昭和史

『沖縄返還とは何だったのか』(我部 政明著、NHKブックス、2000年6月30日)

沖縄返還交渉の過程と、交渉内容、密約などについてまとめた本である。 占領下の日本で総選挙を実施するため、連合国最高司令官の名で1946年1月29日にhン政府の権限の及ぶ範囲に関する覚書が出された。それによって、満州などの旧植民地とともに北緯30度以南…

『沖縄密約』(西山太吉著、岩波新書、2007年5月22日発行)

1950年代米軍は沖縄基地の強化を図り、アジア太平洋からインド洋までの南方戦略拠点として沖縄を”自由使用”していた。池田内閣は沖縄問題に取り組まず。佐藤政権(1964年11月から72年7月)は沖縄に始まり沖縄に終わる。 1965年8月19日佐藤首相初の沖縄訪問 1…

『転換期の日本へ 「パックス・アメリカーナ」か「パックス・アジア」か』(ジョン・W・ダワー、ガバン・マコーマック著、NHK出版新書、2014年1月10日発行)

サンフランシスコ体制とは、1951年9月8日、サンフランシスコで第2次世界大戦中に日本と交戦関係のあった48の連合国が署名した多国間の対日講和条約、および日米の二国間安全保障条約の二つの条約である。両条約は1952年4月28日発効し、その日、日本での占領…

『岸信介 ―権勢の政治家―』(原 彬久著、岩波新書、1995年1月20日発行)

『石橋湛山の65日』に、「石橋湛山が組閣名簿をある人(昭和天皇)に提出したとき、深刻な表情で、岸をなぜ外務大臣にしたのか?彼は先般の戦争に対して東条以上の責任がある、と述べた。」という話がでており、初めて関心を持って調べてみようと思い、本書…

『石橋湛山の65日』(保坂 正康著、東洋経済新報社、2021年4月8日発行)

昭和21年吉田内閣の蔵相となり、昭和22年4月の選挙で静岡県から当選するが、5月に公職追放。この間の記録をみると吉田茂の関与を否定できない。吉田茂という男は極めて卑劣という感を持つ。 石橋湛山という人物については本書を読むまであまり知らなかったが…

『ロッキード疑獄 角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス』(春名 幹男著、KADOKAWA、2020年10月30日発行)

本書は主に米国で公開された資料や日本の裁判記録などをもとに調査し、分析した書である。独自のインタビューもあるが、インタビューは、みな、かなりの年月を経てからの記憶に頼るインタビューなので結論の強化という印象を受ける。本書は米国資料を何度も…

『日英海戦への道 イギリスのシンガポール戦略と日本の南進策の真実』(山本 丈史著、中公叢書、2016年11月10日発行)

シンガポールを軸にして、イギリスの戦略、日本のマレー上陸・戦争開始直前までの作戦立案過程を分析している。大東亜戦争について米国との戦争ではなくイギリスとの戦争という新しい視点に基づいている。また、日本については陸軍と海軍の作戦の違いを際立…

『無念なり 近衛文麿の戦い』(大野 芳著、平凡社、2014年1月22日発行)

昭和12年6月1日近衛内閣成立。 7月7日深夜1か月で盧溝橋に銃声が轟いてから、悪名高い近衛の「国民政府を対手とせず」までの箇所。7月9日には首相、陸、海、外、大蔵の5相会談で不拡大を政府方針とし、臨時閣議で採択するにも関わらず、7月10日に陸軍から関…

『歴史探偵団がゆく 昭和史が面白い』(半藤 一利編著、文藝春秋、1997年1月30日)

昭和のさまざまなできごとを当事者に近い人2人を交えて、半藤氏の司会で語った物語を集めた本である。28の話題があり、既に知っていたこともあるが、知らなかったできごと、表面的にのみ知っていたこと、懐かしいできごとなどがならんでいる。 できるだけ当…

『機密費外交−なぜ日中戦争は避けられなかったのか』(井上 寿一著、講談社現代新書、2018年11月発行)

大凡、満州事変(1931年9月)から西安事件(1936年12月)頃までの日中関係と外務省の機密費の用途の関係を分析した本である。機密費の領収書が残っていたのは珍しいが、それと日中関係で本を書くのはちょっと無理があるような気もする。しかし、外務省の現地…

『岡田啓介回顧録』(岡田啓介著、中公文庫、1987年発行)

古本屋で見つけて購入したのだが、読み進めるにつれて面白すぎてやめられず、直ちに読み終える。2.26事件で首相官邸で九死一生を得るところが生々しい。松尾義弟が誤認されなければ、官邸捜索で見つかってしまっただろうし、兵隊に見られても上官に報告され…

『日中戦争全史 下巻』(笠原 十九司著、高文研、2017年7月発行)

上巻に続く、第一次近衛声明から日本の敗戦まで。しかし、昭和の軍人の思い上がりぶりにもがっかりする。第二次世界対戦の歴史書を読むと、これは必ずしも日本だけではなく、ドイツやソ連も同じような状況だったようだが。それにしても人間が集団になるとし…

『日中戦争全史 上巻』(笠原 十九司著、高文研、2017年7月発行)

1915年対華21箇条要求から上海事変、南京攻略までを纏めている。日本軍は上からの統制ができていない。また、現地が中央の方針を聞かずに戦争行為に走っても、これを処罰できずに追認する、ということがずっと続いている。また、報道は事実を伝えずに、都合…

『マッカーサーの二千日』(袖井 林二郎著、中央公論社、1974年発行)

マッカーサーの日本占領期について、主にマッカーサーという人物を中心に分析した本である。但し、マッカーサーは日本占領中はあまり表に出てこなかったし、回顧録はかなり自分の都合の良いように事実を歪めてかいているようなので、実像がなかなか分かり難…

『重臣たちの昭和史 上』(勝田 龍夫著、文藝春秋、1981年5月発行)

なかなか面白い。元老西園寺が首相を決める役割を担う時代の政変。日本では首相の任期が短いことが多いが、これは戦前の帝国憲法の時代でも同じであった。この時代に軍部・特に陸軍の発言力が大きくなっていく様子が手に取るように描かれている。陸軍の発言…

『日本はなぜ開戦に踏み切ったか 両論併記と非決定』(森山 優、新潮選書、2012年6月)

昭和16年12月8日の対米英蘭戦争の開戦にいたる意思決定過程を分析した本である。戦前の大日本帝国憲法が、リーダーとなるべき存在を明確に定めない欠陥憲法であったこと。その穴を埋めるべく、大本営政府連絡会議・懇談会なる会議が運営されたが、その会議の…

『戦艦大和の運命』(ラッセル・スパー著・左近允 尚敏訳、新潮社、1987年8月)

イギリス人の記者がこのような本を出しているとは、ちょっとびっくりだが、内容はなかなか良く調べてある。日本人の書いたものと違って、米軍の視点が半分以上入っているのが興味深い点である。読んでみると戦艦大和について実戦の経験者に取材し、話を聞い…

『ウィロビー回顧録 知られざる日本占領』(C・A・ウィロビー、番長書房、1973年)

G2とGSの対立の部分は赤裸々な記述があって面白い。G2の責任者ウィロビー将軍は吉田びいきであり、GSのホイットニー将軍と対立していたことは知られていることだが、それにしてもいろいろはっきりと書いていて三文小説より面白い。ホイットニー将軍の部下で…

『日米開戦の正体』(孫崎 亮、祥伝社、2015年5月)

今年は終戦から70年。太平洋戦争を問う本が様々に出てくるだろう。第一次大戦から総力戦の時代になっており、戦争の勝ち負けは国家資源と生産力によって決まること、当時日米のGNPは10倍以上の差があり、しかも日本は石油や鉄鋼を米国から輸入していたので、…

「昭和陸軍の軌跡」(川田 稔著、中公新書、2011年12月20日)

本書は、昭和陸軍の一派として形成された一夕会を主軸にして、大東亜共栄圏構想、対米戦争にいたる経過を解釈しようというものである。 一夕会は、永田鉄山が中心になって形成した派閥だが、永田刺殺後、その後を継いだ、武藤 章、田中新一の大激論など、極…