年徳宗帝(光緒帝)が康有為の上書した改革案を実行した年から1931年満州国が出現するまで。 1898年当時、英国商人達は、まさに目…

『逆転の大中国史 ユーラシアの視点から』(楊 海英著、文春文庫、2019年3月10日発行)

ユーラシアの草原を中心にして中国を見ると、草原から下ったところにある狭い地域となる。中華思想は中国をすべての中心であると考えるが、ユーラシア史観からは反知性的であるとする。中国の歴史の中で、農耕民族の王朝は、前漢・後漢、明の700年、遊牧民が…

『ベトナムの泥沼から』(デービッド・ハルバースタム著、みすず書房、1987年6月10日初版、2019年1月24日新装版発行)

デビッド・ハルバースタムが『ニューヨーク・タイムズ』のサイゴン特派員のときの活動記録である。滞在期間は、1962年9月頃から1963年12月までなので1年と3ヵ月。そう長い期間ではない。 ベトナムは、ゴ・ジン・ジェム大統領を筆頭とするゴ一族が強大な権力…

『漢帝国―400年の興亡』(渡邉 義浩著、中公新書、2019年5月25日発行)

前漢、後漢から三国の時代までを儒教国家という観点を中心に解説している。儒教は前例をもって判断するようだが、前例となる事柄をまとめる作業が重要らしい。 『史記』、『漢書』という二つの史書の観点あるいは狙いの相違とか、名士の成立とか、随所に興味…

『操られる民主主義 デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか』(ジェイミー・バートレット著、草思社、2018年9月発行)

本書は、インターネット・テクノロジーの民主主義への脅威を警告する。具体的な例としては、第3章 ビッグデータと大統領選が一番だ。2016年のアメリカ大統領選の「プロジェクト・アラモ」にはびっくりだ。選挙の投票行動に影響を与えられそうな人を選んで、…

『物語 タイの歴史』(柿崎 一郎著、中央公論社・中公新書、2007年9月25日発行)

あとがきを見ると本書は2007年1月執筆開始とあり、2007年9月発行なので、ものすごく速いペースで書いているようだ。タイの古代〜21世紀初頭までの歴史を外観した書であるが、どちらかというと20世紀からの話が多いかという印象がある。日本でいうと大正・昭…

『日中戦争全史 下巻』(笠原 十九司著、高文研、2017年7月発行)

上巻に続く、第一次近衛声明から日本の敗戦まで。しかし、昭和の軍人の思い上がりぶりにもがっかりする。第二次世界対戦の歴史書を読むと、これは必ずしも日本だけではなく、ドイツやソ連も同じような状況だったようだが。それにしても人間が集団になるとし…

『日中戦争全史 上巻』(笠原 十九司著、高文研、2017年7月発行)

1915年対華21箇条要求から上海事変、南京攻略までを纏めている。日本軍は上からの統制ができていない。また、現地が中央の方針を聞かずに戦争行為に走っても、これを処罰できずに追認する、ということがずっと続いている。また、報道は事実を伝えずに、都合…

『朝鮮戦争の謎と真実』(A・V・トルクノフ著、草思社、2001年11月発行)

1990年代になって公表されるようになったソ連の最高機密文書をもとに朝鮮戦争の経過を分析した本である。朝鮮戦争において、スターリンを始めとするソ連、毛沢東を始めとする中国、金日成を始めとする北朝鮮がどのように連携したかがはっきり分かる。朝鮮戦…

『北朝鮮 核の資金源「国連捜査」秘録』(古川勝久著、新潮社、2017年12月20日発行)

かねてより、北朝鮮がミサイルや核を開発する技術とか資金源がどこから来るかを不思議に思っていた。この本で、その一部は分かる。技術開発の深部は分からないが、北朝鮮がどのようにして世界中にネットワークを張り巡らし、製品やサービスを提供してビジネ…

『北朝鮮発第三次世界大戦』(柏原 竜一著、祥伝社新書、2018年1月10日発)

内容的にかなりずさんな論議が多く、決めつけと煽りが多いような印象をうける。例えばあとがきには、「米中対立から始まる世界大戦は回避できないでしょう」とある。しかし、8章1節には、少なくとも2018年のうちに極東で大規模な軍事紛争が発生する可能性は…

『朝鮮戦争は、なぜ終わらないのか』(五味 洋治著、創元社、2017年12月20日発行)

2000年6月に南北朝鮮の一元化へ向けて、金正日総書記と金大中大統領の両国首脳の会談があり、南北統一の合意があったという「はじめに」の紹介は印象的である。これが予定通り進んでいれば、今のような戦争になるかもしれないという恐怖の時期は迎えなかった…

『毛沢東の朝鮮戦争』(朱建栄著、岩波書店、1991年)戦後の世界の枠組みを変え、いまだに朝鮮半島分断のひずみを残す。朝鮮戦争のドラマを中国側から見た本

『毛沢東の朝鮮戦争』(朱建栄著、岩波書店、1991年)を読んだ。国民党との内戦に勝利した直後の新中国が、朝鮮戦争に参戦するまでの、毛沢東を中心とする指導部の意思決定の過程を分析したすばらしいレポートである。朝鮮戦争の経過を簡単に復習すると:金…

「朝鮮戦争 金日成とマッカーサーの陰謀」(萩原 遼著、文春文庫、1997年)

朝鮮戦争がなぜ始まったのかは、ある程度想像できるし、米軍側を取材した本として「ザ・コールデスト・ウインター朝鮮戦争」を読んだこともある。しかし、本書は北朝鮮側の資料を調査したものである、という触れ込みで関心をもって読んでみた。金日成はソ連…

「ヴェトナム新時代―豊かさへの挑戦」(坪井 善明著、岩波新著)

ヴェトナムは、1986年ドイモイ政策。1989年カンボジア撤退。1995年米越国交正常化。2000年米越通商協定。2007年WTO加盟。米国の企業がヴェトナム市場に参入。汚職は多いようだ。官吏の給与が低いので、給与補填のために汚職する。(官吏よりももっと給与の低…

一冊でつかめる中国近現代史(荘 魯迅)

久しぶりに、読み返した。この本は、中国の近代史(アヘン戦争以後)を知るには絶好の書だ。なによりも文体が読みやすい。若干エンターテインメントよりの文章が見られる点が、信頼性を下げている気がして、気になるが。特に、現代、毛沢東の話が一番の読み…